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押しかけ女房なんて許さないんだからね!(参)

美鳴ちゃんの作戦が成功かと思われたとき、このネット対戦ゲーム「戦国ばとる2」のおもしろ要素が炸裂します!美鳴ちゃんピーンチ!

 この忍城シナリオには、ゲームを面白くするために不確定要素が加味されている。それは、実在の人物がスーパーユニットとして、破格の能力をもって参加する可能性があるということだ。このシナリオの場合、スーパーユニットがNPC(コンピューターが動かすキャラクター)として登場する。


もちろん、登場はランダム。噂によれば、ある条件が揃った時に…ということだが、現れるのは非常にレアなケースであった。


だが、美鳴はとことん、運がないというか、そのレアなケースに該当してしまった。


美鳴の石田隊が大手門に押しかけると、門がギ…ギ…と開き、そのキャラが現れたのだ。


「わらわは、成田甲斐姫なり!我こそはと思うものは、かっかてこよ!」


戦国の戦う姫武将、甲斐姫が現れた。甲斐姫は、黒髪をなびかせ、きりりっとした目が涼やかな顔は姫だけに気品にあふれ、勇壮な鎧を着用し、馬に乗り、手勢200騎と共に石田隊に襲いかかった。


「な、なによ、あれは?」


たった200騎だが、5000の美鳴の部隊はたちまち、崩されていく。


「こ、こんなのずるいわよ!」


 美鳴の言うことはもっともだ。だが、ゲーム上、甲斐姫はかなり強く設定されており、200の兵士のステータスも尋常でない。美鳴の兵士は5、6人の単位でぶっ飛ばされて、次々と撃破されていく。


もし、美鳴扮する石田三成が一騎打ちで討ち取られたらこのシナリオはジ・エンドである。北条方である成田氏プレーヤーの大金星ということになる。


これは劣勢な時に起死回生の戦闘方法である一騎打ちシステムなのであるが、そう簡単に決まるケースは稀であったが、今回の場合は美鳴が軍を4分割したこともあって、わずか200騎の敵に金星を献上してしまいそうな臭がプンプンしている。


(敵プレーヤーはしてやったりだろう。なにより、レアなキャラを出現させて勝利を導き出すのだから…)


美鳴にとっては災難である。できることは戦場から逃げることであるが、それは彼女の性格が許さないだろう。自分が逃げても搦手門や左右から塀を乗り越えて侵入する友軍のおかげで勝てるかもしれないが、不名誉な記録が残るだけだ。


「私は、石田治部少輔美鳴よ。逃げることなんてできないわ!スーパーユニットだか、何だか知らないけれど、この私自身で倒す!」


美鳴は槍を手に取ると馬に乗り、甲斐姫めがけて駆け出す。もちろん、周りの兵士が止める。勝ち目のない戦いに出向く場合、コンピューターが


「本当に突撃しますか? はい  いいえ」


という画面が現れ、その間、兵士が馬のくつわを取って止めるのだ。



だが、美鳴は速攻で「はい」をクリックする!躊躇がない。




「い~く~ぞ~!舞い散れ我が槍の舞の前に、死せよ、成田甲斐姫!」


美鳴はブンブン槍を頭の上で振り回すが、実力が伴っていないから、あっという間にバランスを崩し、あわや落馬しそうになる。


「あわわわ…」


慌てて体勢を立て直す美鳴。そこに甲斐姫はそんな美鳴をあしらうように、華麗な手綱さばきでぐるぐる回り、浪切と名付けられた成田家代々に伝わる長刀で攻撃してくる。美鳴は右に左にあわてふためいてかわすが、甲斐姫は遊んでいるのだろう。本気で切り裂けば美鳴はジ・エンドなのに、明らかに遊んでいる。


美鳴を守ろうと足軽や騎馬武者が、ランダムに向かっていくがすべて一撃の元に倒される。その他大勢とスペシャルユニットの扱いの差は大きい。


「石田三成、覚悟!」


甲斐姫の剣(浪切)が美鳴を襲う。美鳴はこれでもか!とのけぞった。切っ先が鼻の先で止まる。ギリギリ交わしたのだが、もう馬から転げ落ちそうな美鳴に2擊目はかわせない。


「お命、もらった!」

「きゃああああああっ!」


美鳴が叫んだとき、甲斐姫の剣は一文字槍によってはじかれた。


「誰だ!」


と自分の剣を遮った武者を見る甲斐姫。


「さ…左近~」


美鳴の泣きそうな声。やむを得ないだろう。もう少しで自分が一騎打ちで倒されて逆転勝利を敵にプレゼントしてしまうところだったのだから。


俺は思わず、この作戦に参加して一騎打ちに乱入してしまった。美鳴のピンチに我を忘れての行動であったが、いつもと違う弱々しい美鳴を見ると乱入してよかった~と心の中で思った。


(これで美鳴の奴、俺の凄さを感じて、少しは大人しくなるだろう…?)


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「美鳴、俺がいないとやっぱりだめだなお前は」


「はい、美鳴は女の子ですから、左近様、いや、大介さんのような大人の男性に守ってもらわないとダメなのです。今まで生意気言ってごめんなさい」


「ふふふ…分かればよいのだ。子猫ちゃん」


急にしおらしい美鳴ちゃん・・・。ピンチを助けられて主人公に惚れ直したか?

いや、そんなことないからヒロインなのです。読者様も予想がついていましょうが。

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