さらば!友情、さらば!わたしの恋(四)
ついに西軍の敗北が決定的に・・。関ヶ原の地に潰えようとしています。美鳴ちゃんはどうなってしまうのでしょうか?おい、大介、お前、ちゃんと守るのだろうな?
「吉乃~っ!」
吉乃ちゃんが戦場で散ったことをゲーム画面で知った美鳴は、半狂乱になって泣き喚いた。
「許さない!許さない!許さないんだから、早川秋帆!」
強気で傍若無人な態度を取る美鳴だったが、ここまで口汚く他人を罵る姿は見たことがない。状況は最悪である。西軍が善戦していたとはいえ、朝からの長時間、寡兵で敵の大軍を押しまくっていたため、疲労のピーク。いわゆる攻勢の限界点だったため、吉乃ちゃんが壊滅したというニュースが西軍諸隊に衝撃となって伝わると、あっという間に総崩れの体をなしていた。
西南方面では、最初から消極的であった小西雪見ちゃんの軍は小早川の裏切りを知って敗走してしまったし、孤立した浮竹さんの宇喜多勢は四方八方から攻撃を受けて大混乱状態である。
そして、石田隊の全面にも東軍が群がってきた。前線の蒲生聡と舞さんの軍は孤立し、美鳴の本陣めがけて東軍が殺到しつつあった。完全に負け戦である。
(このままでは、美鳴が捕らえられてしまう!)
それだけはどうしても避けなければならなかった。可愛い美鳴が敵兵に捕まったら、どんな目に合わされるか?
「左近、もはや、これまでです。私も自刃します」
美鳴は鎧を脱ぎ捨て、短剣を胸に当てた。敵に捕まって恥ずかしめを受けるくらいなら、キャラロストを選択するという判断だ。
「待て!まだ、だめだ」
俺は慌てて止める。
「左近、わたしがひん剥かれて、晒し者になってもいいの!?」
確かに西軍ひん剥いて鑑賞したい姫武将NO.1の石田美鳴だから、東軍の狼どもが見逃すはずがない。
「まだ、負けたわけじゃない。キャラロストすれば、完全に敗北だが、生きていればリベンジも可能だ」
「そんなの無理よ!」
「まだ、関東では愛ちゃんや雪之ちゃんも戦っている。瑠璃千代もこの戦場に向かっている。岐阜城も健在だ。お前さえ、無事ならもう一度戦える」
「だけど、この状況からどう逃れるのよ!」
美鳴の意見ももっともだ。いまや、石田隊も分断され、僅かに残った旗本の士が、時間稼ぎに死に物狂いで戦っているに過ぎない。敵に囲まれたら自刃する暇もないだろう。
「俺と一緒に落ち延びるんだ。後ろの山へ逃げ込めば、しばらくは大丈夫だ。うまく敵の目を逃れれば、大阪城の毛利と手を組んでもう一度、挙兵できる」
俺はキャラ的に重傷を負っているが、回復アイテムを駆使してなんとか、逃亡できるだけの体力は回復している。美鳴を連れて隠れることはできる。
「でも、大介」
「死ねば負け決定だろう。負けたら、おしまいなんだろう?そんなことは、俺がさせない!」
「大介…」
「大丈夫だ!お前は俺が守る!俺について来い!」
俺は高らかに言い放った。勝算があったわけでない。美鳴を失いたくないその一心であっただけだ。
「はい」
美鳴はそう返事をした。黒で統一された専用コスチューム鎧を脱ぎ捨てると、ミニスカくのいち風の衣装にチェンジする。俺はそんな出で立ちの美鳴の手を引いて、後ろにそびえ立つ伊吹山へ逃亡した。
「ふっはははは…勝ったぞ!大勝利だ!これで石田美鳴もストンデングループも全て手に入れた!」
東宮院是清は、完全勝利の心地よい気分で満たされ、いつもの余裕ある態度に戻っていた。
「敵将、石田美鳴、島左近と逃亡した模様」
そう伝令兵が伝える。
「おやおや、往生際が悪いですね。逃げたところでムダなのに。小谷吉乃みたいに自刃する潔さもないのですかね?」
そう言いながらも東宮院は舌なめずりをした。
(まあ、それくらい、往生際が悪い方が後々楽しめそうだな。あの女の泣き顔、屈服した表情、今から楽しみだ)
「敵の残存兵力はどうなっている?」
「まだ、石田隊の一部、島津維新、宇喜多が抵抗しています」
「宇喜多は栄子が指揮していたな。あの女め。性懲りもなく僕の目の前に現れおって。東軍諸隊に告ぐ。敵将のうち、男は打ち首でキャラロストさせろ。姫武将は捕らえて好きなようにしていいぞ。ただ、石田美鳴だけは、無傷で連れてくるのだ!」
「ははっ!」
命令が東軍諸隊に伝わる。美少女が多い西軍の諸将を捕らえようと、ゲーム参加している男どもが色めき立つ。
「俺は浮竹栄子さん!」
「俺は狩野舞ちゃんをターゲットに!」
「小西雪見は逃亡中だ。しらみつぶしに探せ!」
「南宮山にも女はいたよな?」
「ああ、毛利には手を出してはいけないけど、安国寺と長束は女だったぞ!」
「ウヒョォォォォォ!」
もはや、狼による残党狩りの様相である。
東軍の参加者、狼男に変身して残党刈りに精を出しています。これじゃあ、エロ展開に・・・といっても、全年齢対象作品ですから、期待には答えられませんのであしからず・・と。美鳴ちゃんをひん剥かせたくないですから・・・。