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わたしのこと恨んじゃだめだからね!(壱)

実際の石田三成も正義感をふりかざし、融通のきかない委員長タイプの男だったそうですが、我ら、石田美鳴ちゃんも同様。あちらこちらで、誤解されて不人気な娘のようです。

 東宮院是清とうぐういんこれきよは、探偵のアギトが作成したリストを眺めていた。


石田美鳴にリベンジしたいリスト


No.1 福島帆稀ふくしまほまれアナスタシア大学高等部2年。


親は市内でパチンコやカラオケ店を複数経営している。裕福な家のお嬢様。


2ヶ月前に校内でタバコを吸っているところを石田美鳴にチクられて停学1ヶ月の処分を受ける。学校での成績は下の下。素行悪し


No2 黒田メイサ(くろだメイサ)アナスタシア大学高等部3年


親は両親ともに大学の教授で、教育に厳しい家のお嬢様。


中等部の頃より、定期テストで石田美鳴に負けて万年2位。最近は転入してきた小谷吉乃にも負けて3位になることもしばしば。母親にトップになれないことを叱られている。本人は大変な努力家で、いつも勉強をしている真面目な学生であるが、石田美鳴が遊んで大して努力をしていないと思い、美鳴がいない方がよいと思っている。


No3 細川ルシア珠希ほそかわるしあたまき アナスタシア大学高等部1年 


父親が著名なバイオリニスト、母親がこれまた世界的な画家という芸術一家のお嬢様。母親がフランス人であるため、金髪の美しいマドモアゼルである。石田美鳴とは接点がないと思われていたが、2ヶ月前に彼女の兄である細川ジョルジュ忠人ほそかわじょるじゅただひとが、石田美鳴に告白したところ、瞬時に振られたことを知って、ブラコンの彼女は美鳴のことを恨んでいる。


(ふふふ…なるほどね。融通が利かない正義感、そして才能を見せつけ、他人の羨望を感じない天衣無縫な性格がどれだけ、損をするかという見本だな)


是清は自分の経営する会社の応接室に招いた3人の少女を見て、この娘らを使って石田美鳴をどう料理しようかと思案していた。この娘たちを鍛えて美鳴と対決する戦国ばとる2で、重要な役割を果たしてもらおうと考えていた。


「で、東宮院さんは、そのゲームで美鳴を負かしたいとのことですが、それが私たちにどんな得があるというのかしら…」


黒田メイサが少々、不機嫌に疑問を口にした。そんなくだらないゲームをする暇があったら、勉学に勤しまねばならないのだ。正直、石田美鳴がそのゲームに勝とうが負けようが自分には関係ない。


「ルシアにも利益があるようには思えませんの。そんなことであの女に勝っても、お兄様の屈辱は晴らせませんことよ…」


細川ルシアも続く。福島帆稀ふくしまほまれだけが、ぽーっと是清を見つめている。


「お嬢さん方、そういう疑問はごもっともです。でも、実は僕もあの娘にはちょっと、恨みがありまして。少し、いじめちゃおうかな?と思っているのです」


「いじめる?」


2人の少女が声を合わせる。


「黒田さんは、自分の努力が報われることを。細川さんは大切なお兄様の敵を取りたいのでしょう?」


「ええ…そうですが、私はあの娘に正々堂々と戦って勝ちたいのです。裏でこそこそして勝っても意味はないと思います」


(やはり、この娘(黒田メイサ)が一番まともか…。だが、まともな人間ほど一旦仲間にすれば、信頼して任せられる。あのご老人の要望に応えるためには、この娘を味方にすることは重要だ)


 是清は美鳴と戦国ばとる2というネットSLGで対戦するいきさつを思い出した。圧倒的な自分のキャラが素人同然の小娘と対戦ということで、あの老人は東軍の陣容について、高校生以下の少年少女を動員したメンバーで戦うこと…という条件を付けたのだった。


無論、そんな条件は是清にとって、不利になるとは思えなかった。中核である徳川方は自分がすべて操ることが可能であったし、金に物を言わせていくらでもネットからプレーヤーは集められる。だが、せっかくなら、美鳴と同じ学校で美鳴に関わりのある高校生を動員してやろうと戯れで思ったのだ。


(本当に戯れであったが、意外とおもしろい展開になるかもしれない。それには、この娘たちを忠実な部下にしなくてはならない)


すでに福島帆稀については、手を打ってある。トロンとした目でこちらを見つめる帆稀は、もはや、自分の下知に従う奴隷同然であった。


(帆稀と同じ手は使えない。それなら、いっそ状況を正直に話して手堅い味方とするのも一興である)


 ただ、突然、戦場で転ばれても困る。所詮は17、8の女の子。汚い大人のルールを知って、妙な正義心を起こして自分に突っかかってくる可能性もある。


「実はこのゲームの結果は単なるゲームの勝敗の決定ではないのです。リアル世界の戦いと通じているのですよ」


「リアル世界?今、私たちの生活しているこの世のことですの?」


ルシア嬢はそう言いながら、秘書が運んできた紅茶のカップを確認して、それがマイセンの物だと分かると安心して一口飲んだ。紅茶も超一流品でほっと一息ついた。無駄な時間を過ごしたと思ったが、この紅茶だけで来た甲斐はあったと感じた。


「話すと長くなるのですが…」


是清はこのゲームのいきさつを話す。帆稀にも聞かせた方がよいと思ったので、敢えて席を外させなかった。


是清に条件を付けたご老人・・・この物語には3人ジジイが出てきますが(ネタバレ)伏線です。

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