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第2次関ヶ原の決戦~愛が勝ちました!(最終章)~

終わりました・・・劇的に?6ヶ月前に始めたこの作品。物語的には今回で終了です!あとは歓喜のエンディングでしょうか?

 秋帆が突然、この激戦の中に現れ、徳川隊を裏切る形で立ちふさがることができた経緯は数分前に遡らねばならない。小早川秀秋こと早川秋帆は、この戦場に1万4千の戦力で徳川方として参加していたが、美鳴を前回の関ヶ原で裏切ってしまい、もはや精神的に崩れた状態であったから、西軍に押されまくり、敗走を重ねていた。大軍だけにすぐには崩壊するわけでもなく、ジリジリと時間が過ぎていくことに身を任せていた。そんな時に、ふいに声をかけられて我に返った。


「秋帆さん!あなたはこのままでいいの?」

「メ、メイサ先輩!」


 馬上から声をかけてきたのは、黒田メイサであった。メイサはここ数日の秋帆の姿を見て、とても心を痛めていた。彼女はこのゲームで心が傷つき、それを一生の重みとして背負って行くことになる。それを少しでも軽くできるのは、やはり、このゲーム内だけだとメイサは思ったのだ。


「あなたの心を生かすも殺すもあなたの決心しだいよ!早川秋帆に戻って、石田美鳴を慕う可愛い後輩に戻って、あなたはこのゲームを去るべきじゃないの?」

「先輩…でも、この状況じゃ、私には何もできない!」


「あなたの近衛隊ぐらいなら、瞬時に移動させることができるわ」

「え?」


「これ、このアイテム。縮地の札。真田さんみたいにレアな特殊能力はないから、アイテムで手に入れたのよ。めちゃ高くて前回の戦功でいただいた報酬が吹き飛んだけど。使うなら今かもね!」


 黒田メイサは、縮地の札を取り出した。このアイテム。少数の軍勢ならば、瞬時に移動させることのできるスペシャルアイテムなのだ。消費型で使えるのは1回。値段は1枚10万円にも及ぶという代物だ。


「先輩、先輩の東軍を私は裏切るのに、こんな事していいの?」

「いいのよ。私は面と向かって裏切る勇気はないけれど、正しい方向を見つけたら修正するのが人間よ。私たちは若いのですから、間違いはたくさんあるよ。だから、秋帆ちゃんは、勇気をもって正しい方向に進んでちょうだい!」


「分かりました。私は私を取り戻す!」

「縮地を発動します!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「違い鎌の旗印にちんくしゃな小娘ときたら、早川秋帆だな!この役たたずの小娘が!目障りだ!どけ、この裏切り者が!」

「何とでも言うといいわ!私は美鳴先輩のために戦う!」


「裏切って汚名として名を残したばかりか、再度裏切るという人間のクズが!しかも、裏切って起死回生の役割を演じるならともかく、貴様のその少人数でできるのは単なる時間稼ぎ!ここで引導を渡してやる!」


 是清の言うことは最もだった。秋帆ちゃんの軍勢は僅かに8百人。縮地で運べる軍勢に制限があるから仕方ないが、これで形成が逆転するはずもなかった。


 だが、これは俺には思いがけない状況であった。今の俺には時間が欲しかった。加藤清正を撃破して、この戦場に瑠璃千代が到着するのがあと3分ほどだったからだ。3万を超える徳川勢の前に瞬殺される程度の小勢である小早川勢であったが、この時は違った。秋帆自身がここで散る覚悟で先頭に立って突撃する。そんな可憐な姿に心を打たれた小早川の家臣団がキャラロスト承知で挑んでくるから、さすがの東宮院もたじろんだ。


 一時は200mも後退する羽目に陥ったが、所詮は多勢に無勢。小早川隊800人はことごとく討ち取られ、秋帆自身も鉄砲の銃撃をまともに受けて落馬した。家来がかろうじて秋帆を引きずって後方に下がる。美鳴が慌てて、秋帆ちゃんに駆け寄った。


「先輩…美鳴先輩」

「秋帆ちゃん!」

「わたし、少しは役に立ったかな?」

「うん…秋帆ちゃんのおかげで助かったよ」

「よかった…」


 美鳴の言葉を聞いて、秋帆は安心した表情になった。そして、ガクッと体から力が抜けた。ゲーム内での命を失ったのだ。キャラロストだ。


「秋帆ちゃん!秋帆ちゃん!」


 美鳴の声が響く。俺は思わず目を閉じた。ちょうど3分が経過した。俺が欲しかった3分間の時間を秋帆ちゃんはもたらしてくれたのだ!


「立花瑠璃千代様、福島帆稀様、左右から徳川隊に突入しました!」

「よし!秋帆ちゃんの死は無駄にはしない!」



「左右からの挟撃、さすがは戦国ばとる2でこの人ありと言われた名軍師、島左近。だが、今さら遅いわ!」


 東宮院は正面の石田隊だけを集中攻撃する。石田美鳴を討ち取れば勝ちなのだ。それに3軍を同時に動かせる自分は、3方向で協力プレーをする西軍よりも素早く部隊を動かせるのだ。いくら立花瑠璃千代と福島帆稀が強くとも、石田本隊を撃破する時間よりも早く、徳川隊を壊滅させられない。


「東宮院是清、仲間と協力できないこと。それがお前の弱点だ!雪之ちゃん、縮地を!」


 俺は真田雪之ちゃんに命じて、縮地を発動した。是清の本陣前に瞬時に移動するのだ。そう、東宮院の弱点をつくのだ!左右から突入した瑠璃千代と帆希は敵兵に構わず、それぞれの大将に肉迫する。


