第7話
「私はこれから役所に行き、フォーリー家の長女クリスタ・フォーリーとして、ウォード家の長男エリック・ウォード氏に対して正式な婚約解消の手続きをします。その際は『互いの性格の不一致』とだけ述べ、殊更に彼の名誉を傷つけるような真似はしません。それでも私を恨み、何らかの攻撃をするというならご自由に。こちらも受けて立ちます」
毅然とした私の物言いに、キャロルは明らかに怯んでいた。好き放題に相手を責めるのは大好きなくせに、相手から少しでも反論されるのは大嫌いらしい。
「な、なによこいつ……。いつもは大人しいくせに……」
「私、別に大人しくなんてないわよ。エリックとの今後の関係を考えて、あなたの馬鹿な振る舞いに目をつむっていただけ。そんなこともわからなかったの? あなたももうすぐ少女から女性になる年齢なのだから、自分の言動を振り返って成長しなさい。でないと、一生馬鹿のままよ」
「余計なお世話よ!」
「そうね。もう義妹ではなく、なんの関係もない相手には余計なお世話だったわね。でも、完全にあなたを馬鹿にするつもりで言ったわけじゃないのよ。あなたのこと、一時は義妹と思って接していたからね。ほんの少しだけ、あなたの将来が心配なのよ。私の言ったこと、よく考えてみてね。あなたはまだ精神的に成熟していないんだから、心を改めようと思えばいくらでも改められるはずよ。でないと、一生馬鹿のま……」
「馬鹿馬鹿うるさいっ! 早くどこかに行けっ!」
「そうするわ。さようなら」
顔を真っ赤にして叫ぶキャロルに手を振ると、私はするりと店を出た。私が大声を出さなくても、キャロルが散々喚いたので、他のお客さんの注意をかなり引いてしまったようだ。この騒動は、明日には町中の噂になっているかもしれない。
しかし、別に構わない。こちらには恥じる点など一切ないのだから。私はずっとお腹の中に溜まっていた重たい石ころがなくなったかのような軽やかな気分で、一人役所を目指すのだった。
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婚約解消の手続きは、驚くほど短時間で終わった。私が言うのもなんだが、人の一生を左右しかねない手続きが、こんなに簡単におこなわれて良いのだろうか? いや、煩雑で時間がかかるのも困るんだけど……
そんな私の疑問に対し、いかにもベテランといった風貌の役所の担当官さんが、苦笑してこんなことを言っていた。
『昔はね、もっと煩雑だったんですよ。何週間もかかる上に、最終的に大公様の承認を得る必要まであった。でも最近はね、婚約してもすぐに解消したいって言い出す人が多すぎて、手続きが一気に簡略化されたんです。大公様だって、三ヶ月に一回くらいならともかく、月に何件もある婚約解消をいちいち見てられないですからね』




