夢からのお告げ
夢を見た。
タンニーンと俺と紗由里は赤い絨毯の上を歩いていた。
タンニーンが俺に聞いてくる。
「神様って、どんな感じなんだろ」
「知らないさ。会ってみれば分かるだろ」
案内もなく、ひたすらに歩いている。
すると、目の前に扉が出てきて、中から光が出てきた。
「…タンニーンか」
「…だれ?」
「お前ならすぐにわかるだろう」
「神様というんだったら、たぶん違う」
扉の向こうから出てきた者は、俺には人の女性のように見え、紗由里にはロシアの人形に見え、タンニーンには小型の龍に見えた。
「…なぜそうわかる」
「なんとなく。あなたじゃなくて、僕たちに用があるのは、その向こうにいる人でしょ」
タンニーンは、あごひげで指差した。
彼女は笑った。
「さすが、そこまで育ったのならば、何も言うまい。この扉を超えて行け。真の龍となるために、すべてのものを統べる為に、己の欲するものを見つけるために」
そこで目が覚めた。
そのことを言うと、二人もまったく同じ夢を、それぞれの視点から見ていた。
「…共有してたのか」
「でも、この夢が僕たちに何の意味があるんだろう」
「今はまだ分からない。でも、時が来ればわかるんじゃないか」
俺はタンニーンに言った。
「時が来ればって、いつになるんだろうね」
髪の毛が伸びてきたらしく、後ろにくくった髪の毛を手製のハサミで切っていた紗由里が言った。
「知らんね。でも、いつの日にか、必ず来るだろうさ」
しかし、その日はすぐに来ることになった。
草木も眠る丑三つ時、突然の轟音でたたき起こされた。
「タンニーン、岩居、畿誡よ。今すぐに出てこい!」
それは、人の声ではなかった。
「誰だ!」
俺はその声の主に聞いた。
「我は、龍族族長たる五ヅ龍である。早々に出て来ぬ場合は、こちらからそちらへ参る」
「服ぐらいは着させてもらってもいいだろ」
俺はそう言って、寝巻から、普通の服へ着替えた。
そして、紗由里を起こして、荷物を簡単にまとめ、タンニーンに聞いた。
「誰か知ってるか」
「当たり前のように聞かないでよ。僕は生まれてから見た同族は、お父さんとお母さんだけだよ」
「そうだったな」
「まだか!」
外から再び轟音が響いた。
「今から出る!」
タンニーンが、着替え終わった紗由里と荷物を持った俺を見ていった。
外では、タンニーンの父親の何倍もの巨龍が待ち構えていた。
「ムツヲノヌシノカミが御待ちだ。すぐに飛び立つぞ。人間どもは彼の背中に乗せてもらえ」
そう言って、五ヅ龍はすぐに飛びあがった。
若干遅れて、どうにかタンニーンの背中にしがみついた俺たちは、落ちないようにしながら空を飛んだ。