表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/160

う、浮気なんかしたら許さないんだから!(五)

え?○作りしても責任とらなくていい?なんて、なんと男に有利なと思いきや、とんでもないしきたりの狩野家。責任云々よりもこわい・・・。

「まあ、つまり、お前と子作りをしろということだ」

「はあ?舞さんと、こ、こ、子作り?」


「ちょっと、興奮するな!大声出すな!」


舞さんが怒る。


「私の家は煎茶道の家元って知ってるよな」

「ああ」


「狩野家は江戸から続く、家柄なんだが、女系家族なんだ。跡を告げるのは娘のみ。今はおばあさまが狩野家宗家の主人で、母様が後継者なのだが、おばあさまは隠居したいらしい。そのためには次次期後継者たるわたしに娘がいないといけないのだ」


「よく事態が飲み込めないのだが…」

「まあ、それでなくても狩野家に生まれた娘は二十歳で子供を作らなければいけないのだが。」


「それって、け、結婚するってこと?」


「いや、狩野家のしきたりでは、結婚はしないんだ。婿をもらうと財産分けやらなんやらで争いが起こるから、次期当主は結婚はできなんだ。子種だけを男からもらう」


「こ、子種?」

「も、もちろん、好き合っていれば一緒には暮らせるが、法的な結婚は家訓でできないのだ」


「つまり、男はやるだけやって、責任取らなくていいってこと?」

「まあ、そういうことになるが、娘を産ませてくれないとお払い箱になる」


(なんという都合のよい家訓だ、狩野家は!)


 ちなみに男の子が生まれた場合は、狩野家本流から離れた傍流の家へ養子に出されるらしい。欲しいのは女の子のみだというから徹底している。


「だ、だからと言って、私がお前を選んだわけじゃないからな!」

「そりゃどうも」


「こうしなきゃ、お見合いさせられかねないからな。お前を紹介しておけば、しばらく時間が稼げる」

「時間を稼いでどうするのだ?」


「大学卒業して社会人になれば、私は自立する。こんな変なしきたりの家は出て行く。そうは思わないか?」


「そう思うのは普通だな。舞さんは間違ってない」


 そりゃそうだ。男を種馬としか見ないなんて、屈辱だし、そりゃどこかおかしい。江戸時代から続く由緒ある家だか、なんだか知らないが。


「こんなこと頼める男友達はお前しかいないし、すまないと思っている。それにお前には美鳴がいるし…」


後半は声が小さくてよく聞き取れない。


「それに…?」

「いや、なんでもないんだ」


(変な舞さんだ)


俺はそう思ったが、まあ、詮索はしないでおこうと思った。あの男嫌いで俺を嫌っていた風の舞さんが、俺を頼って来ただけでなく、こんな家の事情まで告白してくれたのだ。彼女の役に立っただけでも男冥利に尽きるというもんだ。


 だが、あんなでたらめな風習がある狩野家が、こんな子供だましの方法で時間稼ぎをさせてくれるはずがないのを俺も舞さんも今は知らない。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


俺の携帯電話が鳴る…(美鳴からだ)出ると、例のキンキン高飛車声が耳に響く。


「大介、今、どこにいるの?」

「お前はいちいち、俺がどこにいるのか気にしなくちゃいけないのか?」


「気にするわ!私は主君ですから。あなたは、目を離すとすぐ他の女と浮気をするから、主君として監視してるんです!」


(あのなあ…)


俺はツッコミを入れたいのだが、このセリフを言うと恐ろしい事実に直面してしまうので、お互いにとって言わない方が懸命だろうと思い、言うのを辞めた。


浮気というのは、すでに付き合っている者が、相手の行動に際して使う言葉で、この場合、付き合っているのが石田美鳴じゃないと成り立たない…ということを彼女がどれだけ理解しているのだろうか?


(こいつ、無自覚で俺のことを好きなんじゃないのだろうか?)


美鳴よりも大人の俺はそう深読みする。それはただの「カン違い」でもあるかもしれないが。だが、俺も彼女に振り回されるのをよしとしているところを見ると無意識に美鳴のことを…


(いや、ない、ない。あんな身勝手な女を)


だが、今のところ、周りの友人を含めて、美鳴のことをみんなで支える雰囲気ができている。美鳴には、親しくなるとなんとかしてやりたいという不思議な魅力がある娘なのだと俺は思い始めた。


「わたし、決めたから!」


電話の向こうで元気な声を張り上げる美鳴。


「何を?」

「部活といえば、合宿。夏といえば、特訓!」


「はあ?」

「明日から、わが歴研は夏合宿に入ります!場所は海」


「明日?それ無理、俺はバイトがあるから」

「心配しなくていいわ。店長さんには断りの電話入れておいたから!」


(ま、マジかよ…)


「雪之ちゃんも、愛ちゃんも参加よ。瑠璃千代にも電話したから、明日一番の飛行機で来るって言ってたわ。それに…」


「それに?」

「吉乃ちゃんも仮退院ですって。療養のために空気の綺麗な場所ならいいって」


「え?よ、吉乃ちゃんが!行く、行く、行く!」

「ふん。なによ、急に」


美鳴の機嫌が悪くなる。舞さんと俺を加えて六名+1(瑠璃千代)の歴研メンバーで合宿だ。美鳴の陣営のメンバーには、あと、長谷家部もいるが、あいつは明日からラグビー部の夏合宿らしい。無論、彼が暇でも美鳴の奴は絶対呼ばないだろうが。


物語は7月後半の夏休み真っ最中。それなら、定番の夏合宿!海だ、水着だ!

ラッキース○ベだ!シリアスな内容になっていく「関ヶ原~」ですが、戦が始まるまでは、ちょっと学園物気分でいきます。(伏線はりまくりですが・・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