う、浮気なんかしたら許さないんだから!(四)
ミスで(5)の方を先に公開してしまいました。急いで差し替えます!
翌日、俺は9時に準備をしていると、トントンとドアを叩く音が。予定通り、舞さんが迎えに来たのだが、これが何故かパーティドレス姿。結構、胸元が見えてセクシーである。いつもかけている赤縁のメガネはかけていない。今日はめずらしくコンタクトか?
(メガネもいいが、かけていないのも新鮮でいい…)
そんな勝手なことを想像している俺。しかし、こんな彼女が華やかな格好であるのに、俺はシャツにネクタイぐらいで、並んで立つとまったく滑稽なカップルである。
「舞さん、その格好は?」
「いいから、タクシーを待たせてある。すぐ、出発だ」
タクシーで舞さんはやはり一言も喋らない。どこに行くのや…と思っていると、前に美鳴と行ったアークホテルの中庭だ。なにやら貸切のようで、たくさんの貴婦人がガーデンパーティをしている。入口に煎茶道狩野派会合などと書かれている立て看板があった。
「あら、舞さん、今日はちゃんと来ましたわね」
色っぽい夫人が舞さんに話しかける。後ろの俺を見て、にっこり微笑む。
「お母様、連れてきましたわ。私のパートナー!」
(パ、パートナー?)驚愕する俺…
「ほほほ。自分で見つけるとは、やはり狩野の血は争えないですわね」
このフェロモン出まくりのご婦人は舞さんの母親らしい。
「初めまして、舞の母親です」
「は、初めまして。島大介です」
「島さんは、アナスタシアの一般生ですって?」
「は、はい」
「なるほど…。がっしり筋肉系じゃないけど、美形ね。舞、あなた、なかなかよい趣味してますわ」
舞さんの母親は、俺の足先から頭までを見て、俺の体を値踏みする。
「会長、会長、舞が殿方を連れてまいりました」
「ほうほう…」
今度は着物を着た真っ白の髪の上品な婆さんがやってくる。小さな声で舞さんが、
「私のおばあさまよ」
とつぶやいた。
「これは、舞もよい男を捕まえたもんだ」
「はあ、島大介です」
俺は舞さんにどういうことか尋ねる。どうやら、家族に紹介するのが今日の目的だろうが、俺は舞さんとは、美鳴つながりの友人に過ぎない。ゲーム上じゃあ同僚だが。そりゃあ、昨晩は大サービスしてはくれたが。
「後で話すわ」
そう言って舞さんは口を閉じる。
「ふむふむ、アナスタシア大生なら申し分ないね。顔もイケメンだし、子供もボロボロ作れそうな体じゃないかね」
「そうですわね、会長、舞もそろそろ、年頃ですし」
「いいじゃないかね。これで…。舞ちゃん」
「は、はい。おばあさま」
「お見合いの話はおしまいにしてあげよう。その男をくわえ込んで後継者を必ず作るのじゃぞ」
「は、はい」
そう言うと、頭を俺に下げて、舞さんの母親と祖母が離れていった。別のお客と談笑している。
「ふう~終わったわ」
舞さんが手袋を外して、ボーイから飲み物を2つ受け取る。1つを俺に差し出した。
「シャンパンだけど飲む?私は未成年だから、ジンジャーエールだけど、あなたは20歳だからいいでしょ」
「ああ」
シャンパンを受け取って飲む。たぶん、かなり高級なモノに違いない。
「舞さん、あのばあさんが言ってたこと、よく聞こえなかったんだが」
何かくわえ込んでとか、後継者とか、上品な風貌にふさわしくない単語が断片的に聞こえてきたような気がしたのだ。