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番外編 旦那様!大津城は瑠璃に任せてね!

大津城攻防戦は、関ヶ原の戦いを左右する重要な戦いでしたが、史実では西軍が勝つが時は既に遅し・・・。さあ、わが西軍の瑠璃千代ちゃんは、間に合うでしょうか?間に合わないと・・・ヤバイかも・・・。

 アギトは大津城攻防戦の様子を眺めていた。史実では、関ヶ原の決戦の日に開城し、結果的に1万2千もの西軍をクギ付けにすることになるのだが、状況は史実よりも早いテンポで進んでいた。この大津城攻略軍の大将である立花瑠璃千代が有能であるからであったが、


その有能な瑠璃千代でさえも、この琵琶湖畔にそびえる要塞は攻めあぐねた。


「攻め口は三の丸へ通じる4つのみ。三方を琵琶湖に囲まれ、大軍をもってしても有効に使えない」


 大津城は琵琶湖畔に作られた水城で、まず、最初に敵の侵攻を防ぐ三の丸、次に二の丸、奥二の丸、本丸とすべて琵琶湖に浮かぶように立っている。この地は美濃と京の都をつなぐ交通の要衝で、古来よりいくさで激戦が繰り返されていた地である。よって、瑠璃千代たちは、この城を無視して美濃へ向かうわけにはいかなかった。


 瑠璃千代は地図に示された城の位置と自分の軍団の配置状況を確認している。彼女の配下は勇猛な九州勢で占められ、与力大名を含めて全員が瑠璃千代の心酔していた。


(早く、この城を攻め落とし、旦那様の元へ急がなければ…)


だが、焦って無駄な犠牲を払えば、それこそ関ヶ原の決戦で役に立たたなくなる。


(戦果は最大、被害は最小に…そのためには…)


「小太郎、例の件は進んでいますか?」


 瑠璃千代は自軍に加わった風魔小太郎に話しかけた。本多アギトが使う忍者キャラである。これは諜報活動を主に行うキャラ設定で、指揮する軍勢は持たないが、使える大名の護衛、敵の暗殺、かく乱、破壊工作などができる。ただ、通好みの役割なため、かなりゲームをやりこんだ人間のお遊び要素としてゲームに盛り込まれていた。


「瑠璃千代様。やはり、ここはあの手を使うしかありませんね。まもなく、到着しそうです」

「では、到着次第、準備を進めてください。どのくらいで使えそうですか?」

「あと1日でしょうね。タクティスデスクも驚いていましたよ。こんな攻め方を考えるなんて。あなたは、本当に名将ですね」


 アギトは開戦前から瑠璃千代の元に参上し、アドバイスをしていたのだが、アギトが知恵を貸すまでもなく、瑠璃千代は既に手を打っていた。攻めても思いもよらぬ方法でだ。


「褒め頂いて光栄です。でも、わたしはこんな小城など早く落として、旦那様の元に急ぎたいのです」


 狩野舞の家の者に島大介が拉致されて、瑠璃千代は心配で心配で食事も喉に通らないほどであったが、ゲームが開始されるとその気持ちを押し殺して軍を指揮してこの大津城を取り囲んだ。その大介も救出されて今は美濃の戦場で石田美鳴と共に戦っている。リアルでは、彼に会って安心したものの、ゲーム内の美濃の戦場では、石田美鳴や今回の騒ぎを起こした狩野舞、それに大介に地味にアプローチしている小西雪見など、瑠璃千代にとってリアルでのライバルが大切な旦那様の周りにひしめき合っている。

(あいつらの方が油断なりませんわ)

瑠璃千代は、石田美鳴は最大のライバルと思っていたが、あの路上で旦那様にキスをした狩野舞もライバルと認定していた。これ以上、自分の不在は許されない。


「ゲームもそうだけど、リアルでも油断がならないわ!私も早く美濃の戦場へ急がねば!」


 大津城は東宮院ファンドの切れ者、調査部課長が二千の兵で守っていた。瑠璃千代が彼の力量を図るために数度、4箇所から攻め寄せたがすべて撃退している。ゲーム初心者とは思えない指揮ぶりで、有能な男であることは間違いない。


「攻め手は1万2千とはいえ、攻めるための通路は狭く、相対する兵は互角だ。これなら、十日ぐらいは楽勝で守れる」


 東宮院ファンド課長は、天守閣から戦況を見ている。


(どう考えても自分の勝利だ)とこの若き課長は思った。これで何年も籠城するのは無理だが、たかが10日程度楽勝である。


「ふふふ…。これで俺の出世は確実。こんなゲームの結果で次に部長職は間違いない。このままで行けば、35までに役員、40で社長も夢じゃない!なんてラッキーなんだ!」


思わず本音が出た。だが、その言葉を発したとたん、強烈な爆音が響いた。


ドカーン!ドカーン!と前線の三の丸の塀が爆発して壊されていく。

「どうしたんだ?」


また、爆音がして今度は奥の二の丸の城郭が破壊される。


「敵が大砲で射撃してきたようです」


そう兵が告げた。


「そうか、思ったより早いな。本丸の守備隊も前線に移動せよ。心配するな!あれはこけ脅しに過ぎない。破壊された箇所は土嚢で補修し、敵を近づけるな!」


課長はすぐさま、予定していた行動に出る。


(西軍が大砲を使ってくることは想定の範囲だ。)


