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う、浮気なんかしたら許さないんだから!(弐)

突然、ヤンキー娘たちに囲まれてヤキを入れられる主人公。ヤキどころか、ラッキースケベ連発で、またまたややこしい展開に。

「あ、雪見姉さん!」

「リ、リーダー!」


周りの少女が囲みを開ける。


「一体、こんなところで何をしている?お前たち、アナスタシア周辺では活動するなと言明したはずだ!」

「いや、雪見姉さん、それが、その…」


少女たちの囲みの中心に進んだ小西雪見は、そこで絡まっている男女二人を見た。

「ミ、ミトラ?それに、だ、大介くん?」

「あれ、小西、小西雪見ちゃん?」


俺はこの前、一緒に食事した(俺はコーヒーのみだったが)小西雪見ちゃんを見た。あのモジモジした寡黙キャラだったのに、はっきりしゃべるこのキャラ…。同一人物とは思えない。


「こ、これは…いやああああ!」


雪見ちゃんは叫んで走り去っていく。なにやら誤解したようだが、この状況で何を誤解したのだろう。


(十分、誤解されるかもしれないです。はい。)


「あ、姉御~待って!ちょ、ちょっと、いい加減、離れろ!」


俺たちは周りの協力もあって、やっと離れた。


「まったく、お前のせいで姉御に変な誤解されただろう」

「いや、それはお前たちが元々、悪いだけで…」


「お前が悪い。お前さえいなけりゃ、雪見の姉御は私たちのリーダーを降りるなんてことなかったんだ」


「ど、どういうことだ?」

「1年前のことだ。駅でお前を見た姉御が、お前に惚れちまったのさ」


「え?」

「寝ても覚めても、大介くん、大介くん。お前がアナスタシア大の大学生と聞いて、自分も急に勉強しだしてレディースの活動辞めるし…」


「でも、姉さんのがんばりにはびっくりしたわ」

「0から出発して、アナスタシアに合格しちまうんだもんな!」


「わたしたちの学校じゃ、伝説だよ。進学なんて夢のまた夢なのにアナスタシアだもんな」

「それだけ、姉さんの恋が本物ってことさ」


周りの少女が口々に話す。話が見えてきた。


レディースのリーダーだった小西雪見は、駅で俺を見て一目惚れ。グループを抜けて俺に会いたいばっかりに受験勉強してアナスタシア大に追ってきたということだ。それなのにこの前までずっとアプローチなしで、それこそ木の陰から俺をずっと見てたってわけ?あのタンカを切るキップのいい雪見が、恋する乙女でモジモジなんて、何だか萌えである。


気の強い割には恋には意気地がない。


「と、とにかく、私らは姉御の誤解を解きにいくが、お前、もし、姉御のことを不幸にしたら許さないんだからね!」


「ふ、不幸って?」


(俺は雪見ちゃんと付き合うの確定みたいな言い方しないでくれ!)


「それに…あ、姉御以外と付き合うっていうのなら、私だって考えがあるから…」


急に顔を赤らめ、唇に人差し指で触れ、左手は先程までまくられたスカートを抑えてミトラは俺を見た。何だか目がウルウルしてやがる。


(ちょっと、待て。まさか、今ので?)


「私は藤堂魅兎蘭とうどうみとら、春海商業の3年でアンダーツリーの現リーダーだ。私にあんなことをしたんだ。いつか、この埋め合わせはしてもらうからな!」


そう言うと、魅兎蘭みとらちゃんは、仲間を連れて雪見の姉御を探しに姿を消した。



そんなことがあって、バイトに遅れてしまった俺は、店長にしこたま怒られて、機嫌悪くバイトを開始した。機嫌悪くと書いたが、思い出すと男としてはちょっと嬉しい状況ではあったが。1時間程して、店長が上がる時間が近づいてきた。ここからは、バイト2人で回すのだ。


「島くん、言うの忘れたが、今日から新人の子が入るから、よろしくね」

「新人?」


「高校生の女の子だ。言っとくが、手は出すんじゃないぞ」


(いや、手なんて出しません。最近、飽和状態ですから)


そうこうするうちに、その新人ちゃんがやってきた。


早川秋帆はやかわあきほといいます。高校1年生です。よろしくお願いします、先輩」

「お、おう…」


あまりの驚きでそれしか言えない俺。あのアナスタシア高等部でいじめを受けていたあの少女だ。俺の反応が変なので首をかしげた秋帆ちゃんだったが、


「この系列のコンビニは初めてなので、いろいろ教えてください」


そう俺に聞いてくる。学校で見たときのような顔色の悪さはないが、やはりどことなく疲れている感じだ。


「秋帆ちゃん、高1なのにバイトなんてえらいね。他にもバイトしているの?」


俺は彼女のバイト理由を知っているが、敢えて話を振ってみた。


「高校生がやれるバイトは少なくて、せいぜいコンビニか、ハンバーガーチェーン店かです。駅前のゴージャスバーガーでもバイトしてます。土日限定ですけど。コンビニは平日にやっていたんだけど、前にバイトしていたコンビニが経営不振とかで店をたたむとかいうから、こっちに応募しました」


「ふーん。大変だね」


 そういう会話をしながら、バイトを続ける。学校で見た秋帆ちゃんは、暗い感じであったので、話してみると楽しい女の子だ。ちょっと小柄で華奢な感じだが、ツインテールが似合う可愛い子だ。


「先輩は大学生さんですか?」

「ああ、一応、アナスタシア大だけど」


「男の方だから一般生ですよね。私、憧れます。そういう人って」


そういえば、この子も苦学生だった。美鳴の話では急に父親の事業がうまくいかなくなったとか、なんとかだったが。


(そういえば、この子、美鳴のこと知ってんだよな)


美鳴と知り合いということを話してみようかなと思ったが、止めておいた。俺が秋帆ちゃんのことを知っていることがバレルのはちょっとまずいかもしれない。


 3時間バイトして、二人共、同時にバイトを終えた。時間が遅いので俺は秋帆ちゃんを家の近くまで送っていく。他愛もない学校の話をしながら、秋帆ちゃんと歩く。俺の以前のアパートに近いところが秋帆ちゃんのアパートであった。


「よかった。一緒にバイトできる人が優しい人で。それでは先輩、また明日」

「ああ。君もがんばれよ」


俺は手を上げた。なんだか、妹ができたような気分になる。


藤堂さんも早川ちゃんも、後に重要な役割を果たすことになります。ネタバレ?


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