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私が一番なら大目に見てあげる!

(チョット・・・大人バージョン!)


 朝が来た。カーテン越しにニューヨークの超高層ビルが視界に入る。広いキングサイズのベッドで俺は手を伸ばし思い切り伸びた。コーヒーのよい香りが鼻腔をくすぐる。隣はとうにもぬけの殻で、俺の愛するパートナーは、いつもの通り、俺のために朝食を作ってくれているようだ。


あの関ヶ原の戦いの決着から7年が立っていた。俺はアナスタシア大学を卒業し、ストンデングループに入社した。会社を救った英雄ということで、入社後、すぐこのニューヨーク支社の立ち上げに参加させられるというチャンスを与えられたが、実のところ、創業者の娘にふさわしい人材か試されていたようだ。それに俺は見事に応えた。大口の案件を短期間にいくつも成功させ、このニューヨーク支社は全米を統括するストンデングループの中核にすることができた。今や若きアメリカ支社統括部長として、このマンハッタンのペントハウスに居を構えていた。


俺は起き上がり、カーテンを少し開けて地上を見下ろした。ニューヨークの朝は早い。出勤する人々がアリのように動いていくのが分かる。俺は7年前のゲーム後のことを思い出した。


 是清を倒し、西軍が勝ったことが決まった瞬間、ストンデングループの株が急上昇した。連日のストップ高で株価は急騰した。ゲームの結果を知ったファンが一人一株キャンペーンと称して株を買う行動に出たのだ。これに複数の銀行が資金面の支援に乗り出す方針を出したので、東宮院ファンドの買収計画が頓挫した。しかもゲーム結果に憤慨した影の仕掛け人であった五代のジジイが脳梗塞で倒れてしまった。このじじいは、ストンデングループの株の大量空売りをしていたので、経済的に大損害を受けたばかりか、地検特捜部の捜査を受けて入院中に証券法違反の疑いで逮捕されたが、脳梗塞から意識が戻らず、この黒幕のじいさんはこの世から退場することになった。


 東宮院も地検特捜部の捜査を受けて、逮捕、起訴された。逮捕されたとき、彼は小谷吉乃ちゃんの病室にいたそうだ。抵抗することなく、連行されて、洗いざらい自分の罪を告白して、1年6ヶ月の実刑判決を受ける結果になった。東宮院ファンドは彼を社長から追放して、他企業に吸収合併されてこの世から姿を消した。


 刑期を終えて、刑務所から出た東宮院是清は心を入れ替えたのか、現在は200億円以上と言われる自分の資産を元に恵まれない学生に奨学金を貸与する団体を結成して活躍しているという。傍らに最近結婚したという彼の愛妻が写っていた。吉乃ちゃんだ。


「旦那様、もう起きていらっしゃったのですか?」


コーヒーカップを両手に持ったパートナーが、俺に声をかけた。


「ああ。今日もいい天気だな」

「日本もいい天気らしいわ。今日から1ヶ月もいなくなってしまうなんて、瑠璃千代はとても寂しいですわ…」


 そう言って瑠璃千代は、俺にコーヒーカップを渡して軽く口づけしてきた。7年経って彼女も今年26歳である。ここで俺と一緒に暮らしながら、武道家としてニューヨークの立花道場の師範として活躍中である。大和撫子武道家として、ニューヨークじゃちょっと有名人なのだ。


「俺が一ヶ月もニューヨークから離れるから、昨日はあんなに激しかったのかい?」


俺は瑠璃千代の腰を手で触る。ビクビクっと俺にしか分からない反応をする。


「バカ!旦那様のバカ!」


 瑠璃千代はぷっと頬をふくらませた。もう一緒に暮らして5年になるが、出会った頃のままの可愛い仕草は健在である。一応、大企業の部長職で年齢に合わない高待遇でこんな優雅な暮らしをしているのだから、家事はメイドにやらせておけばいいのに、俺に関することに瑠璃千代は労を惜しまない。本日の朝も瑠璃千代お手製のオムレツとハンドメイドのパンが用意されている。


 食事をしてシャワーを浴び、出社の準備をしているとインターホンが鳴った。秘書が迎えに来たのだ。俺は瑠璃千代が整えてくれた長期出張用のスーツケースを持つと玄関に出る。


