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うみの波が止むまで  作者: 蒲公英
第一章 出会い

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第四話

翌日の朝

 羽未に食欲はなく、朝食も喉に通らなかった。

 あ、私ほんとうに結婚したんだ。

 凪のあのニヤリとした笑顔が頭から離れない。

 顔がかあぁっと熱くなる。自分が自分でないみたいだ。恥ずかしい。


「羽実様、大丈夫〜?もしかして昨日のこと?」

 澪が心配そうに羽実にたずねる。羽実は部屋でチャームポイントのサイド編み込みを編んでいた。落ち着かないのかいつも通りの三つ編みが編めない。

 なんとか及第点のを編めたため、羽実は支度をする。

 玲は相変わらず灰のように燃え尽きており、今日はお留守番してもらうことにした。


「行ってきます。」

 そう言っても、なにも返事がない。


 外に出ると少し行ったところに一条家の車が待っていた。

 中に凪の姿が見える。羽実はそれを無視して今日は歩いて学校に行くことにする。顔を合わせるのはたぶん心臓が持たない。しかも、そんな姿を凪に見られるなんて、、。死んだ方がいい!

 

 学校の中でも、羽実は落ち着きがなかった。

 今すぐ凪に文句を言ってやりたいが、言ってしまうと、

「凪のことで頭がいっぱいいっぱいだった」

と自白しているようなもんなので、言えない。


 昼休憩、結月が心配そうに羽未の顔を覗き込んでくる。わたあめが膝の上に飛び乗ってくる。

「羽未〜。なにかあったの〜?今日、ずっとなんか変だよほら、わたあめも心配してる。」

 そんなの顔に出てたのか。羽未は、ハッとする。

「ごめん、ずっと考え事してて、、。気にしないで〜」

 それを聞いた結月は頬をムッと膨らませる。

「羽未、絶対なにか隠し事してるでしょ〜。もぅ〜、隠し事は無しだって言ってるのに〜!!」

「結月ごめんね。ちゃんと落ち着いたら話すから。ちょっとだけ待ってて…。」

 結月の顔を伺いながら羽未は言う。

 結月は、ニコッと笑顔になる。


「羽未、約束ね。落ち着くまで待ってるから〜!」


 その言葉に羽未は安心する。結月にぎゅーっと抱きついた。

「結月、すきー♡!!ずっと親友だよぉ~」


 この時羽未は、放課後に起きるもうひと波起きそうな出来事を忘れていたのだ。そう、凪が結婚の挨拶という名の事後報告に来るということを、、、。



放課後

 今日、羽未は特に用事もなく、スーパーによってから帰ることにした。

 そして、昨日のことを忘れるためにマドレーヌを焼くつもりだ。


 なに味のマドレーヌにしようかなぁ。ゆずのやつおいしかったな、。でも、今日は王道のレモンにしよ〜。


「ただいま。」

 そう言っても、「おかえり」の声は聞こえてこない。

 羽未はいつも通り自分の部屋に戻ったあと調理場へ向かう。


 一柳家のキッチンにはお菓子作り用の道具が一式そろっている。もともとほかの家よりはそろっていたが、羽未がいろいろとお小遣いで買い足したため、基本的に材料があれば何でも作れるのだ。


