表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/160

あなた、わたしの家来になりなさい!(壱)

第1回ラノベ作家になろう大賞佳作受賞作品

ヒーロー文庫さんで書籍化が決定してます。こちらは、WEB版ですので、書籍版とは微妙に違う作品になります。原作としてお読みください。

「バカ野郎、そんなところ攻めてどうするんだ!」


俺は素早くマウスを動かし、味方に指示を出す。味方と言っても、本日、たまたまチームになった奴らだ。画面向こうの仲間たちは、まだこのゲームに慣れていないらしく、敵を目の前にしてイジイジとステータス画面を見ている。


今やっているゲームは「戦国ばとる2」簡単に説明すると実際にあった戦国時代の戦いを再現し、ネットで知り合った仲間同士で敵味方に分かれて戦うゲームだ。


 俺の名は島大介しまだいすけ。某有名な宇宙戦艦のアニメの操縦士と名前が一緒だが、親は別にそれとは関係なく付けた名前だそうだ。それにその某アニメもリアルで見ている世代はもう爺さんだから、あまり同世代で突っ込まれた経験はない。そんなことはどうでもよいのだが、俺こと島大介はネットゲームの中では、名軍師として神と崇められている。


(自分で言うのは痛いのだが)


素顔はしがない大学生で、毎日、大学とバイトと下宿を往復しているだけの毎日だ。


えっ?彼女?


昨日までいたけど、あっけなく振られた。まあ、1週間前に告られてOKしたけど、例のごとく、


「その格好、ダサ~ありえない!」とか、


「大介って顔だけね」とか、


「あなたって車持ってないの~買わないなら別れる!」


「大介君の趣味、ネットゲーム?えっ、顔と全然合わない!」


とか、理不尽なこと言われて1か月と持たない。


「お前たちが俺のことよく知らないのに顔だけで付き合ってというのが悪いのだ!」


と言ってやりたいが、俺は基本、女子には優しいので面と向かって言えない。そういうところも嫌われる原因なのだが、それは「女子に弱い」という自分の特性だから、直そうという気もない。だいたい、女って付き合うとすぐメールを送ってくるし、返事を返さないと怒る。


マメな男はモテるっていうし、現実、同級生の中には顔はイマイチでも笑いとマメさで女の子に人気な奴もいる。だが、


(こっちはそんなに暇じゃないのだ)


いつもジーパンにTシャツで何が悪い。そりゃ、Tシャツに「昆」とか「風林火山」とか、戦国オタク臭プンプンするが、それも好きなのだから仕方がないじゃないか!(あと金もないのだが)そういう残念な性格と趣味の他称イケメン野郎が俺、島大介だ。


 本日の仲間たちの動きにイライラしながら、俺は俺で本日のミッションをこなす。今日は川中島の戦いのシナリオだ。これは有名な戦いだから、誰でも知っていよう。特に4回目の上杉謙信が武田信玄と一騎打ちを演じるのは、有名な話だ(本当は一騎打ちなどしていないのだが)


このネットゲーム「戦国ばとる2」は、戦国大名を演じて国盗りをするプレーヤーとそれを助ける武将プレーヤーに分かれて戦うゲームだ。俺は性格上、ナンバー1で苦労するのはまっぴらなので、武将として参加している。武将の利点は最初にどの大名の味方をするか決めることができるのだ。


これは毎回、代えてもよい。条件はゲーム上で使える通貨(単位は両)やゲーム上での領地(単位は石)の大小で決まるのだが、場合によっては直接会って何かおごってもらうとか、欲しいグッズと交換だとかも行われていると聞く。直接会うなんてまっぴらごめんだが…。


まあ、俺ぐらいの名軍師になると、その報酬の額が結構大きいのだ。


だが、俺のポリシーとして、金では動かんというのがある。俺を動かすのは「心意気」である。


 ネット上の通貨や領地は確かに魅力的だが、(戦国大戦で稼いだものはそのまま、電子マネーとして使えるのだ。領地の場合は、一定期間ごとに電子マネーが入る。但し、くれた大名プレーヤーが滅びなきゃである。まあ、俺としては何度も言うようだが、金目的でゲームしてるわけじゃない。


(金と言っても高校生のお小遣い程度であるが…)


俺は純粋にこの戦国時代のいくさが好きなのだ。それが興じて、昨日のデートで城に彼女を連れて行って、「ここはこう攻める」だの、「俺ならこう守る」だの熱く3時間も語ったのは、確かに大人げなかったと思うが。


 今日は上杉謙信役のプレーヤーに加担して、武田方を攻めているが、こいつは本日仕えることになったハンドルネーム「上杉謙信大好きさん」が、このシナリオで一度も勝ったことがないから…と泣きついてきたので、それならば…と家来になってやった。どうやら、今晩、この最弱謙信は、俺のおかげで初勝利を取れそうであった。


(あと一押しで武田軍は崩れる…)


俺はキーボードを叩き、本日の主君に突撃命令を促す。画面に勝利と出たのはかっちり180秒後だった。


また、俺の不敗神話が続く。


「ずっと我が家来になってくだされ~」


というメッセージがパソコン画面に現れたが、


「気が向いたら…」


と冷たく返事をする。


いろいろ俺を召し抱える条件を出してきたが、まあ、俺はフリーが好きなのだ。


「それはお断り…」


と書いてゲームのコミュニティルームから退室し、


「さて、まだ時間があるから、別の主君の元であと1戦しようかな?」


と思っていたら、ピンチロリン…メッセージが届いた。


「私は石田三成。私を助けて!関ヶ原で待ってるわ」


「は?」


(こいつ女か?)


いやいやと俺は首を振る。このゲームで女性プレーヤーはレアなのだ。最近は歴女などというのがいるそうだが、現実もネットの世界でもそんなに多いわけでない。奴らは少数のマイノリティなのだ。それに加えて、現実の歴女は、メカ音痴だからこんなネットゲームに参加している者は、少ないことが予想された。


(ということは、こいつネカマだな)


俺はそう判断した。だが、お誘いメールは続く。


「お願い…みなりの一生のお願い」


「みなり?みつなりじゃないのか?」


パチパチとキーボードを打つ。こうやってメール交換して交渉すると相手がネカマであることが大抵分かる。所詮、男なのだ。演じていても分かってしまうものなのだ。


「失礼な。わたしは石田治部少輔三成いしだじぶしょうゆうみなり。女だと思ってバカにしないで!で、どうなの?私の部下になるの?ならないの?」


(おいおい…こいつ、本当に女かよ?三成って書いて「みなり…」なんて、マジ?)


ネカマじゃなくて歴史大好きのアニメおたく系女子の匂いをプンプンしてきた。今流行りの戦国大名を女の子にしたアニメや漫画に感化された痛い奴だ。


「しょうがないなあ。で?条件は?」


俺は何だか興味を持って、交渉を続けることにした。実のところ、交渉しだいでこの痛い奴と遊んでやってもいいと思ったのだ。


接触してきたのはどうやら女の子。女子にはこりごりしている主人公ですが、たぶん、今回はかなり振り回される予感が…。だいたい、ラノベの主人公は女の子にいいように扱われると決まっていますから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