怖気づいて逃げたら許さないんだからね!(六)
吉乃ちゃんの思わせぶりな態度は謎です。いや、女の子はみんな謎なのです。
まともに考えると大恥の3乗ダメージ。それでも勘違いするのが男なのです。
「あのう、大介様、お疲れになったのですか?」
(あれ?)
目を開けるときょとんとした吉乃ちゃんの顔が目に入る。
(うわ!俺の勘違い?かんちがい…なのか~っ!)
自分の残念さに立ち直れない程のダメージを受ける俺。うーっ!痛い奴だ。自己嫌悪。
「あれ?大介、こんなところにいたの?」
落ち込んだ俺にさらに追い討ちをかける声がする。美鳴だ!
美鳴の奴、吉乃ちゃんのお見舞いにやってきたのだが、病室にはいなく、ここにやってきたらしい。
「大介、引きこもりは止めたみたいね。それは結構至極。今日から、また、働いてもらうからね!」
相変わらず、元気がいい。我、主君は…。だが、吉乃ちゃんのおかげで俺の恐怖心…は少し和らいだのも事実だ。もし、あの金帯の奴がそういうことしているなら、それはただの物理的スピードで優っているだけである。俺の戦略がまったく歯が立たないわけでのないのかもしれない。
「それじゃあ、大介さん。また、お見舞いいらしてくださいね」
吉乃ちゃんは、そっと美鳴に見えないように俺の手を離した。それこそ、指先まで名残惜しそうに…。そして、小さな声でなにやらつぶやく。
「続きは、また、今度にしましょう」
と俺には聞こえた。
(つ…続きって…吉乃ちゃん、俺、また、誤解してしまいそうです!)
「なんかなあ…2人で怪しいなあ。大介!言っときますけど、あなたは私のモノなんだから、勝手に他の女の子に手を出したらいけないんだからね!ましてや、親友の吉乃に手を出したら、もう離婚です!」
「いや、お前、離婚って、結婚してないし!」
「あなたは私の初めての人なんです!せ…責任とってもらいます!そう法律に書いてあります!」
(いや、そんな法律ないし…)
「初めてって、人聞き悪いなあ!」
キスをしただけだ。神様に誓って俺は宣言する。ちなみに俺も20にして初めてのキス。初めての相手が美鳴みたいな美少女でよかったのだが、ここまで言われると、いくら美人でも重い…重すぎるぞ、この女!
「ふふふ…二人は仲がいいですこと。うらやましいですわ…」
吉乃ちゃんが笑う。
(ううう…今の本命の吉乃ちゃんに完全に誤解されてしまうじゃないか。せっかく、いい雰囲気だったのに…)
「まあ、いいわ。直接会えたから、伝える手間が省けたってもんよ」
「はあ?」
美鳴が携帯の画面を俺に見せる。
今夜のミッションを達成できれば、そちの願いを考えても良い。
太閤秀吉
「これは、チャンスじゃないか?美鳴」
「そうよ。今日、勝利すれば加増は間違いないわ!」
「で、どんなミッションなんだ?」
「これよ、これ!」
そう言って、美鳴は戦国ばとる2のシナリオ画面を見せた。
北条征伐シナリオの中の忍城攻略であった。
「み…美鳴、これは、ちょっと、ヤバいんじゃないか?」
忍城攻略・・・歴史的にも石田三成の鬼門となる戦い。美鳴をサポートする主人公は立ち直り、どう彼女に勝利をもたらすのでしょうか?