「よし、作るか。」

 羽未は、手際よくマドレーヌを作っていく。今日は、レモン風味の気分だったため、バターを電子レンジで溶かしている間にレモンを絞って少し皮をおろす。

 マドレーヌの型にバターを塗り、強力粉をまぶす。そして、冷蔵庫に入れて冷やしておく。

 バターが溶けたら、あらかじめ混ぜておいた卵、薄力粉、ベイキングパウダー、砂糖、はちみつを混ぜた物体に3回に分けて入れ、レモンを入れてゴムベラできるように混ぜる。

 出来た生地を絞り袋に入れてマドレーヌの型に絞り入れる。

 170度に予熱しといたオーブンで15分程焼く。


 焼けるまで暇だな。

 羽未は、そう思い部屋に戻ろうとする。

 すると、居間がなんだか騒がしい。


 嫌な予感がする


 そう思い、居間の襖にそっと耳を当てる。両親の声がなんだか猫なで声のような気がした。


 え、気持ち悪。早く部屋に戻ろう…。

 そっと、部屋に戻ろうとする。

すると、、


 襖が開いて、母親が出てきた。

「羽未、どこにいたのよ。探してたのよ。ご当主様が羽未に御用だっておっしゃるから…。」


 羽未はつい、ギョッとしてしまう。そんな羽未にはお構い無しで、母親は羽未を引っ張って居間に引きずり込む。

 羽未は凪と目が合う。

「え、なんで凪居るのよ。」

 羽未は「うぇー」と顔をしかめてしまう。顔をしかめないと顔がまた赤くなってしまいそうだ。

母親に「こっち座りなさい」と手招かれて両親の隣に座ろうとする。


「えっじゃないだろ。昨日言ったこと忘れたのか?まぁ、家にいただけ偉いと思うが…。あと、羽未はこっちだ。」

 「あ、ごめん。忘れてた。」と羽未は凪に謝りながら、凪の隣に座る。

「ちょ、羽未。お前、当主様になんて口聞いているんだ。」

 そう父親に注意されるが、すぐ凪が羽未を庇いながら話を始める。

「初めまして事後報告にはなりますが、一柳羽実さんと結婚させていただいた一条凪と申します。」


 居間が静まり返る。羽未が下で凪の手をつねる。

 凪は羽未のその手をぎゅっと握る。羽未が凪の顔を見ると、ニヤリと笑っていた。

 げ、やられた。ただ、リラックスできたのか朝ほどは照れることもない。なれって怖いな。てか、なんであんなに恥ずかしかったんだろう、。

 そう思いながら、手を振り払おうとする。


 すると、やっと両親が話し出した。

「な、なんのご冗談でしょう?羽未は一柳家最弱と言っても過言では無いです。しかもうちには、貴方様と同級生の琴葉がおります。琴葉とお間違えになっておられるのでは…?」

 それを聞いた羽未は、(まぁ、そうだよなぁ)っと内心頷きながら思う。


 凪が、父親の意見に真顔で答える。

「いえ、羽未さんで間違いありません。彼女は私の『運命の相手』なのです。もう、婚姻届も役所に出してあります。」

 両親はまだ理解できていないようだ。だが、ショックで顔が崩れてきている。

「羽未、さっさと荷物まとめてこい。最低限のものだけで、他の荷物は後でうちのものに運ばせよう。」

 両親にもお構い無しで、羽未に指示をする。

「え、今すぐに?もうすぐマドレーヌが焼けるから…。て、マドレーヌ!!やばい。ごめん凪。ちゃんと準備するから、先に車?乗ってて!!」


「は、マドレーヌ?おい、羽未。マドレーヌって何のことだよ…。ってもう居ない、、。」


約30分後

「おまたせ〜、凪。これからどこ行くの?」

 散々待たされた凪は半ギレ状態だ。羽未はそんなことも気にせず、澪とお喋りしていた。

「俺の家だ。羽未には明日からそこに住んでもらう。学校の苗字も手続きしてある。明日から正式に一柳羽未ではなく、一条羽未だからな。」

は、え、、?

 羽未の脳内から、結婚したら苗字は変わるという重大な事が抜けていた。そして、すぐあることを察した。

 私が凪と結婚したこと、すぐにクラスに広まっちゃうじゃん。え、それはやだなぁ。


 そんなことを考えていたら、いつの間にか一条家に着いていた。

 相変わらず、家でっか。迷子ならないといいなぁ。


「羽未、こっちだ」

 羽未は、自分の部屋であろう場所に案内される。

 あ、母屋の方はふすまじゃなくて、普通のドアなんだ⋯しかも指紋認証か顔認証でしかロック解除出来ないなんて⋯。ハイテクだな。


 羽未の部屋は、驚くほど羽未好みに飾られていた。しかも、

「え、部屋広くない!?」

「まぁ、お前は一条家の女主人なんだから当たり前だろ」


 女主人、か。私が女主人でいいのか?