「行ってらっしゃいませ。旦那様」


瑠璃千代としばしのお別れのキスをする。


「相変わらずニューヨークの奥様とはお熱いことで…」


 リムジンの後部座席に乗り込むと隣に座った秘書が俺に嫌味を言ってきた。言葉とは裏腹に俺にぴったりとくっついてくる。


「雪見ちゃん…。君とは昨日、夕食を共にしたじゃない?」

「夕食だけじゃ、私は我慢できないんです!昨日は私の部屋に来てくれなかったじゃない」

「いや、先週は君と一緒に過ごしたと思うけど。それに瑠璃千代はもう一ヶ月会えないけど、君は一緒に日本に行くから、別にいいじゃない」

「分かりました、部長。本日のスケジュールを確認します。ニューヨーク支社にご出勤後、取引先2社との交渉があります。その後、経営会議が1時間。12時には空港に向かいますので、ご準備をお願いします」


 そう言って秘書は俺にスケジュールを転送したスマホを渡した。そう小西雪見ちゃんは、大学卒業後、俺とともにストンデングループに入社。部長付き秘書として、俺に使えているが、プライベートの秘書としてもご活躍中であった。


「ちょ、ちょっと雪見ちゃん、直接、日本へ行かずにハワイホノルルってあるんですが?」

「あっ、それですか?ちょっと部長のスケジュール調整をしてリフレッシュ休暇を3日間とらせていただきました。3日間はわたしと一緒に過ごしていただきますわ」


そう言って雪見ちゃんは微笑んだ。ワイキキビーチで雪見ちゃんの水着姿を拝めそうだ。



 ワイハーで3日間。美人秘書とリフレッシュした俺は成田空港に到着した。1ヶ月ぶりの日本だ。本社に顔を出してから、実家に帰るという日焼けした雪見ちゃんと分かれて、俺は都心へ向かうリムジンに乗っている。子供連れの若い女性と一緒だ。


れいちゃん、あいちゃん、パパですよ~」

「パパ~お帰りなさい」


そう言って双子の女の子が俺に抱きついてくる。今年5歳になる娘だ。子供は狩野麗かりのれい狩野藍かりのあい。若い女性は狩野舞さんだ。狩野家のしきたりに沿った結果になっている。


「二人とも来年は小学生だ。早いものね、子供の成長は…」


そう言って、ちょっとだけ目立ったお腹を舞さんはさすった。


「六ヶ月だっけ?」

「ええ。病院で見てもらったら、おそらく女の子だって。おばあ様もお母様も大喜びよ。大介お前は、狩野家始まって以来の最高の種馬だって」


「た、種馬~?」


俺は若干、不本意だったが舞さんが幸せならそれでいい。それに娘は可愛い。


(そういえば…雪見ちゃんも瑠璃千代もそろそろ、ヤバイかも…)


 最近、あの行為の際には二人共、防備をしない。狩野家に最高の種馬などと賞賛されている俺のこと。こりゃあ、また、パパになってしまう可能性が高い。



 リムジンは狩野家に寄って、俺はしばし、娘と遊んで団欒を過ごすと日本の滞在先に向かう。リムジンのテレビを見ると織田麻里さんが出ていた。彼女は現在、女優としても活躍中で、現在、若手女優として不動の地位を獲得していた。ストンデングループのCMにも出てもらっていて、売上げ上昇中であった。超美人なのに浮いた話は一つもないのだが、密かに俺と付き合っているのはかなり高度な秘密だ。バレるとかなりのスキャンダルだが、そのスリルがたまらないといつも彼女は口にする。この日本滞在中も彼女と何度か会う予定である。


 関ヶ原のメンバーでは、浮竹さんはゲームで助けてもらった明石掃部介あかしかもんのすけプレーヤーとめでたくゴールイン。彼は学校の先生らしく、今は教師の妻として2児を育てているお母さんだ。直江愛ちゃんは、OLをしながらあの2人とつかず離れずの交際を継続中。上杉プレーヤーは、愛ちゃんのためにサラリーマンを止めて起業し、今や若き上場企業オーナーになっているらしい。伊達プレーヤーは、愛ちゃんに進められて漫画家としてヒットを飛ばし、今や漫画界のヒットメーカーとして大活躍中である。二人とも愛ちゃんの愛を得るために爆進中らしい。

 

 真田雪之ちゃんは、現在、アナスタシアの女子学生。素敵な彼氏ができたということだ。黒田メイサちゃんは、大学中に司法試験が受かり、現在は安国寺先生の事務所で弁護士として活躍中。ちなみに安国寺恵さんは、ストンデングループの顧問弁護士として活躍中である。藤堂魅斗蘭ちゃんは、婦人警官の白バイ隊員として、暴走族取締に活躍中とのこと。

