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左近!関ヶ原に移動するわよ!(参)

さすが主人公!戦術レベルなら無敵状態の指揮ぶり。

 兵5百を率いた俺は要所、要所に兵を伏せ、杭瀬川を渡って東軍陣地近くまでやってきた。目の前は中村隊、有馬隊である。両方共金目当てでネット参戦したプレーヤーであった。


「あれは島左近だ!」

「賞金首じゃないか!」

「確か、奴を討ち取れば、50万だったよな?」

「いや、100万だ。敵将の美鳴ちゃんはその倍。しかも、ゲームキャラを捕らえれば、好きにしていいらしい」

「裸にしてエロ鑑賞会開催か?」

「まずは、島氏をここで倒して、手堅く金をゲットしよう」


 まず、中村隊が打って出る。東宮院の大将が到着し、自分たちの戦いを見ているのだ。島左近を討てなくても、うまくいけば、就職の世話までしてくれるかもしれない。


「かかったな!」


 俺は敵に向かって鉄砲を撃つ。敵も応射し、騎馬兵を差し向けてきた。俺は足軽隊を巧みに引かせて、杭瀬川まで退却し、その川を渡らせる。徒歩であるので比較的スムーズに渡りきる。敵の騎馬隊もそれを追うが石ころだらけで滑る川底に立ち往生する。それでも、半分が渡りきったところに左右の茂みから鉄砲隊が射撃する。たちまち、数十騎が倒れる。


 退却した足軽隊を引き返させ、立ち往生する騎馬隊を攻撃する。中村隊の苦戦を見た有馬隊も100万円に目がくらみ、兵を出してきたがここに浮竹さんの出した兵八百が襲いかかる。横を痛撃された有馬隊も総崩れになる。


さらに俺はこの状況で兵を引く。



「いかん!このままでは全滅させられるぞ!あれが、島くんの用兵の真骨頂だ!」


 ゲーム画面を見ていた東宮院が叫ぶ。彼がコンピューター画面で予想したとおり、中村隊と有馬隊は引き込まれるうように追撃し、俺が構築した縦深陣の奥深くまで引きずり込まれ、四方から攻撃されてしまう。東宮院が本多忠勝を動かし、事態収拾に向かわねば、それこそ全滅であった。


 この戦いで大垣城は沸き立つ。不安を感じていた少女たちも自信を取り戻したようであった。戦えば自分たちも同じようにやれるという思いだ。


「左近、よくやったわ!わたしたちは強い。間違いなく東軍に勝てるわね!」

「ああ、間違いないよ、美鳴。この俺がいる限り!」


 俺も強く言い放った。俺自身にも言い聞かせるように。



「ふん。前哨戦は美鳴に花を持たせてやったのさ。島くんもダテにネットで有名でないからね」


 東宮院は軍議の席でそう軽口を叩いた。実際、自分の目の前にいる武将たちのうち、金で雇った連中は、(東軍で失敗したかも…)という目をしていた。士気が下がっている証拠だ。だが、美鳴関連で参加している黒田メイサ、細川ルシア珠希、福島帆稀、藤堂魅斗蘭については、影響はないようだ。皮肉なことに「利」で雇った連中よりも彼女らのような「情」の理由で参加した者の方が意志が固いようであった。「情」といっても、負の情であるが。


「各々方、この先の戦いどうするべきか?」


東宮院は尋ねる。尋ねなくても彼の方針は決まっていたが。


「明日から大垣城にいる美鳴の奴を攻めるに決まっている!」


 福島帆希が主張する。これは彼女にしてはまともな意見だ。このまま行けば、自然とそうなるに違いない。だが、城攻めは時間がかかる上に、今は中山道を逆進している真田率いる信州甲斐連合軍と、会津の上杉の動向が気になるのと、大津城を攻め落とした立花瑠璃千代の動向が気なる。時間をかけると不利になるのは東軍であった。


「みなさん、私は一気に大阪に向かうべきだと思います」


そう黒田メイサが口を開く。


「岐阜城も健在な今、この赤坂に陣を構えるのは包囲されているのと同じです。このまま、街道を西に進み、美鳴の居城、佐和山城を攻め落とし、大阪に向かうべきです!」


(この娘、賢いと思っていたが、やはり僕の見込んだ通りの娘だ)


 東宮院は彼女をこの戦いの当初から信頼していたが、この進言でますます気に入っていた。将来は自分の会社で右腕として雇ってみたい人物だと感じていた。メイサが偉いのは、大阪に向かうという方針が、すなわち関ヶ原に西軍を誘い込むということにつながることを暗に言っているという点だ。あからさまに関ヶ原に誘い込むといえば、それが西軍に伝わって出てこないかもしれないのだ。味方まで欺くという点で、彼女の進言は100点満点であった。


「よし!今の黒田さんの言を是とする!全軍、明日は大阪に向かって移動する」


是清がそう宣言した。


これで西軍は関ヶ原に行くしかなくなる。東宮院の思うツボではありますが、こうなるのもゲームプログラムのせいでしょうか?

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