表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/160

さらば!友情、さらば!わたしの恋(拾壱)

ついに、ついに見つかってしまうのか?ゲームでもリアルでも逃亡中の主人公とヒロインの二人ですが、今回、ついに結ばれます。大介~貴様、美鳴ちゃんを不幸にしたら許さないんだから!(笑)

「石田美鳴…だな…」


 ルシアが美鳴の顔を見てそう言った。その声は洞窟にかすかに響いた。


(終わった…)


 俺は美鳴を抱きしめながら、そう思った。ゲームはこれでゲームオーバーだ。後はリアルでどう美鳴を守るかだ。ゲームはこれで終わったと思ったが、簡単に終わるわけにはいかない。ここはルシアに斬りかかり、島左近らしく華々しく散るのみだ。美鳴がキャラロストする時間を稼いでやらなければ。そう思い、そっと美鳴から体を離し、右手で槍を掴んだ。

ルシアは刀を抜く。そして素早く一閃すると自分の両側にいた足軽がどっと倒れた。この護衛の2人はコンピューターが操るキャラなので、無言で倒れる。


「ど、どういうつもりだ?」


 俺はルシアにたずねる。


「ふん。個人的にはここで捕らえて晒し者にしたい気分よ。わたくしの大好きなお兄様を振るなんて信じられない真似をする石田美鳴に天誅を与えたいわ。でも、それをするとお兄様が悲しむの。従って、わたくしは不本意ながら、あなたたちを助けることにします」


「ルシアさん…」


美鳴がルシアの顔を見る。


「ふふふ。ひどい顔。そんな汚れた顔でお兄様に会うと、お兄様が驚きます。まずはこの足軽の扮装にチェンジしなさい。わたくしの護衛に化けて細川の陣までいきます。まずはゆっくり休んでから、岐阜城へ逃がしてあげます」



「ルシア?その洞穴に何かいたか?」


そう穴の外で福島帆稀の声がする。


「何もいませんわ。こんなところにいるわけがありません。蜘蛛の巣だらけで、汚いところよ!」

「そうだろうなあ…そんなところにいるものか!やっぱり、村をしらみつぶしに探すべきだと思うけどなあ」


そう帆希の声が遠ざかっていく。


「早く、着替えてくださいな」


 ルシアがそう言うので、俺は足軽の装束に着替えたが、美鳴のヤツはモジモジしている。


「美鳴、早く着替えろよ!」

「バカ!着替えるには全部脱がなきゃいけないの!」

「だから、脱げばいいじゃん」


バチッ…と頬を叩かれる。


「あっちを向いていて頂戴!本当にデリカシーがないのだから!」


 忘れていた。見ようによっては、くのいち装束がちょっとエロい格好だったので、ここから脱ぐのは対して変わらないと思ったのである。だが、やっぱり一枚脱いで下着になるのは抵抗があるのだろう。また、女の子にとっては、男の前で脱ぐという行為が恥ずかしいことは間違いない。

 慌てて後ろを向いた俺は、2分後に足軽に化けた美鳴を連れてルシアと共に洞窟を出た。山の麓の村に陣を構えていた細川隊に紛れ込んだのだった。


「美鳴、ルシアちゃんのおかげで助かったぞ!」

「そうね。まさか、東宮院の奴もわたしたちが細川隊に紛れ込んでいるなんて思わないものね」


 ゲームからログアウトした俺たちは、とりあえず胸をなでおろした。今日1日は隠れていて明日以降に、岐阜城へ行く方法を考えればいい。ルシアの話によると今晩、本格的な山狩りを行った後、細川隊は現在、東軍が苦戦中の岐阜城攻めに向かうらしい。細川隊に紛れ込んで行けば、岐阜城へ逃げ込むことは難しくない。


「ほっとしたら、眠くなっちゃった。わたしお風呂に入ってくるから」


そう言うと美鳴は、ポンとベッドから飛び降りた。


「先に言っておきますけど、わたしの入浴シーンをのぞくのは無しだからね!」

「はいはい。のぞきませんよ」

「ふふふ…よろしい」


 本当はちょっとのぞきたいという衝動はあった。こういう気持ちが出てきたということは、現在、追っ手から逃れて、リアルでもゲームでも安心できるという状況だからであろう。俺は風呂場から聞こえてくるシャワー音と美鳴の楽しそうな鼻歌を聞きながら、ついウトウトしてきた。