 そう、疑問に思いながら部屋に入る。すると、羽実はある違和感に気づく。

「あれ、ベッドがない⋯?」

「あぁ、当たり前だろ。別で寝室は用意してある。部屋の荷物の片付けが済んだら一緒に見に行こう。」

「え、別で寝室...?どゆこ...」

 羽未は嫌な予感がし、凪に質問するのをやめる。

「片付けするから、凪はあっちいってて」


 色々言ってなかなか出ていかない凪に手こずりながらも、羽未は何とか凪を追い出すことに成功した☆

「澪、玲、手伝って〜」

 羽未は、使い魔の2人を呼び出して手伝って貰うことにした。


「こいつが、主の旦那。殺してやる。」

 玲は、出てくるなり即座に言葉を放った。ここに凪はいないが、おそらくずっと思っていたのだろう。

 ほんとに殺してしまいそうな目をしていて怖い。当主を殺してしまったら、おそらく大罪になってしまう。その時、羽実の脳内にある名案が思い浮かぶ。

 あ、離婚すればいいんだ。べつに、凪のことが好きってわけじゃないし。

 結婚したことに恥ずかしさを感じ、どうにかしてごまかそうとした結果、なぜか「離婚」という考えが浮かんできたのだ。ただ、のちに羽実は離婚を凪に切り出し後悔するのだが、それはまた別の話。


 部屋の片付けがおわり、羽実は凪の部屋へむかう。といっても、凪の部屋は羽実の隣だ。

 こんこん

 ドアをたたいてから、開ける。

「凪ー、片付け終わったよ。てか、部屋に鍵つけてないの?不用心ね。」

「いや、鍵はかかっている。羽実は顔パスなんだよ。俺の妻だからな。ま、それはいいとして、寝室へ案内しよう。といっても、この部屋の正面だがな。」


 しれっとすごいことを言われ、羽実はドキッとする。そんな羽実にはお構いなしに凪は正面の部屋へ向かう。


ガチャ

 ドアが開き、部屋に入る。ここが居間だといわれてもおかしくない程にいろいろとそろっている。

 大きなテレビ、ソファー、ローテーブル、本棚、観葉植物、丸っこいかわいらしいランプ。そして、おっきなベッド。

 羽実は大きなベッドにテンションが上がり、つい飛び乗ってしまう。そんな姿を見た凪はくすくす笑う。


「この部屋は、夜には俺が許したもの以外は使い魔も人間も平等に入れなくなる。しかも、結界が張られるようにしてあるため防音対策も身の安全の確保もばっちりだ。壁掛けの電話で外ともやり取りができるぞ!」


