わたしの究極のおもてなしを受けなさい!(五)
佐和山城と呼ばれる美鳴ちゃんのマンションは、主人公を除いて全員が女の子というハームマンション。うわ~こんなところ普通ないわ~。でも、ラノベだとたくさんあるんですよね~。
太閤秀吉のおっさんは、美鳴に近江佐和山の19万石を与えて、正式に五奉行の筆頭に任じてくれた。これで美鳴はキャンペーンモード「関ヶ原」の最低条件をクリアして出陣することになる。
こうなると戦での経験値も然ることながら、大名プレーヤーはもう一つ、やらねばいけないことがある。それは領土経営。
ネットゲーム「戦国ばとる2」は、リアルな戦闘を売りにしているが、領土経営のような内政にも凝っている。ゲーマーによっては内政に特化して明君として名を馳せているプレーヤーもいるくらいだ。
(どこかの政治家に見習ってもらいたいものだ)
その領土経営に関しては、美鳴は意外に上手である。大名をプレイしたことのない俺にはアドバイスができないのだが、見ていて分かる。地道に民のために田畑の開発を行い、商業を奨励し、利益を還元する。民の忠誠心がどんどん上がっていく。実際の石田三成も内政に優れ、領地経営のうまさは国内有数であったという。
(コイツ、農民の一揆でも起こった日には、「左近、みんな皆殺しよ!」と命じそうなキャラなのに正反対じゃないか?)
美鳴の奴、根はとっても優しい女の子じゃないか?と俺はゲームに興じる美鳴の横顔を見てそう思ったが、かっきり10秒後に訂正することになる。
「大介、いつまで女の子の部屋に居座る気?いやらしいわね!そろそろ、自分のねぐらに帰ったら?そうそう、2階には10時以降は立ち入れないから。間違っても瑠璃千代の所に行ったら…」
「行ったら?」(行くわけないだろう。それより、彼女が来そうだ)
「切腹を命じますから!」
「はいはい」
とりあえず、本日は帰ることにする。美鳴の気まぐれで引越ししたこのマンション。正式名はメゾン・レジェンドというらしいが、歴研メンバーの中では「佐和山城」と呼んでいる。ちなみにアナスタシア高等部の歴研部室は「大坂城」と呼んでいるが。
美鳴のオーナールームから直通で俺の管理人室まで行ける。エレベーターに乗り込むと、舞さんが何だか俺に言いたげな表情を見せたが、俺と目が合うと慌ててゲーム画面に視線を変えた。
(そう言えば、いつも悪態ばかりついていた舞さんが、最近は口調が穏やかだ。もちろん、素っ気ないのは変わらないが。男嫌いは治ったのだろうか?)
自分からは行けないが、女の子は一方的に来れるルート。うれしいような悲しいような。なにやら、舞さんに変化が?伏線か?