王子様は危機一髪の時に現れるのよ!(壱)
本日3回目の投稿なので、ちょい短めでごめんなさい。美鳴ちゃんが捕まったと聞いて絶望する西軍の面々ですが、諦めない人がいました。関ヶ原では活躍できなかった立花瑠璃千代。彼女の励ましで絶望からの大逆転劇が開始されます。
「なに?美鳴が捕まった?」
衝撃的な情報が風魔の小太郎こと、本多アギトから知らされたのは俺が瑠璃千代や舞さんの待つマンションに帰宅した時のことだ。
「石田美鳴は昨日、総合病院で小谷吉乃の病状を見舞いに来て、東宮院の手の者に拘束された。ゲームでも東軍に自首したらしい。身柄はリアルでは、東宮院の屋敷に。ゲームでは大津城に囚われている」
「吉乃ちゃんの見舞いに…?」
「小谷吉乃は発作を起こして、緊急手術をすることになった。手術は成功して一命は取り留めたそうだ」
俺たちはある意味ほっとした。吉乃ちゃんがリアルでもいなくなったら…と思うと心にぽっかり穴があいてしまう。だから、美鳴がすべてを投げ捨てて彼女の元へ行ったことが理解できた。彼女らしい選択だと思った。
「これで終わったわね」
織田麻里さんがポツリとつぶやいた。彼女の言う通りである。ゲーム上でもリアルでも明日には終わりである。
「本日は大津城。明日には京都で引き回しの上、六条河原で処刑の予定。リアルでは、明日、テレビ局の記者会見で東宮院の奴が石田美鳴との婚約を発表するそうだ」
アギトはつかんできた情報を教える。ゲーム上のコミュ二ティルームなので、現在の西軍諸将である織田麻里さん、瑠璃千代、舞さん、長谷家部、英美里ちゃん、聡の奴もこの話を聞いている。
「万事休すだな…」
俺は織田麻里さんの言葉にそう答えるしかなかった。現在、岐阜城には西軍の残党部隊が勢いをつけており、東からは江戸を落とした愛ちゃんたちが駿府城を包囲している。だが、美鳴がロストした瞬間、ゲームは終わる。そしてリアルも…。
テレビのニュースが緊急放送を流している。
「あの東宮院ファンドが、あのストンデングループの買収工作をしていたことが判明しました。買収額は未定ですが、かなりの資金が使われているとのことです。これを受けて、東京株式市場では、ストンデングループ株は軒並み大暴落し、関連株も激しく上下する波乱のマーケットとなっています」
女性アナウンサーの声が部屋に響いている。ゲーム上でもこのテレビの様子は確認できる。
俺の頭の中は真っ白で何も考えられなかった。白い白い世界にぽつんと置かれた椅子に俺はただ座っているだけだ。美鳴を永遠に失うということはこういうことなのだ…と俺は思った。殺風景な風景に魂を抜かれた俺。
パーン
「痛っつ…」
という音で俺は現実に引き戻された。俺の頬を叩いたのは立花瑠璃千代であった。
「旦那様!あなたはもう諦めるのですか?」
「瑠璃千代…」
「私の愛する旦那様は、美鳴さんを失った魂の抜け殻のような人ではありません。彼女を最後まで救う努力をしてこそ、私の旦那様です!」
「瑠璃千代…お前…」
「私には分かります。大介さん、変わりましたよね。大人の階段を登ったのでしょう?」
「な、何、言うのだ?瑠璃千代!」
「ふふふ…。焦る旦那様も可愛いです。大丈夫!」
「大丈夫って…何が?」
「この瑠璃千代、夫の浮気にいちいち目くじらを立てる度量のない妻ではありません。美鳴さんを助けに行きましょう!まだ、勝算はありますわ!」
俺の脳内に光が差した。確かに彼女の言うとおりだ。一秒でもチャンスがあれば、美鳴を救い出せる。
「瑠璃千代、ありがとう」
「お礼は美鳴さんを救出した時に。でも、忘れないでね。正妻は私ですから!」
そう言って、瑠璃千代はアギトに命じて美鳴救出作戦を指示している。また、リアルでも美鳴を救出する手立てを考えねばならない。
主人公は美鳴ちゃんできまり!と思っていましたが、よくできた嫁がいました。これだけよくできると、やはり正妻はこと人か?と思ってしまいます。後半、美味しいところを持ってきそうなキャラになりそうです。




