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わたしの究極のおもてなしを受けなさい!(四)

この章から、美鳴ちゃんの私生活がだんだん分かってきます。この娘、半端なく金持ちお嬢・・・。

 その夜、新しい住人、立花瑠璃千代ちゃんを加えた歴研メンバーで美鳴曰く軍議が開かれた。


「まず、私たちがやることを確認するわ!」


美鳴が確認事項を上げる。これはみんな分かっていることだ。


まず第一に「それぞれのレベルを上げる」こと。


 百戦錬磨の俺や立花瑠璃千代ちゃんはともかく、美鳴たち歴研メンバーは、経験値が足りなさすぎる。いくら戦術や操作法がうまくても経験値が足りなければ、よい結果は生まれないのは、ゲーム上仕方がない。


所詮は数値による演算で決まるのだ。レベルや経験値は高いに越したことはない。

これは毎日、ショートシナリオを行うことで解決する。キャンペーンモードに入るとレベルアップの機会が限られるから、会戦突入前に地道に行うに限る。


第2は新しい仲間探しだ。


西軍に参加してくれる武将を確保しないことには、始まらない。こちらも主要メンバーがまだ足りない。


(少なくとも、宇喜多秀家だろ、小西行長だろ、島津維新入道だろ、毛利家も旗頭として必要だし、後は小早川秀秋…)


実のところ、実際の戦いではその毛利家は旗頭にも関わらず、常に消極的で関ヶ原の戦いでは南宮山で傍観して西軍の敗因を作ったし、小早川秀秋に至っては戦場で裏切るという史上有数の悪行を行っている。


だが、そういう史実がある以上、できればリアル人物は美鳴のことを思ってくれている人物に操って欲しいのだ。


「3つ目は、太閤様に命じられた(おもてなし)よ。これはリアルにも関係のある重要イベント」


美鳴は腕組みをして考えている。


「美鳴、例の件のことだろう?」

「うん」


狩野舞さんが、そう美鳴に聞く。愛ちゃんと雪之ちゃんは、キャピキャピお菓子を食べているから、このゲーム外に秘められた、おそらく、このゲームをすることになった経緯を知っているのは、どうやら舞さんと入院している吉乃ちゃんということになる。


「(おもてなし)の方は、大丈夫よ。わたしの家の総力を挙げて、食べたことのない大ご馳走をどーん!と並べて驚かしてやるわ!」


(ご馳走?)


俺の胸に何だか強烈な違和感が沸き起こった。


「高級和牛でしょ、キャビアでしょ、トリュフでしょ、鯨の刺身なんかも、あの年の方には懐かしいって受けるかもしれないわね」


 美鳴は金に物を言わせて、世界の珍味をずらりと並べるらしい。場所は町一番の料亭を予約するというから、景気がいい。だが、俺はその方向は間違いだと思った。


「美鳴!」

「何よ?」


「俺たちは学生だぜ。身の丈にあったことじゃないと何だか嘘くさいんだよな」

「何言ってるの?あんた、バカ~?」


「だって、そんな高価な食材、俺たちには無理だろう?」

「あなたには無理かもしれないわね。でも、わたしの家はお金持ちだから…」


こういう言い方をする美鳴は、いつもの美鳴と違い、何だか高慢ちきなにおいがプンプンして、不快な空気を作る。彼女には悪気はないことは十分承知していた。要するに金持ちお嬢様の世間知らずのなせる技だ。


 昨年、1週間だけ付き合った彼女が、ドライブしたいというので、バイト代をはたいて小さな軽自動車を借りてデート場所に向かったが、


「こんな小さなクルマ、乗ったことないわ~。すごい、こんなにシートペラペラ!大介、見てみて、ガラスを開けるのグルグル回すなんてありえな~い」


彼女が新しい発見をして騒ぐ度に俺のハートにグサグサとナイフが突き刺さった。それと同じだ。


「美鳴!」


俺は美鳴の腕をつかんだ。


「な、何よ、急に真剣になって?」

「あのじーさんは、人間力と言った。お前の人間力で勝負するべきじゃないか!高価な材料や料亭なんかは、全部、お前のオヤジの力だろう?」


「お父様のお金の力を使って何が悪いの?」

「(おもてなし)ってのは、相手を思って行うことが大事だと俺は思う」


「じゃあ、大介はコンビニのお弁当でも出せばいいとでも思っているの?」

「いや、そういうわけじゃないけど…」


「じゃあ、黙っていてよ。代案がないんじゃ、軍師の意味ないわ!」


(畜生!この女、なんて生意気な!)


と怒りが湧いてきた俺だったが、意外な人物が加勢してくれた。


「私もこの男と同意見だ。美鳴」


狩野舞さんが、赤いメガネをかけ直してそう言ってくれた。


「舞さんまで…」


ちょっと美鳴の奴、ひるんだようだ。


「なあ、吉乃ちゃんにも聞いてみたらどうだ?」


俺は確信をもってそう進言した。そうあの病弱だけど聡明な少女なら、何か代案があるかもしれない。


「分かったわ。吉乃なら何か妙案があるかも…。大介と違って!」


美鳴の奴、結果的に俺の意見に従わざるを得ないと分かっていても、素直になれないらしい。



正直に(さすが、大介、尊敬しちゃうわ~)とか目をうるうるさせるとかないのかこの女は…。


美鳴に意見する主人公。家老で軍師だから、このくらいはしますって。

それにしても、最近、戦闘シーンがないじゃないか・・・とお叱りを受けそう。

関ヶ原で・・・というタイトルなのに学園生活ばかりですから・・・。

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