 史実の大津攻防戦でも大砲は使われている。高学歴の若き課長にとっては、当然、計算内であった。だが、瑠璃千代の作戦は彼の想像の斜め上をいっていた。


「守備兵、三の丸に集中しつつあります」

「そう、計算通りね。砲撃は5分に一発を定期的に射撃しなさい。まだ、こちらの意図に気づかせるわけにはいきませんから…」


 瑠璃千代は作戦の第2段階に入ったと確信した。敵は狙い通り、兵力を前線の三の丸に集めている。この大津城の弱点は琵琶湖に面した本丸が孤立しているという点。湖側から攻める方法があれば、本丸を直撃できる。だが、そんな方法など誰も思いつきもしないし、思いついたとしても誰も実行できなかったであろう。だが、西軍として秀吉が残した莫大な遺産を使え、水軍を使える西国大名が配下にいることが可能にしたのだ。


 大阪湾から瀬田川を通って、100隻もの軍船が琵琶湖に集結しつつあった。浅瀬は人の手で引っ張っての移動で手間取ったが、それでも琵琶湖に浮かべることに成功した。


大きな軍船20隻には大砲が積まれている。計100門。瑠璃千代は旗艦である「道雪どうせつ」に乗り込む。


「よし、大津城へ向かう。者共、続け!」


100隻の軍船が大津城の本丸に向かう。そして本丸を包囲すると一斉に大砲による猛射撃を開始する。当時の大砲は木製台に固定され、1貫目の鉄球と散弾を発射するものであった。殺傷能力は低いが、当たれば城の塀は破壊されるし、何より、音と衝撃で敵兵を混乱させる代物であった。瑠璃千代は琵琶湖に回した船からこれで射撃し、本丸に直接攻撃を仕掛ける作戦に出たのだ。


「瑠璃千代様、準備整いました。軍船はすべて配置通りです。」

「よし!目標は大津城本丸、琵琶湖川の塀。一気に破壊後、突撃隊が突入せよ。その後、大砲は本丸及び、二の丸の通路に射撃を加え、援軍を阻め!よし、撃て!」


 ドンドンドーンと船上の大砲が火を吹く。大津城本丸の琵琶湖川の城壁は、ここから攻められることなど想定していないので、大砲によってもろくも壊され、崩れ落ちる。そこへ、船から西軍が侵入してくる。


「馬鹿な!こんな攻め方があるか!」


 東宮院ファンドの課長操る京極高次は慌てふためく。城の兵は激戦の三の丸に集中させているから、この本丸にはわずか50名ほどしかいない。すぐに三の丸より兵を向かわせようとしたが、すさまじい砲撃で場内の橋が壊され、本丸が孤立してしまう。


「よし!全軍、突入せよ!目指すは城将の首!」


 立花瑠璃千代自ら、手兵200を率いて、本丸に突入する。本丸は炎上し、敵兵が混乱して逃げ惑っている。瑠璃千代はその中から、二の丸へ退却しようとする京極高次を見つける。


「京極殿とお見受けいたす。私は西軍、立花瑠璃千代、尋常に勝負!」

「く!小娘が、お前ごときに俺が負けるわけにはいかない。この城は関ヶ原の決戦まで守らねばならないのだ!」

「ふ、ふふ。無理ね。あなたはここで死ぬんだから!」


 瑠璃千代が槍(迅雷)を振るう。元々、レベルが大したことがなく、一騎打ちテクニックもない高次はなす術がない。


「そりゃあああ!これでゲームから除外!」

「ぐわあああっ…社長~」


 瑠璃千代の一閃で絶命。ゲームから除外される。大将を打ち取られた守備兵は、瞬く間に降伏して大津城が落城した。


「すぐ、敗残兵の武装解除。ここには、毛利秀包の千五百を守備として残します。後の兵力は私と共に美濃へ出陣します」


瑠璃千代は兵をまとめ、関ヶ原へと軍を進める。


(局地戦でいくら勝利を重ねようと、関ヶ原での主力の決戦に負ければ、それでオシマイだわ。急いで旦那様の元に向かわねば…)


大津城の昔の地図を見ましたが、これは攻めにくい。琵琶湖を巧みに使った要塞です。これを立花宗茂、よく攻め落としたなあ・・・と感心。でも、瑠璃千代ちゃんの主人公へのLOVEパワーは、彼をしのぎます。さあ、関ヶ原に瑠璃千代ちゃんが乱入するか??

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