「お前を愛することはない」と新婚初夜で言われた子爵令嬢、その後、意味不明な展開になった話
「君を愛することはない」
そう、新婚初夜で旦那様が仰った。
だから私は・・・
「旦那様は包茎でございますか?」
と尋ねたわ。
「はあああああ!」
怒号が寝室に響いたわ。
だって、そうとしか思えないじゃない?
ほら、据え膳食わぬは男の恥って言うでしょう?
あたしは今でこそ十八歳の初心な子爵令嬢であるが転生者でもある。
きっちり80まで昭和、平成、令和を生き延びた女である。
「では、短小で早いのですか?」
【出ていけ!】
と追い出されたわ。
旦那は伯爵家令息、中々結婚しないから貧乏子爵家の私が多額の援助金と引き換えに嫁入りしたのよ。
舅と姑とは別れてすんでいるが義妹はいる。
「クス、お義姉様、昨晩はどうでした?」
「ああ、ヤラなかったわ。何でもヘンリーは包茎みたいね。手術受けた方がいいのじゃないかい?」
「包茎じゃーー、いえ、何でもないわ」
どうやら、旦那の義理の妹みたいだが、まるで屋敷の女主人のように振る舞う。
使用人達もそっけない。
「あ、お菓子持って来て」
「はい・・・」
「お茶もね」
食っちゃ寝、食っちゃ寝の生活を送る。
ドレスも義妹用のを仕入れている。
これは何かあるね。
でも、私には関係ない。ここの生活は貴族で日本の中流階級ぐらいか。
内職していた子爵家時代に比べれば天国よ。
「風呂入るから用意してくれない?」
「はい・・・」
私にはメイド見習いのベッキーがついた。まだ、そばかすのある娘だよ。
「好きな男いるのかい?」
「ヒャア、いえ、いないのです」
あら、うろたえているね。可愛い。
でも、ベッキーが社交会のスキャンダルを知っているわけでもない。
話題はすぐに尽きた。
つまらない。
だから、
「ちょいと、そこの男、これ作って」
「え、これは・・・」
「フィールドステッキだよ」
昔の言い方ではゲートボールだ。
箱根の大会に出場したことがある。
ボールを用意して庭園で遊んだ。ベッキーが相手だ。
「・・・えっと、こうですか?」
「上手いね・・・」
でも体は若い。持て余す。今度はgolfをしよう。
これもクラブを作らせた。
ブン!ブン!と振る。
「ファアアアアアーーーー!」
コースから外れて飛んだらベッキーに叫ばせた。注意喚起だ。
そんなこんなで充実した生活をおくっていたら、ベッキーが小声で言う。
「あの、若奥様、義妹のメイリー様が、奥様用の予算でドレスを買っています・・・」
「別にいいよ」
この世界のドレスはどうも着にくい。
さすがに、社交会は私が出なくてはいけない。
旦那ヘンリーと一緒に馬車に乗る。
見送る義妹が私を見て嘲る。
「まあ、義姉様、みすぼらしいドレスだわ。クス」
「そうかい、気に入っているのだよ」
黄色のドレスで何回も洗っている。
装飾品もくれないのでドングリで自分で作った。
「惨めだな。ふしだら女」
「包茎治しなよ」
「なっ!」
社交会に出席したら耳目を集めた。
「おい、あの小伯爵夫妻、夫人は木の実のネックレスをつけている」
「まあ、お可哀想だわ・・・」
「不遇妻か・・・」
さすがに旦那は不味いと思ったが・・・
「おい、サマンサ、笑え!」
「はいよ」
【ア~ハハハハハハ!面白いわ】
大笑いをしたら旦那に止められた。
【おい、微笑めだ!どうしてお前はそんなに馬鹿なのか?】
怒られたね。ここは女に家なしと言うから素直に謝罪した。
「はい、ヘンリー様、いたらない妻で申訳ございません」
「全く!」
ヒソヒソヒソ~
(何だ。夫は暴君だな)
(奥様、お可哀想だわ)
(妻を大事にしないか)
何か社交会でささやかれた。
旦那と義妹は次の日に領地に向かった。
「いいか、余計なことをするな」
「あいよ」
「お前は木の棒の素振りでもしているのだな」
「キャ、お義姉様、カワイソー」
それから屋敷に貴族たちが訪れるようになった。
私は庭で言われた通りgolfのクラブを振っている。
「まあ、サマンサ様・・・一体何を・・・」
「あら、奥様、健康に良いのですよ。やります?旦那様とご一緒に」