「我は立花瑠璃千代なり~、本多忠勝!尋常に勝負しろ!」

「あたいは福島帆稀!あたいを振った恨みと、ジョルジュ様に勝利をプレゼントするため、井伊直政、お前をここで倒す!」



「なるほど…考えたな。さすがは稀代の軍師と言われる島左近。ゲームの本質を理解した上でのこの仕掛けとは」

「是清!いくらお前でも、一騎打ちの格闘コマンドを同時に操り一度に3体は動かせまい!」


 俺の言うとおりだ。軍勢への命令は秒単位だが、格闘のための命令はゼロコンマの世界である。格闘ゲームで同時に3つのキャラを操って勝てる者など、この世界にありはしない。


「本多忠勝討ち取ったり~」

「井伊直政討ち取ったぞ!」



瑠璃千代と帆希が同時に勝ち名乗りを上げる。


「どうやら、東宮院、お前は俺との勝負にかけたようだな」

「当たり前だ。僕はいつでも判断はあやまらない」


 同時に3つのキャラを動かそうとすれば、3体とも勝てないから、1つに集中するのは当たり前だが、罠にかかってパニックにならず、冷静に俺との一騎打ちを選択した東宮院是清という男は、やはり優秀だ。敵キャラとしては申し分ない。


「島左近、よくぞ、ここまで僕を追い詰めた。だが、お前をここで討ち取り、後ろの石田美鳴を討ち取れば、それでゲームセット。僕の勝ちは動かない」


 俺は自分の背後を見た。美鳴がそっと立っている。縮地で一緒に移動したのだ。後方にいてもここにいても、俺が敗れれば美鳴もキャラロストは免れない。せめて、自分が後方支援をして俺を助けようというのだろう。賢明な行動だ。東宮院是清が操る徳川家康キャラと島大介こと島左近キャラは、レベルはおよそ拮抗、よって能力もほぼ同等であった。だが、格闘ゲームプレーヤーとしての腕は東宮院の方が上であった。だが、そんなことは言っていられない。



最後の戦いだ!


「いざ!勝負!ここで死せよ!東宮院是清!」

「かかって来い!青二才が!」


 俺は槍を突き出すが、それを弾き、鋭い踏み込みで俺の脇腹をかすめる。あまりの衝撃に胴あてが吹き飛ぶ。激しい格闘が繰り広げられるが、6対4の割合で俺の方がダメージを受けている。


(ちっ!さすがは東宮院、格闘ゲーもうまい!)


感心している場合ではない。実力では劣っているのだ。こちらはイチかバチしかない。


「美鳴!あれを発動させろ!」


俺は叫んだ!後方からの支援。石田美鳴が持つ特殊能力…。


(忠実なるしもべ)


が発動した。俺の攻撃力が一気に高まる。オーラが青から緑、赤へと変化する。(忠実なるしもべ)は、忠実な家来一人の任意の能力を一時的に上げるのだ。ただ、他の能力は0になる。よって、俺の鎧は吹き飛び、守備力は0となる。


「この状態で鎧などいらない!生きるか死ぬかだ!」

「捨て身の攻撃か!馬鹿め!破れかぶれになってどうする!」


「渾身の一撃をお見舞いしてやる!うおおおおおおおおおおおおおっ!」


 俺はオーラに包まれた十文字槍を突き出し突撃する!是清も槍を突き出し、最大奥義、「葵の誇り」を発動した。どんな防御癖も打ち破る一撃必殺の技だ。


「お前には分かるまい!美鳴を信じてこの戦場に集った友の友情!お前には分かるまい!裏切りの汚名を再び受けても、自分の正義のために散った後輩の先輩への愛を!」


「そんなもの!何の役に立つ!そんなもの!」

「お前には分かるまい!大切な愛する主君を守るために散る男の愛を!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

「させるか~おりゃあああああああああああああ!」


 

 俺の脳裏に石田美鳴の顔が浮かんだ。ニッコリと彼女は微笑んでいた。



「馬鹿な…最初から…相討ち覚悟で…」


 東宮院是清は自分の体を貫いた槍を見て俺にそう言った。俺も是清の槍を胸に受けて血を吐きながら、


「計算高い東宮院様なら、俺が相討ち狙いに来ることは計算の内ではなかったかな?」

「いくらゲームの中とは言え、他人のために命を捨てられるものか!そんな計算は僕にはできないさ…」


「ははは…俺が死んでもゲームでは家臣が一人討ち死にするだけ。だが、東宮院、お前の死はこのゲームを終わらせる。相討ちじゃなくて、お前のゲームオーバーだな」


「ぐふっ…バカの考えは最後まで読めなかったのが僕の敗因だ。お前に負けたわけじゃない。僕の不徳の致すところだ」

「なんとでも言え!バーカ。リアルで会っても俺を恨むなよ」


 俺はその場に倒れて仰向けになった。東宮院も同様だ。ゲームだから痛みはないのだが、やはりキャラロストしていくから意識が遠のく。


(後悔といえば…ゲームの中だけとは言え、美鳴を悲しませたことか…)


泣き叫んで俺の体を揺り動かす美鳴を見ながら、俺は意識を失い目を閉じた。


(ね?東宮院様?愛は勝つでしょ?これで信じてくれますわよね?)


東宮院の目の前に小谷吉乃が現れた(ような気がした)彼女は彼の手を取り、そして優しく言った。


「しばらくお休みになって。悪夢はきっと覚めますわ。あなたが愛に気付くなら…」


 秋帆ちゃんの最後の場面は悩みました。もう一度裏切らせるのか?と思いましたがやはり、最後は先輩のためにゲームに殉じないとリアルでも幸せがきそうにないので散ってもらいました。主人公の相討ちは決めてましたけどね。

(なにしろ、ゲーム内で死んでもリアルではピンピン!可愛い美鳴ちゃんを残して死ねるか~!)

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