プロローグ ある日突然に
私は幸せ者だった。
当たり前のように家族がいて、当たり前のように温かいご飯が食べられて。
そんな生活がいつまでもいつまでも続くと思っていた。
ただ、現実は甘くなかった。
「結衣、おやすみ」
「うん、おやすみ」
これがお母さんと交わした最後の言葉。
「結衣姉ちゃん、また明日ね」
「うん、それじゃあね」
弟の言った『明日』が来ることはなかった。
お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、弟、そして私。
六人で幸せに暮らせる日は、この日が最後だった。
夜の二時ぐらいだろうか。
私はなぜかその日は眠れなかった。
すると、部屋の入り口に人影が現れた。
「お父さんかな……」
私たち六人は、全員が同じ部屋で寝ている。
でも、先ほどまで六人全員がいたはずだ。
「じゃあ、この人は……」
そう思うのも束の間、その人は入り口から一番近くにいたを私に包丁を突き立てた。
私は咄嗟の判断で体をずらしたが、それでも包丁がかなり深く突き刺さってしまった。
「アアア!」
かなり大きく叫んだが、その叫びで他の家族が起きることは無かった。
犯人はそのまま全員に包丁を刺していった。
全員が一瞬目を覚ましたが、しばらくすると、固く目を閉ざした。
私は、薄れゆく意識の中で、隣で寝ていた弟の肌を触った。
「蒼翔……」
その肌は驚くほどに冷たかった。
「もう……私も……」
そのまま私の意識はどこかに消えていってしまった……。




