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第2次関ヶ原の決戦~愛が勝つに決まってます~(弐)

加藤清正VS立花瑠璃千代・・・史実でも九州の自領へ逃れた立花宗茂は、加藤清正と戦って男気を見せます。最後は開城して東軍に下るのですが、彼の忠誠ぶりを見た徳川家康はその後、彼を旧領の柳川の大名に復帰させます。東軍で戦った福島正則らが改易されたのとはえらい違いです。

(西軍で戦って、奮闘したのに罪を許されて大名に復帰したのは彼一人です)

「おら~皆の者、あの裏切り者を生かして返すな!いけ~」


 福島帆希は勇ましく馬上にあり、兵士を叱咤激励している。自分も東軍からの裏切りなのに全面の早川秋帆を裏切り者呼ばわりするのはおかしいのだが、もはや裏切り=小早川のイメージができていて、彼女のセリフにツッコミを入れる観戦者もいない。

 鬨の声を上げて、小早川勢に突っ込む。小早川勢は、そのあまりの勢いに有効な鉄砲の射撃ができず、足軽隊との乱戦に持ち込まれる。


「あの女に手柄を独占させてたまるかですの!」


 細川ルシアはルシアで、自分の大切なお兄様であるジョルジュに、帆希が急接近して焦っていた。ありえないことにどうも愛しの兄は、あの変わったタイプの帆希に心惹かれているようで、妹の自分が見たところ、相思相愛の気配がしてきた。


(あんなお下品な女、お兄様なんかにふさわしくないわ!これなら、まだ、石田美鳴の方がよかったわよ)


とこの妹は思ったが、兄の恋路を邪魔する小姑にも徹しきれなかった。兄の意向で東軍から寝返って、帆希と共にこの戦場に来ているのだ。元々、このゲームに快感を覚えつつあった細川ルシア珠希は、福島帆稀に負けじと軍勢を進ませる。さらに小西雪見ちゃんの件で東宮院を見限った藤堂魅斗蘭も配下のレディースの面々を率いて参戦している。


 対する小早川勢を指揮する早川秋帆は、美鳴を裏切った贖罪意識に苛まれていた。自分のした行為に最後まで殉ずることが大切と美鳴に諭されて、東軍参加のまま、この戦場に義務感だけでいる。東宮院是清はそんな秋帆を信用せず、監視のために黒田メイサをその後ろに布陣させていた。それも分かっていて、秋帆の心境は複雑であった。当然、戦いに集中できるわけもなく、さらに前回の戦いで有能な部下も失っていたので、大軍ではあったが対抗する力がなかった。散々に福島&細川隊に打ち破られて後退していく。他の東軍諸隊がなんとか支えて、この方面の戦線をかろうじて保つのが精一杯であった。


「畜生め!こんなはずではなかったのに!」


 東宮院是清は、現在の無様な状況に舌打ちをし、何度も同じ愚痴をつぶやく。99%勝っていたはずだ。だが、今や西軍のリベンジの戦いに引きずり出されている。

 今回は自分も前面に出て戦う羽目に陥っていることが、何とも悔しいところだ。だが、自分が率いる徳川勢3万8千が前面にでないととても勝てない状況だ。金で雇った連中は、旗色が悪くなればキャラロストを恐れて、さっさと逃げ出すであろう。少しでも優勢な状況を作っておかないと士気が一気に崩れてしまうのだ。

 

 今のところ、自分が担当する中央と左翼は善戦している。いや、少し押しつつある。特に一番懸念していた西軍の精鋭部隊である立花瑠璃千代と織田麻里の部隊を抑えているのが大きい。加藤清正という男は、まったく有能であった。北陸の前田勢だけでは、とても耐えられなかったであろう。


「しかし、それに比べて南西方面はどうだ!あの小娘の無能ぶりは!」


 秋帆のことを指して罵倒してみたものの、彼女の心境を考えれば、この状況は十分予想されていた。有能だった黒田メイサも美鳴への自分の態度が気に触ったようで、今回の戦いも義務だけで参加しているようであった。そのおかげで西軍に圧倒されて、この方面は既に崩れつつある。


(あの女を切るのは早すぎたか!)


