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左近!関ヶ原へ移動するわよ!(七)

どうやら、秋帆ちゃんは美鳴の側に付くつもりのようです。ひとまず、安心かな?でも、一人、もしもに備えて動く才女がいます。う~ん。この子いいわ。

「先輩、よく話してくれました」


 早川秋帆は笑顔で美鳴に返答した。泣かれるか、逆上して自分に罵声を浴びせるかと思っていた美鳴は、予想外の反応に戸惑った。


「でも、わたしの母のせいで…」

「先輩のお母さんのせいであって、先輩ではありません。先輩が私にしてくださったことを思えば、私は先輩を恨んだりしません」

「秋帆ちゃん…」


 実は美鳴に会う30分前に、黒田メイサからある書類を渡されていた。それは東宮院ファンドが調べた秋帆の父親の会社が倒産した経緯が詳細に書いてあった。確かに美鳴の母親が発注したマンション計画の頓挫が倒産の主要因であったが、それでなくても不景気で売り上げが頭打ちで、資金繰りが悪化しており、起死回生で請け負ったマンションの計画失敗が重なっただけともいえ、全てを美鳴のせいにすることはできないと秋帆は思った。それより、このことを正直に話すかどうかを秋帆は知りたかった。

ゲームとはいえ、美鳴の生殺与奪権を自分が握っているという今の状況は、今まで味わったことのない優越感を味わっていた。


(あの美鳴先輩の運命を私が握っているなんて!)

(もし、私を味方にしたくて嘘を言ったら、いくら先輩でも私は許さないわ!)


 でも、石田美鳴は正直に自分に不利な話を告白した。だから、秋帆は、この先輩についていこうと決心した。


「先輩、今までごめんなさい。でも、安心してください。明日の決戦では、先輩のために全力で戦いますから」

「ありがとう!秋帆ちゃん」



「なんだ!それじゃ、秋帆ちゃんは安心じゃないか。明日、あの大軍が味方に参戦すれば、勝利は間違いない。勝ったぞ!美鳴」

「ええ…」


 俺の言葉にそう美鳴は答えたが、不安を感じているようである。いくら、秋帆ちゃんがそう言ってくれても、自分の母親が原因で不幸にしてしまったことを知っては、心底、笑顔にはなれないのだ。傍若無人で空気が読めない女だが、こういう繊細なところもあるのだ。


 話を聞いていた吉乃ちゃんが、決心したようにパソコンの画面を開いて説明する。


「美鳴。私は陣替えを行います」

「陣替え?」

「吉乃ちゃん、これは?」


 俺は驚いた。吉乃ちゃんの軍団は、松尾山の麓に進出して、秋帆ちゃんの軍団を遮るように移動する計画だったのだ。鉄砲隊400を配備し、さらに与力として付けられた東軍レディースのうち、どうも動きの鈍い4人をこの方面に配置している。


「美鳴が秋帆さんのこと信用するのはよいとして、未だに松尾山から降りてこないのでは、まだ、信用はできません。ですから、次のように軍を配置します」


そう言って、吉乃ちゃんはゲーム画面でシミレーションする。


「私の与力のこの4人。全然使えませんから、いざという時に盾になってもらいます。残り2人は使えますので私の前衛として配備します」


 4人とは、魅斗蘭ちゃんのレディースのメンバー、朽木元綱、脇坂安治、小川祐忠、赤座直保を演じる4人だ。但し、俺たちはこの時点で彼女らが藤堂魅斗蘭ちゃんが送り込んだ人間とは気づいていない。(一般公募参加者と思っている)また、2人とは平塚為広、戸田重政を演じる子で、この2人は吉乃ちゃんの人間性に惚れて、当初の目的を反故にし、固い忠誠を吉乃ちゃんに捧げている。


「吉乃、これじゃあ、もしものことがあったら、あなたが…」


 もし、秋帆ちゃんがなだれ込めば、吉乃ちゃんの全滅は確実だ。


「わたし一人が全滅しても、戦況に影響を及ぼしませんから」

「そんな吉乃…。ありがとう、吉乃」

「美鳴、あなたがいて、わたしがどれだけ心強かったか。あなたがいて、わたしがどんなに幸せだったか。だから、明日は一緒に勝とうね」


吉乃ちゃんはそっと美鳴の手を握った。そして俺の手も取った。


「大介さん。美鳴のことをお願いね。この子、時々、強気なことを言ったりするけれど、本質はか弱い女の子なのです。明日の戦い、島左近の名に恥じない戦いを期待しますわ」


俺の心にジーンと感動が湧き上がる。


「約束します。俺は美鳴を守ります」




 時間が刻々と近づく。いよいよ、決戦が開始される。


次回から決戦です。いよいよ、クライマックス!

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