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怖気づいて逃げたら許さないんだからね!(弐)

集中投稿した土、日から、平日は1話ずつ公開していきます。戦い(ゲーム)に勤しむ歴研メンバーに忍び寄る黒い影・・・いや、影じゃないんですけど。

「美鳴!敵の罠だ!全軍に撤退命令を出せ!」


「なんですって?現に我軍は勝ちつつあるじゃない」


「いや、一刻を争う。殿しんがりは俺が引き受けるから、美鳴は敵に一斉射撃をして舞さんの部隊を先頭にして敵を突破しろ!方向は雪之ちゃんの真田隊。呼応して敵を蹴散らすんだ」


「わ…私が大将だからね!そんな指示は…」


俺はゲームの画面像で美鳴の腕を掴んだ。ゲーム上じゃないと女子に対してこんな強気な態度は取れないだろう。


「議論してる暇はない!すぐ行動だ!」

「は…はい」


 俺の剣幕に驚いて、美鳴はおとなしく従う。一斉に配下の鉄砲隊に射撃させ、真田隊と呼応して一気に山裾から撤退を開始した。その時だ!山頂に黒い軍団が姿を現した。ドクロの旗印である。(アンノウン部隊…)戦国ばとる2の武将能力で隠密の値を究極に高めたキャラを言う。


正体不明のまま、場をかき乱す輩のことで「荒らし」と言ってゲーム上ではルール違反及び迷惑な行為であった。ところが、最近はこの「アノウン」を撃滅すると経験値ポイントが高いという設定をゲーム主催会社がして、迷惑行為を取り締まろうと試みたおかげで激減したものの、逆にそれにスリルを感じて参戦するゲーマーもいた。


アノウンが出たら、敵味方は普通、戦闘行為を中止して共同してこの不当行為に対抗するのが普通だが、今回の北条方は攻撃を中止しない。


(これは…この北条軍、NPCか?)


俺は開戦時からの疑問が溶けて行くのを感じながら、ぼーっとゲーム画面を見つめ続けた。


「左近さん、敵、およそ1万、援軍です!」


吉乃ちゃんの声で我を取り戻した。あろうことか、敵の援軍が殺到してきたのだ。山頂からのアノウン部隊の奇襲(およそ500程度だが)、北条軍5千、その後方に1万。危機的状況だ。


(この連携のよさ…。そしてアノウンに対する態度。最初からこのシナリオは仕組まれていたってことか!)


おそらく、NPCの北条軍を使っての巧妙な罠であった。そしておそらく、後方の1万が真の敵プレーヤーが操る部隊で、アンノウンも同時に動かしているということだろう。


ゲーム上、普通は一人に1武将と担当は決まっていた。一人で何人かの武将を育てることも可能だが、ゲーム上では必ず1人しか動かせない。ところが、アカウントを2つ以上持って同時に2人以上動かすプレーヤーが存在することがネット上で囁かれていた。


2つのアカウントを持つ行為に莫大な費用がかかることや、バレた時の代償(ゲームから追放)、そして何よりもゲーム画面上で2軍を動かすことの難しさがあって、そんな馬鹿げたことをする人間はほぼいないと行ってよかった。


(だが、この連携の良さ…協力プレーヤーとの連携のよさとかじゃない。間違いなく、一人の人間が動かしている)


「左近様、北条方は混乱壊滅状態ですから、山頂から来た敵にまず当たり、それから援軍に対しましょう」


「そ…そうですね」


吉乃さんの指揮する大谷形部は、冷静に戦況を分析し、適切な判断をする。これでつい最近までゲーム初心者だったとは思えない。


敗走気味の北条軍は放置して、山頂から突入してきた隠密部隊に吉乃ちゃんと共に戦う。美鳴と舞さんの部隊は、戦闘区域から撤退しつつあるが、敵の新手を見て美鳴は部隊の撤退を中止した。


「美鳴、何やってんだ!とにかく、逃げろ!画面から逃げ出すんだ」


「だって、吉継や左近を見殺しにはできないわ」


「これはシナリオモードだ。死んでも復活できる。だが、お前は大将だから経験値が入らないどころじゃない。負けた事実がキャンペーンモードに重くのしかかるのだ」


確かにそうだ。自分は負けてもこのゲームの経験値がなくて、対戦成績に敗戦数がカウントされるだけだが、美鳴の場合は、それが石田三成キャラとしての信用に関わる。家来の俺とは影響が違うのだ。


「とにかく、お前はここから去れ!お前さえ無事なら、豊臣方から援軍も期待できる。死んでしまえば、こんな局地に援兵は来ない」


「部下を捨てて行くなんて私にはできないわ!」


「できるか、できないではなくて!」

「うるさい!うるさい!うるさい!」


 美鳴は軍を止めると反転して、俺と吉乃さんを救出しようと鉄砲を撃ちかけて、退路を確保しようと努めた。これでは、美鳴を逃がすためにギリギリまで粘る目論見は崩れた。


(このバカ娘め!)


と俺は思ったが、赤の他人どうしが報償を目当てに戦う戦国ばとる2のゲームの中で、こんな利害を除いた行動はなかなかできないので、少々、感動してしまった。


「吉継様、わが、姫があのようなだだをこねていますので、我々も撤退しましょう」

「そうですね…」


 戦場の緊迫感の中で、吉乃さんはコロコロと笑った。親友だけに美鳴の性格が分かっているのだろう。大谷隊と共同で山頂から攻撃してきた隠密部隊を蹴散らすと、美鳴の石田隊と真田隊とともに退却に移ろうとしたその時…


「うそだろ…」


主人公が驚愕するその軍勢は・・・・

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