と是清は後悔していた。あの女とは、福島帆稀のことである。冷たく切り捨てたおかげで西軍に走り、怒涛の攻撃力で自分の東軍を押しまくっている。馬鹿で無能な小娘と思っていたが、敵に回すと実に厄介である。戦術も作戦もなく、がむしゃらに突っ込んでいくだけであるが、そのパワーが半端ないから、乱戦に巻き込まれて相手の思うツボになっているのだ。


「黒田メイサに伝令。何とかして、あの暴走娘を抑えろとな!」


 是清は使者を派遣する。自分自身の軍で西軍中央を突破して、勝利を掴み取ればよいのである。まだ、負けたわけでないのだ。



 使者より伝言を受けた黒田メイサは、


「フー」


と嘆息した。


「私も早川さんと同じで戦う気は全く起こらないわ。あんな汚い大人の論理に騙されていた自分が情けない」


 メイサはそう思ってはいたが、性格上、帆稀たちのように裏切る気にはならない。また、完全に指揮権を放棄して敗走するのも自分が無能みたいでできない。適当に戦って、自分の名誉が守れるくらいでいいと思っていたのだ。


「姫、敵の一部が我が陣へ突進してきます」


伝令の報告が来る。見ると200程度の槍隊が乱戦を抜けてきて、黒田の陣へ向かってきている。


「鉄砲隊で応戦。その後、それ以上の追撃は厳禁!」

「はっ!」

(こうやって適当にあしらって、戦いの結果が決まればさっさとログアウトするわ!)


 メイサの考えるところ、多分、東軍は敗れる。戦況的には五分と五分だが、運命には流れというものがあるのだ。そういう流れを機敏に感じ取れるところが彼女の賢さであった。


 

 北西方面は東軍が加藤清正を中心に西軍に攻勢をかけている。清正率いる軍団の破壊力はすさまじく、立花瑠璃千代はまともに相手をしては全軍の崩壊を招くと考え、巧みに引きながらその勢いを受け流し、膠着状態にもっていくとともに、清正の軍勢以外の東軍には強烈な攻撃を加えていた。自軍の立花勢と宇喜多勢、織田勢にも適切な指示を与え、守勢と攻勢を巧みに使い分けていた。


「立花瑠璃千代といったか…。この方面の大将は」

「はっ」


馬上で指揮する清正に家来が応える。


「あの退却の見事さはどうだ。そして中央軍を引かせると同時に左右は突進して我が軍を包囲しようとする抜け目のなさ」


 攻撃力がある清正の軍にはまともに相手をしないで、代わりに弱い前田勢に攻撃を与えくる。戦いでは押しているのだが、被害は徐々に東軍の方が多くなっていく。清正がいくら兵を動かして撃退しても、自分のいないところで逆襲され、そこに援軍に赴くと敵はさっさと退却して、清正のいない戦場で攻勢を強めるのだ。

 しばらく思案していた清正は、この状況を打破するために思い切った策に出た。一旦、自軍を引くと前田勢に戦場を任せて後方に姿を消したのだ。



「瑠璃千代さん、これはどういうことでしょうか?」


 織田麻里が瑠璃千代のところにやってきた。加藤清正が退いたので、西軍は浮竹姉さんを中心に前田勢を一気に押し込む態勢に入る。


「おそらく、何かの罠でしょうね」

 

瑠璃千代は清正の意図を正確には分からなかったが、単純に退却したのではないことは分かっていた。


「敵の意図はともかく、今、全軍で攻めかかれば、一気にこの方面の敵を蹴散らすことができませんか?前田の北陸軍を敗走させれば、清正の軍は少数。我が方の敵にはならなくなるかも…」


「それもそうですが、彼の意図はこの方面の西軍の撃退のはず…。我が軍の攻勢を誘って一気に殲滅する方法を考えているはずです」

「浮竹中納言から伝令。現在、敵を追撃中。至急、援軍の投入を願うと」


 前線の宇喜多勢を指揮する浮竹栄子さんからの伝令である。前衛の宇喜多勢7千が攻勢を強め、浮き足立った前田勢が崩れ始める気配があった。今、ここで織田勢と立花勢が追撃すれば、敵は敗走するのは必死である。


「瑠璃千代さん、今がチャンスです。全軍で追撃しましょう!」


 瑠璃千代は考えた。状況は味方有利である。だが、後方に消えた清正の軍勢の消息は未だに不明である。一抹の不安を覚えた。だが、決断はしなければならない。


その時、ポロリぃん…と瑠璃千代にメールが入ってきた。一瞬でそれを読み、把握した瑠璃千代は、全軍に命令を出した。


「全軍、突撃!一気に敵を殲滅せよ!」

「はっ!」

「それと長宗我部隊に、長谷家部さんに伝令を!」


さあ、どうなる?立花瑠璃千代、自称主人公の嫁。この戦いに勝って、見事主人公もゲットできるか?

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