 

 


 どれくらい時間がたったであろうか?時計を見ると1時間はたっていた。もうシャワー音は聞こえてこない。さすがに1時間も風呂には入らないだろう。うっすらと目を開けるとガウンを羽織った美鳴がゲーム端末をのぞいていた。


「美鳴、30分以上はゲームにログオンしちゃだめだぞ」

「わかってるわ」


その声は先ほどの軽い感じでなかった、なんか重々しい感じだ。


「どうしたんだ?」


 俺は嫌な予感がして、そう美鳴にたずねた。だが、急に明るい口調になって、


「なんでもないわ!大介もすぐお風呂に行って頂戴!ねぐさっていて臭いわ。ちゃんと頭も顔も洗うのよ!」

「はいはい…」

「あと足の裏もね!」

「はいはい…」


 俺はそう言って風呂に向かった。でも、何だか様子がおかしいと感じていた。


シャワーを終えると部屋が真っ暗であった。カーテンの隙間から漏れる夕焼けの光が暗い部屋を照らしていた。


「美鳴?」


 俺は呼んだ。返事がない。俺は慌てて浴室から飛び出した。腰にバスタオルを巻いたままだ。


「美鳴どこだ?くそ!スイッチはどこだ!」


 部屋が暗いので俺は電気を付けようと壁を手で触りながら移動する。そして、お目当てのスイッチが指に触れたので、それを押そうとした瞬間、その手は柔らかい手のひらで押し包まれた。


「電気は付けないで!」

「美鳴…よかった!どこかへ行ってしまったんじゃないかと。え?」


 俺は背中に感じるやわらかい感触で思わず固まった。


(こ、これは…この感触は…お、お、おっぱいか~)


キター


である。腰に巻いたタオルがぱさりと地面に落ちる。ピトッとくっついた美鳴の体からは、邪魔なものは一切感じられない。柔らかい体の感触が俺の全身に伝わってくる。


「み、美鳴、これ、その、あの、どういうこと?」


 この状況で俺はあまりの心臓の高鳴りで何を言っているのか自分でも分からない。これだから、童貞君は困るのだ!と自分で自分を突っ込んでみる。


「大介、聞いて!」

「・・・・・・・」

「あの、大介、あの、その…」


 美鳴の奴も心臓がドキドキしているらしい。背中を通して彼女の気持ちが伝わってくる。


「大介は、わたしのこと…わたしのこと…ス、ス…」


ギュッと美鳴の手が俺の体をつかむ。


「わたしのこと、好きですか?」


好きですか?好きですか?好きですか?好きですか?好きですか?好きですか?

好きですか?好きですか?好きですか?好きですか?好きですか?好きですか?


 俺の頭の中が美鳴の発した言葉で埋め尽くされる。美鳴の顔は見ていないが、きっと俺の返事を聞くのが怖くてギュッと目をつむっているに違いない。そんな彼女の顔が想像できたとき、俺は直感で、