 なんか、すごいんだな、、。羽実は少々あきれながらも寝室の豪華さに目をキラキラさせていた。

「ベッドふかふか!澪と玲と一緒に寝れるね。結月呼んでお泊り会とかいいかも!」

「この部屋は俺と羽実、二人だけの専用の部屋だが?もちろん使い魔も入ってこれない。」


「え、、!?」


 羽未の思考は停止してしまう。

「は、え、、二人で同じベッドで寝るってこと、?え、嫌。」


「いやいや、羽実に拒否権なんてないぞ。俺らは夫婦なのだから一緒のベッドで寝るのも当たり前だろ。それともなんだ、恥ずかしいのか?」

 凪に煽られた羽実はつい条件反射で墓穴を掘ってしまう。

「は、別に恥ずかしくないけど?」


「羽実様、こいつが羽実様の嫌がるようなことをしたら、後で浄化しますのでご安心を。」

「主の身に何かあれば、僕がやりますので。」

 二人の使い魔が殺気を放ちながら言う。その姿に凪は若干引いてしまう。


「つまりは、羽実が嫌がらなければいいのだな?それなら簡単だ。」


凪と澪と玲が言い合っている姿を見て、羽実はあることを思い出した。

「マドレーヌ食べなきゃ。」



ーーー

そのころ、一柳家では


 羽実が一条家に嫁ぐということをいきなり聞かされた両親が、急いでほかの兄妹たちを呼び出して緊急会議を開いていたのだ。


 ごほん、父が咳をしてから話し出す。空気がピンと張りつめている。

「羽実が一条家のご当主様、凪様に嫁いだらしい。」


「え、父上。何かのご冗談ですよね。あの妹の羽実が凪と、、?」

「あの羽実が一条当主と結婚しただと!?」

 琴葉と颯真が一斉に口を開く。


「ええ、先程当主様が確かにおっしゃってました、、。ねぇ、あなた。」

「ああ、そうだ。偽物かと疑ったが、あのオーラと魔力。本物だと認めざるをえなかった。羽実も当主相手にため口だった。」


 その話を聞いた琴葉は呆然としていた。

「え、凪、私じゃなくて羽未と結婚したの...?え、、、」


 そんな中、1番下の紬が空気を読むこともなく無邪気に話し出した。

「羽未ねぇ、結婚したの?おめでとうだね!」


その日の一柳家は今までで1番空気がピリピリしていたらしい。


ーーー

一条家

 羽未は一条家の他の人間と顔合わせをしていた。

「まぁまぁ、あなたが羽未ちゃんね?なんて可愛らしい子なの。凪が運命の相手を見つけたと聞いてから会いたかったのよ〜。これからはここがあなたの家だからね!」

 凪の母、翠はにこにこと笑いながら羽未を受け入れてくれた。

 「あなたが来るって聞いて、急いで部屋を準備したのよ〜。大丈夫?足りないものはない?」「羽未ちゃんのマドレーヌ1つ頂いたけど、とっても美味しかったわ〜。今度お茶会しましょ。」などと、立て続けに話しかけられ羽実は戸惑っていたが、まんざらでもない。

 一柳家にいたころは両親から邪魔者扱いをされていたため、これが本当の母親なのかと実感していた。


 しかし、凪の妹であり同級生の一条華恋は殺気を放っている。

「なんで、一柳家の恥で有名な一柳羽実がいるのよ。」


 なんでって聞かれても、、こっちが聞きたいんだけどなぁ。

「なんで?か。それは俺は羽実と結婚したからだな。」

 凪が真顔で答える。なんで凪はいつも真顔で結婚しただなんて言えるのだろうか。羽実は疑問に思う。


「はあぁぁぁぁぁぁ⁉」

この時の華恋の声は、一条華恋史上一番大きな声だったらしい。


あ、私。華恋と仲良くなることはできないかも。そう、羽実は思う。


「私より弱い女がお兄と結婚するなんて認めません!一柳羽実、私と決闘です!」


 え、めんど。羽実はつい顔をむっとする。


「え、やだ。」

「ま、そうですよね。あなたはしょせん一柳家の恥。負けるのが怖いのでしょ。どうやって誘惑したのかは知りませんが、あなたとお兄は釣り合いませんわ!」

 さんざん煽られ、羽実はついに耐え切れなくなる。


「いいわよ、華恋。やってやろうじゃない。使い魔同士の勝負でいい?ねぇ、凪。面倒になったら助けてよね。」

 そう、凪をみながらニヤリと笑う。その笑いに、凪は微笑む。

「ああ、もちろんだ。自分の実力、わからせて来い!」


そう見送られ、羽実は華恋とともに簡易訓練所へ向かう。


次回

使い魔勝負の結果はいかに?

一条羽実になって初の学校は?

の二本でお送りいたします!

次回もまた見てね~。

じゃんけんポン(チョキ)


おほほほほほ〜。


学校の話は入りませんでした!!

ごめんなさい!


次回もお楽しみに!

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