(そこまで追い詰められていたのか?旦那を撲殺する気か・・・)
(様子を見に来たけども、合わせた方がよろしいですわ)
「ファアアアアアアアーーーーーー!」
「まあ、旦那様センスがあるわ。奥様も立派よ」
「そうか、これは楽しい遊戯だな」
「golfと言いますのよ」
クラブを量産し革職人にバックを作らせ専用のボールを作らせたわ。
また、孤児院から孤児を集めキャディの教育をした。
「いいかい、選手の前に出ないこと」
「「「はい、奥様」」」
golfグッズはそこそこ売れ。
そして、遂に大会を開けたわ。
☆☆☆三ヶ月後、ヘンリー視点
「何だ。屋敷が騒がしいぞ!」
「まあ、おかしいわね」
領地から屋敷に戻ると人だかりだ。
これは実質的な新婚旅行だ。メイリーとの子をサマンサの子として育てさせる。
メイリーは平民出身だ。貴族の跡取りは生めない。
「おい、貴様、何をしているか!」
「出むかえなさいよ」
すると、『静かに』と看板を持っている使用人がいた。
「おい、何をしている・・・な、王女殿下ぁ?!」
我が屋敷に王女殿下が来られていた。
白いドレスにサマンサが振っていた木の棒を芝生に立てて何かを考えているようだ。
小声で聞いた。
(旦那様、芝生を読んでいるのですよ。王都レディスカップ。エリザベータ王女殿下と奥様の一対一の対決です)
(意味分からないぞ!)
(静かに)
王女殿下が木の棒を静かに当てたら、アナウンスが響いた。
【おお~と、王女殿下、カップに一打で決めました!パーフォーです!それに続くビリア伯爵夫人サマンサ様、遠く離れています。一打で入れなければ負けです!】
「何を言っているのだ・・・」
【さあ、皆様、サマンサ様が打ちます!お静かに!】
王女殿下から三十メートル離れたサマンサが木の棒を振った。芝生が削れる。
ボールを打ったらしい。小さな球だが・・・
【おおっと、旗に当たり・・・は、入った!これは、同点優勝か!】
パチパチと拍手が鳴り響いた。
「さあ、まだ、選手が続いています」
令嬢と孤児がペアになって、木の棒を振るっている。
「ファアアアアーーーー」
変なかけ声をかけやがる。
それよりも。
「おい、何で孤児が我が屋敷に入っているのか?」
「ヘンリー、汚いわ」
「旦那様、奥様はキャディを孤児院から雇っています」
「だからって、あんな小汚い子供を・・・」
「それが貴族の義務ですよ」
ダメだ。使用人達が洗脳されている。
俺らをほったらかしにして表彰式が始まった。
これも驚愕だ。
「表彰式です。国王夫妻の登場でございます」
な、国王陛下まで・・・
「うむ、見応えのある勝負であった」
「そうよ。エリザベータよくやりました。サマンサ様も見応えのあるショットでしたわ」
意味が分からない。
「さあ、祝勝会だよ!」
「「「オオオオオーーーー!」」」
屋敷はサマンサに乗っ取られた。
膝をついてうなだれていると陛下が小声で話かけてきた。
畏れ多いことに肩に手をかけて下さる。
「ビリア小伯爵」
「へ、陛下・・」
「気持は分かるぞ」
陛下も妻から酷い扱いを受けているのか?この場合、王妃殿下?
「良い外科医を知っている・・・その切ってしまえ」
「え、何を仰せになっているのですか?」
「ゴホン、皮だよ。包茎と聞いた」
「違います。それは・・・【陛下、ヘンリーはズル剥けだわ!】
メイリーが言葉を重ねて否定した。
そんなときに限って会場は静かになった。
王女殿下は口を手で塞ぎ。覆い被さるように王妃殿下が庇った。
「まあ、その何かけしからんことをしているようだな。不倫か、とにかく騎士よ。連行せよ」
「「「御意!」」」
「義妹殿は修道院に連れて行きなさい。汚らわしい!」
「「「はい、王妃殿下」」」
「ま、待て!これは意味が分からんぞ。誰か説明せよ!」
「ま、待って、あたしは真実の愛を・・・」
引きづられて馬車に連行された。
牢屋に入れて取り調べを受けているが・・・・
「王女殿下の前でズル剥けとは、これはしばらく出られませんよ」
「そんな!」
そして、聞いた話だと。
まだ、サマンサは屋敷にいる。
最後までお読み頂き有難うございました。




