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全力で戦う!それがわたしにできること(壱)

ついに関ヶ原で東西決戦が行われる。ヒロイン美鳴ちゃんは、決死の覚悟で臨みますが・・・。状況は史実よりも若干、有利のようです。瑠璃千代の援軍が到着すれば逆転もありうる・・・。

 決戦が行われる午後7時の15分前。俺は美鳴の部屋に招かれていた。今日は美鳴の部屋でゲームをするのだ。いつもはそれぞれの部屋でネットを介して一緒にプレーをしているのだが、今日は美鳴の奴が俺と一緒にプレーがしたいと言ってきたのだ。


(今日は決戦ということで、俺が近くにいないと不安なのだろう。美鳴の奴、いつもこのぐらい可愛ければいいのだが)


「おう!美鳴、来てやったぞ!」

「もう大介、遅い!」

「遅いぞ」


部屋にいたのは美鳴と舞さん。


(畜生!二人きりじゃないのか~)


 俺はちょっとがっかりする。舞さんも美鳴の家老なのだから、一緒にプレーするのは不思議ではなかったが。ゲーム画面を見ると西軍各隊はすでにログオンしており、開戦時刻を今か今かと待っている状態であった。


「瑠璃千代にさっき会ってきたけど、彼女の部隊、今日の戦いに間に合うかもしれない」


 俺はこの戦いに有利な情報を2人に話した。立花瑠璃千代は、関ヶ原キャンペーンモードが始まって以来、このマンションの自室でゲームを進めている。美鳴の奴に命令されて、別働隊を率いて大津城攻略を担当し、見事に短期でそれを実行し、関ヶ原に向かっているらしい。ゲーム上の情報交換では、何故か彼女との連絡ができず、直接会って状況を確認できたのだ。


(ゲーム上のメール交換がスムーズにいってない)


 これは「戦国ばとる2」のゲームシステムで、情報工作が一定上成功すると、敵の情報網を混乱させることができるというものだが、西軍の情報網がかなり侵食されていることを物語っていた。俺は武将キャラでこういう戦略的なことはあまり得意でなかったこともあり、つい失念していた。ただ、西軍の主要メンバーは顔見知りであり、昼の間に直接会って話したり、電話でコンタクト取ればいいわけで、信州の雪之ちゃんの状況も会津の愛ちゃんの状況も時間のズレはあっても一応、知ることはできた。

瑠璃千代が戦場に到着するのは、早くても後半だろうと予想していた。彼女の1万の兵力がどのような場面で現れるかにかかっている。


「大介、いよいよだわ」


 ログオンすると俺の目の前に関ヶ原の戦場が広がる。山に囲まれた盆地に東西合わせて20万近くの軍勢が布陣しているのは圧巻である。西軍は関ヶ原西方の山の麓に弓なりに陣を構えている。まず、一番南、松尾山の麓に小谷吉乃ちゃんの5千。その隣、天満山麓に浮竹栄子さんの1万8千。その隣に小西雪見ちゃんの6千。彼女とは大垣城で別れたきり、話をしていない。どれくらい戦ってくれるであろうか?


 その隣に島津維新入道の1千5百。そして、笹尾山麓に石田美鳴の6千。美鳴の陣は三段に編成され、一番隊は俺こと、島左近と子役のガキンチョ、蒲生聡がもうさとし。二番隊に狩野舞さん、そして三番隊は美鳴が直接率いていた。


 東軍はというと、史実通りに西軍に相対して、この関ヶ原に突入した形で布陣している。総大将の東宮院是清が操っている徳川本軍が桃配山に本陣を置いているが、これが西軍の毛利本体がいる南宮山の麓であり、戦う前から包囲されている状況であった。


 


 明治になって日本の軍事顧問であったドイツ将校メッケルは、関ヶ原布陣図を見て、即座に西軍が勝利したと断言したが、俺が見てもその通りだと思った。それは、鶴が翼を広げるように相手を包囲する鶴翼の陣形であり、東軍は包囲されて撃滅される運命であった。

だが、敢えて戦上手の東宮院がこの関ヶ原に突出してきたのかを考えれば、西軍の包囲網にほころびが生じているのは確かである。


(少なくとも、史実通り、毛利屋の連中は動かないだろう。長谷家部の奴も動かないだろう。アイツ、惚れた女を見殺しにするとは、まったくヒドイやつだ)


 惚れた女とは、俺の女装した「左近ちゃん」のことではあるが・・・。



 関ヶ原は霧に覆われていた。昨晩が雨の設定だったことにより、コンピュータープログラムがそういう状況にしたのだろうが、そこまで忠実にしなくてもよいのに…と思わんでもない。視界ゼロの状況であるから、戦い開始の7時を過ぎてもまだ、東西の軍は衝突していなかった。


「うざいなあ…前がまったく見えないなんてどんなゲームだ!」


 福島帆希は目の前の霧を手で払ってみたが、そんなことで消えるわけもなかった。自分は東宮院より東軍先鋒を任されており、今回は西軍の最大兵力を持つ浮竹栄子と相対していた。皮肉なことに元東宮院の愛人と現在の愛人の対決である。


「この戦いに勝てば、美鳴の奴に天誅を加えると同時に、是清様から愛してもらえるんだ。者共、恐るな!目の前の敵を殺して殺して殺しまくれ!」


 激しい言葉で、前線の鉄砲隊に射撃を命ずる。視界0ながら、福島隊から鉄砲が射撃された。ドドドーンと戦場に響く。


 浮竹さんも応戦し、ついに戦いの火蓋が切って落とされた。足軽隊の槍合わせが始まり、視界の悪い中での戦闘が始まる。


まずは、東宮院の愛人対決!元愛人の浮竹姉さんと、今の愛人帆稀ちゃん。ゲーム画面の激しいバトル描写の裏の心理戦はドロドロとしてます。

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