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全力で戦う!それがわたしにできること(五)

松尾山の早川秋帆ちゃんの陣では、何やら異変が・・・。そして、笹尾山の石田美鳴を討とうとあの武将が前線に出てきます。主人公はコイツを撃破できるでしょうか?

 その頃、松尾山に陣を構える小早川金吾中納言秀秋こと、早川秋帆率いる1万6千の軍は、眼下に広がる戦況を見ながら、未だに動く気配がなかった。秋帆自身は、美鳴に味方することを決めたのだが、家来のうち、家老の平岡石見ひらおかいわみのキャラが反対したのだった。


「姫、本当によろしいのですか?西軍に味方するということは、あなたの家は復活できないということですよ。お父様やお母様を不幸のどん底に落としたままでいいのですか?」


「私はお金では動きません。東宮院がお父さんの再起の資金として1億円融資するという話もいただきました。でも、私はお金で美鳴先輩への信頼を失いたくありません」


「その気持ちは分かりますよ。でも、姫、姫の気持ちだけでこのチャンスを失うことを、あなたのお父さんやお母さんはなんて思うでしょう?あなたの会社で働いていて、職を失った人達はどうでしょう?」

「それは…そうだけど」

「それにあなたのお父さんの会社を潰した原因は、どう考えてもあの石田美鳴の家でしょう?いくら、娘は関係ないからって言っても、あなたが助ける義理はないと思いますよ」


「で、でも」

「あなたに親切にしてくれたのも、自分の家が関わっていることを知ってのことかもしれませんよ。それならば、彼女は偽善者だ。偽善者のためにあなたは復活のチャンスをミスミス逃すのですか?」


 平岡は巧みに秋帆ちゃんを口説く。秋帆ちゃんは知らない。平岡石見自身が東宮院に金で買収され、早川秋帆が裏切れば、500万円ものお金が成功報酬でもらえることを。


「だんだん、分からなくなってきたわ。私はどうすれば…」

「では、戦況をもう少し見てから決めてはどうですか?西が押しているようですが、実際に戦っているのは全軍の3分の1ってところですから」


 こうして早川秋帆は動けないでいた。実際、この軍の大将である秋帆ちゃんが、決めれば東軍に内通している平岡や他にも内通している部下はそれに従うしかない。それがゲーム上のルールであった。勝手に軍を動かせないのである。


(まったく、この女の頭の中が理解できない。1億だぞ、1億。俺なら、すぐさま、この山を駆け下りて大谷隊の横腹を突き、西軍に壊滅的打撃を与えられるのに…)


 とりあえず、平岡石見は、西軍に付くと言って軍を動かそうとした秋帆を止めただけでも、上等だと思った。これだけでボーナスで何十万円か欲しいくらいであった。


(それにしても…何をしてるんだ!東軍は!)


 平岡がそう思ったのも無理はなかった。眼下に繰り広げられる戦いは、西軍有利としか思えない状況であったからだ。烏合の衆とはよくいったもので、寄せ集めの東軍は結束の高い西軍の主力に押される一方であった。


(このままでは東軍は負ける。それじゃ、俺のもらうはずであった5百万円はどうなる?金はもらえないわ、裏切って西軍に逆襲されてキャラロストした日には泣けるどころじゃないぞ。畜生め!)


 裏切るにしてもそのタイミングが非常に難しいと彼は思った。



 全線に渡って苦戦を強いられている東軍本隊。徳川家康こと、東宮院是清の元に次々と戦況が知らされる。予想外の西軍の善戦を伝えるものばかりだ。西南戦線では、自分が指揮する井伊直政の軍で支えなければ、崩壊しかねない様子であったし、石田隊に向かったメイサらの部隊も散々な目にあって後退中であった。ここへも本多忠勝を派遣しなければ、やばい状況だと感じていた。


(だが、あと1時間というところだろう)


 この危機的状況でも、是清には勝算はあった。西軍優勢とはいっても、戦っているのはその3分の1に過ぎず、3分の2は傍観している。この状況を作ったのは自分であったから、この状況は予定通りではあった。


(だが、この状況を見て、その眠らせた3分の2が裏切りをやめたら…)


「人間は計算できない行動をする…」


と言った五代帝のジジイを思い出した。


「畜生め!とにかく、本陣を移動させ、本多忠勝の部隊を美鳴の奴にぶつける。この状況を打開するのは、やはり、自分しかいないだろう」


東宮院は急ぎ、1万の本多隊を移動させる。目標は笹尾山の石田隊だ。



「左近兄ちゃん、本多隊が移動してくるよ!」


 蒲生聡が、俺に伝令を送ってくる。俺は美鳴の本陣から、あの金帯の旗印を用いたあの本多忠勝の軍がこちらに向かってくるのを確認した。


「美鳴、舞さんと聡だけではアイツは抑えられない!俺も行く」

「わ、わかりました。さ、左近、いや、大介!」


美鳴はそっと俺の手を取った。


「無事で帰ってきてね」

「ああ…」


 こんな状況でなかったら、美鳴を抱きしめたい衝動を抑えきれなかったであろう。俺は美鳴の方を振り返らずに、本陣を出た。美鳴を見たら、彼女の下から離れられなくなりそうな気がしたからだ。


いよいよ、戦いも最終局面に近づきつつあります。このまま西軍は押しきれるか!

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