 

 福島帆稀ちゃんは、見事、細川ジョルジュとゴールイン。今は貞淑な妻としてパリに在住。小うるさい小姑のルシアともうまくやっているそう。長谷家部の野郎は、現在、大手銀行のサラリーマンをやっている。現在は新妻を伴ってロンドンに赴任中。新妻はもちろん、長束英美里ちゃんだ。


 蒲生聡は、高校生俳優として活躍中。相変わらず、スケベキャラは治っておらず、そのキャラで何故か女性に人気がある。セクハラされたい若手芸能人ナンバー1という、名誉だか不名誉だか分からない称号をいただいている。ゲーム中、俺たちを助けてくれた本多アギトは姿を消した。噂によると海外で戦場カメラマンとして活躍中とのことだ。


 そして早川秋帆ちゃん。彼女の父親は美鳴の家から資金援助を受けて、会社を立て直すことができ、彼女は大学を卒業して、今は父親の会社で働いている。近々、付き合っている彼氏と結婚するそうだ。


 どうやら到着したようだ。屋敷の前に車が止まる。ドアを開けると一ヶ月ぶりに見る顔があった。


「もう!大介、ちょっと遅いんじゃない?」


 石田美鳴だ。彼女もストンデングループで経営者の一人として活躍中である。プンプン怒っている美鳴をなだめながら、屋敷に入る。大きなリビングにお茶が用意されている。


「予定じゃ、3日前に着くはずじゃなくて?わたし、瑠璃千代から聞いたんですけど?」

「いや、それはその…」

「そんな日焼け姿どこかで見たなと思ったら、雪見も日焼けしていたわ!これじゃあ、社内で二人が付き合っていることバレバレじゃない?」


(そう言えばそうだが…実のところ、もうすでに既成事実は公然じゃないですか?)


「まあ、いいわ。わたしも大介に話すことがあるから」


そう言って、美鳴は急に俺に寄り添う。


「もう!一ヶ月も若妻をほっとくなんて、夫としては失格です!」

「それは仕方ないじゃないか。俺はニューヨーク勤務だし、君は日本本社だし。君のお父さんの陰謀じゃないか」

「そんなことはありません。これは高度な女同士の契約でこうなったのですから。でも、わたしは時々思うの…。あなたをわたしが独占できたらって。もう、寂しかったんだから!」


「美鳴~」


 俺はここ数日間のいろんな大人の事情で疲労していたが、やっぱり愛おしい美鳴を前にするとパワーが全開になる。やっぱり、ツンデレは年が経ってもツンデレだ。


 しばらくして、ベッドで横たわり美鳴の髪をいじっている俺は先ほどの美鳴の言葉を思い出した。


「そう言えば、俺に話すことって…」

「3ヶ月ですって!」


「え?」

「3ヶ月。もう察してよね!やることやってるから、できて当然よね!」


「え?ええ!」


「これで舞には大きな顔はさせないわ。瑠璃千代にも雪見にも勝った!ああ、麻里さんはさすがに無理よね。対抗するの!」


「そうなのか?」

「何?大介?ストンデングループ総帥候補としての自覚がないわね。嬉しくないの?」


俺は美鳴を思いっきり抱きしめた。


「うれしいに決まってるじゃないか!」


美鳴もギュッと俺に抱きつく。


「大介~好き好き…。もう、大好きなんだから!」


 俺は正式には美鳴と結婚していた。今は石田大介である。でも、ニューヨークには現地妻(瑠璃千代)、プライベート秘書(雪見)に隠し子のいる愛人(舞)に芸能人の恋人(織田麻里)にこの可愛いツンデレ新妻(石田美鳴)をもっている。ハーレムの住人だ。


俺のカラダは保つのか?寿命が大きく削られてないか?


う~ん。愛の形はいろいろだ。男にとって都合の良い状況だが、みんな幸せにしてやるのが、ヒーローの仕事だ。男の甲斐性だ。


全員、俺が守って幸せにしてやる!



と・・・そこで目が覚めた!


夢オチかよ~っ!残念!!


(完)




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― 新着の感想 ―
[良い点] ありがちなVRMMORPGではなく、戦国VRSRGという所 [気になる点] オフ(リアル)での人間関係や巨大な権力、 経済力との駆け引き先行で、全然オモンナイ [一言] ラストでの東宮院の…
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