(ああ…俺はこのが好きなんだ)と思った。


 俺は振り返り、美鳴を抱きしめた。


「好きだ!俺は美鳴が好きだ!愛している!」

「本当に?」

「ああ、本当だ!」

「わたし、いつも生意気に命令しているし、吉乃みたいに可憐じゃないし、瑠璃千代みたいに胸も大きくないよ。それでも好きって言ってくれる?」


「美鳴には美鳴の魅力があるよ。俺はそんな美鳴が好きだ」


 美鳴は俺の首に手を回した。自然と唇が触れ合った。


「うれしい。大介、わたし、あなたが好きなの。大好き!」

「美鳴~」


 無我夢中で美鳴とキスをする。よく考えれば、お互い何も着てない。


「大介、していいよ」

「え?だって、お前を好きにしていいのは、関ヶ原で勝ってからだって」

「いいの。今はあなたを感じたいの。あなたに勇気をもらいたいの。お願い」


 俺はそっと美鳴を抱きかかえた。ベッドに横たえる。薄明かりの中、彼女の白い肢体がわずかに浮かび上がる。とても美しいと俺は思った。


「いいのか?」


コクっとうなずく美鳴。


もう何も言葉はいらない。俺たちは体を重ね合い、お互いの愛を確かめ合ったのだった。



事を終え、俺の腕を枕にした美鳴に俺は優しくたずねた。


「なあ、美鳴、お前、いつから俺のこと好きだったんだ?」

「わたしたぶん、大介と初めてあった時。駅でわたしの腕をつかんでくれたときだと思う。それからいろいろあったけど、わたし、男の人を好きになったことなかったから、はっきり気づかなかったんだと思う」


(そうか…じゃあ、それから俺にいろいろ意地悪なことしてたのは、無意識の愛情表現って奴だったのか?お約束とは言え、可愛い奴だ)


「ねえ。大介は?大介はいつ、わたしのこと好きになったの?」


 そう言われると俺はいつから、彼女のことが好きになったのだろうか?ゲームに誘われ、散々振り回されても嫌な顔せず、彼女の忠実な部下を演じてきた俺。この可愛らしい主君にいつ惚れたのか?


「たぶん、俺も美鳴に会った時だと思う。一目ぼれってやつかな?」

「大介…うれしい」


 美鳴は俺の胸にほおを寄せてくる。あまりの可愛さに俺はそっとその頭を撫でた。でも、胸に痛みが走った。美鳴の奴が急につねってきたのだ。


「一目惚れした割には、瑠璃千代とか、舞とか、吉乃とか、雪見とか、いろいろとよそ見をしていたわよね!」

「いや、あれは、その、巻き込まれただけで…」

「もう!本当にはっきりしなんだから!でも、わたしをいいようにお抱きになられたのですから、責任は取ってくれるのよね?」


「え?せ、責任?」

「もう!焦っちゃって、大介、可愛いところあるのよね。ふふふ…責任取るついでに、もう一回しておく?」


(か、かわええええええ…何?この可愛い誘い方?)


「み、美鳴~」


俺の理性は吹き飛んだ。



 美鳴が俺の髪の毛を撫でている。撫でたり、指を絡ませたり、頬に触ったり。美鳴の顔を見ると泣いている。キラキラと宝石のように光る涙が見える。


「どうしたんだ?なぜ、泣いてるんだ?」


 美鳴は軽く首を振った。そしてシーツで体を包むとそっと立ち上がった。


「何処へ行くんだ?行かないでくれ!美鳴!」


美鳴の唇がゆっくり動いた。


「さ・よ・な・ら」



「美鳴!」


 俺はガバっとベッドから跳ね起きた。あまりにもリアリティのある夢だ。寝汗で体が冷たく感じる。カーテンから漏れる朝の淡い太陽の光が部屋を照らす。だが、夢ではなかった。昨晩あんなに身近に感じた美鳴のぬくもりがない。


そう。美鳴がいないのだ。



ベッドにメッセージが置いてあった。



ごめんなさい。

どうしてもわたしは行かないといけないのです。

行くことで、大介やみんなに迷惑をかけてしまいます。

今までわたしのために力を貸してくれたことに感謝します。

本当にありがとう。

わたしは不幸な結末に向かいます。

でも、心配しないでください。

あなたに勇気をもらったこと。

わたしの一生の思い出です。


さよなら。


大介。わたしの大好きな、初めて好きになった人。


追伸:初めてなのに一晩で5回もするのは反則です。



「な、なんてことバラすんだ!いや、それより、美鳴、どこへ行ったんだ!まさか!」



俺は美鳴のゲーム端末を見た。そこに一通のメールが入っていたのだ。



吉乃、危篤。すぐ、病院に来られたし。


5回って何を5回したんでしょうね?なんて聞かないでださい。(筋トレです!筋トレ!)大人の事情です。さて、いよいよ、クライマックスへと話は向かいます。

どういう結末を迎えるでしょうか?応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