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真田は強いアル!かかって来いアルよ!(参)

上田城攻防戦も佳境です。真田雪之ちゃんの狙いはズバリ!徳川秀忠自身。彼女の謀略に東宮院ファンド社員は立ち向かえるか?(笑)

 徳川秀忠こと、東宮院副社長は焦っていた。彼は是清から、上田城の攻略を命じられていた。極端な話、関ヶ原の戦場に間に合わなくてもよいのだ。石田美鳴の後輩の中学生の守る小城を大軍で攻め落とすだけという見ようによっては、社長から何も期待されていない役割であったが、当初は軽く任務を達成し、関ヶ原の戦場にこの3万もの大軍を率いて、華麗に活躍する予定であった。


 だが、現実は…。


「バカもの!どうしてあのような小勢に我が方が押されなければならぬのだ!」


 本日も上田城に攻めかかり、中学生の小娘の智謀のもとに3度撃退された報告を聞いて、副社長は激怒した。まったく、役に立たない部下たちである。当初は数に任せて押しまくれば勝てると軽く思っていたが、地形が複雑で大軍で取り囲み、一気に殲滅することが難しい上に、地形を知り尽くしている真田兵にちょろちょろと動かれて、攻撃する布陣さえ組ませてもらえない。その上、高レベルの外様大名たちは、何だかやる気を無くしているようで、適当に戦っているとしか思えなかった。


(これだから、バイトは役に立たんのだ!)


かと言って、自分が指揮する正社員プレーヤーは、マニュアル通り兵を動かすのが精一杯で、神出鬼没の小娘の兵に右往左往するばかりである。


「総務部長!私自ら出陣する!」

「副社長、それは危険です」

「こんなゲーム上で危険も何もないだろう。リアリィティは確かにあるが、ゲーム上で殺されたからといって、本当に死ぬわけでもあるまい」


 副社長の意見は最もであった。「戦国ばとる2」の最新鋭バーチャルリアリィティシステムで、ゲーム中は確かに五感に渡って本物のような体験ができる。だが、さすがに痛覚は再現されていないので、矢で射られようが、刀で切りつけられようが痛みは感じない。だから、死なないと思えば、戦う恐怖はそんなに感じないのではある。


(それはそうだが、副社長は忘れている。戦死イコールゲームから除外であることを)


除外される失態をしたら、あの社長これきよのことだ。この副社長をあっさりクビにすることもある。


(これはわたしも考えないと、この大失態に連座して一緒にクビになるのはかなわない)


と総務部長は自分より15歳も若い副社長の顔を見た。責任はこの副社長に負わせて、自分はそこそこ戦果を上げればいいのだ。


 徳川秀忠自ら率いる徳川隊が前線に出てきた。それを上田城から把握した真田雪之ちゃんは、作戦が第2段階に入ったことを確信した。


「いくらここで敵を撃退したところで、西軍の勝敗には大きな影響を与えないアル」


 この3万もの大軍を関ヶ原の戦場に行かせないだけで、戦功は大であるのだが、それだけではだめなことを知っていた。東宮院是清自身がこの軍をアテにしていない節もあり、雪之ちゃんのねらいは、美濃の戦場に行かせないだけでなく、この軍を撃破して江戸を急襲することであった。


(そのためには…)


 敵の大将である徳川秀忠を討ち取ることである。大軍の後方にふんぞり返っているうちは不可能だが、部下が不甲斐なく撃破されれば、プライドの高い奴が前線に出てくるだろうとは思っていた。だが、チャンスは1度だけである。討ち漏らせば、二度と前線には出てこないだろう。


「城攻めの邪魔になる家々はすべて焼き払え!一気に取り囲んで城ごと潰してやる!」


 副社長は鼻息が荒い。敵はたかだか二千程度である。段取りをしっかりして大軍が動ける環境にすれば問題ないはずだと思っていた。


「殿、敵の伏兵が左の林から現れました!」

「落ち着け、どれくらいだ?」

「はっ!300程度かと思われます」

「そのような小勢はほっておけ。それより、右の山の方に気を配れ。物見を出せ!」


 副社長がそう命ずると、思ったとおり、ここにも伏兵が潜んでいた、しかも真田幸村本人が率いる800である。


「馬鹿め!同じ手が通用するか!おそらく、左に兵を派遣したら右から我が方に攻めかかり、混乱させようという腹だったのだろうが、小娘め!大人を舐めるとこうなるのだ!」


 すぐさま、直属軍3000でこの800を圧倒する。押しまくられる真田勢は、逃げつつも鉄砲を乱射し、追撃軍に痛撃を与える、だが、三倍以上の徳川軍はひるまずに突進する。


「よし、この際だ。上田城の守りも手薄になっているはずだ。予備兵及び、前線の8千で一気に城に攻めかかれ!」

「うおおおおおっ!」


徳川秀忠の直属軍が城に攻めかかる。


「副社長、本陣が手薄では?」

「総務部長、君もまだいたのか!早く、城攻めに加わらないと先日の失態は償えないぞ!」

「しかし、私も行けば、副社長の周りには旗本の千騎しかおりません」


「総務部長、だから君は部長止まりなのだよ。ここぞという時の経営判断。資源の集中が社運を決めるのだ。この戦場を見てみよ!敵の目論見の出鼻をくじくどころか、大将である真田幸村を孤立させ、さらに城攻めまで同時に行う。この私の判断の正確さ、すばやさ、そして勇気。これが本社の役員の実力だ」


「はあ…」


 総務部長は(またか…)と思った。この副社長。確かに優秀だが、調子に乗ると足元が見えないのだ。しかも部下に自分の優秀さを自慢する。秘書の女の子達からも陰で敬遠されている人望のなさに気づいていない。といっても、総務部長もこの状況は勝機と見た。今、自分の軍勢も城攻めにかかれば、今日中に落城は間違いない。


「敵の真田幸村を追い詰めました!」


物見の将校がそう告げる。


「よし、すぐ殺すな。こちらに散々な被害を与えてくれたお嬢ちゃんだ。ちょっと、大人の怖さを思い知らせてやらないと今後のためにならないからな」

「副社長、相手は中学生ですよ。変な真似は倫理上まずいですよ」

「総務部長、まだいたのか!早く行け!だいたい、変な真似って、ゲーム上、ハレンチなことはできないだろうが!」

「いえ、結構、服をひん剥いたりはできるみたいで…」

「おいおい、わたしがそんなことするわけないだろう」


(おおっと、そんなことできるのか?ゲームと言ってもバカにできん。そういえば、確かにリアリィティはかなりあるが。じゃあ、裸で縛り上げて土下座させるとかOKか?)


いや、それは犯罪でしょう!(作者談)


 副社長は総務部長を追い払うと、密かな楽しみを思い浮かべて周りの兵に幸村を捕らえるように命ずる。


真田雪之ちゃんの運命は…


雪之ちゃんにそれは、確かに犯罪です。(いや、この物語の登場人物、ほとんどNGですけど・・・島君はいいか?そんなの見たくないけど)副社長、ゲーム内での破廉恥行為も法律に抵触しますと法規担当者からレクチャーがありそうです。

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