金銭的な不安の解消
「車が欲しい。
それが無理ならバイクか原チャかチャリ。セグウェイでも良いから欲しい。」
「姉さん……
森の中でセグウェイなんて、逆に邪魔になりはるんちゃう?」
「兎に角、歩きたくない。
てか……ヨロズコちゃん。元気いっぱいだね。」
「まぁな。
元々、山歩きは嫌いやないし、【踏破者】のジョブ補正を繋いだお陰で身体が軽いんや。」
「それは良かったわね。
わたしは、若返ってこれ。元の身体なら既に死んでたかも……
てか、もう無理。
パパ頼む。」
ヨロズコちゃんと喋ってた嫁が、不意に話を振ってくる。
「【任意設定】×4」
僕は、自分と嫁。
ついでに、元気一杯のヨロズコちゃんと、死にかけの顔をしているゼロヒト君の肉体の原状を出発前の状態に戻す。
「助かった。有難う。」
「デカい図体をしておる癖に体力が無いのう。」
「降ろすぞ。」
「済まぬ。失言じゃったわ。」
「分かれば良い。」
ゼロヒト君とアマトティちゃんがワチャワチャしている。
ゼロヒト君は、幼女姿のアマトティちゃんを背負い、
コブとドタを入れたハードタイプの犬猫用キャリーケースを肩からかけての行軍だ。
ゼロヒト君は、俺様系の口が悪い人だとは思っていたけど……滅茶苦茶、面倒見が良い人でもあるみたいだな。
「靴だけでも普段、通勤に使ってる革靴じゃなくて、革靴スニーカーを履いていて助かったわ。」
「革靴スニーカー?」
ヨロズコちゃんが、不思議そうな顔でゼロヒト君を見ている。
「革靴に見えるスニーカーだよ。
出張する時は動きやすいから重宝するんだよ。」
「へ~。そんなんがあるんや。
まぁ、ウチも通学用の革靴で森歩きは勘弁や。
クルサルさんが異能で運動靴を用意して貰えて助かったわ。
てか……冬服で召還されて良かったわ。
ちょっと止まっただけで、メッサ寒い。
もし、半袖とかで召喚でもされてはったとしたら……
ホンマ、凍死案件やったわ。」
「だよな。」
体力が回復したゼロヒト君は、ヨロズコちゃんと会話を始めた。
「パパ……しんどい。」
「姉さん?
力尽きるんの早すぎやろ。
今、肉体の状態を朝イチの時に戻して貰ったばっかやん。」
「体力は満タンなんだけど、気持ちがね……」
ヨロズコちゃんの素早いツッコミを受けた嫁が苦笑いしながら返答を返す。
「なら、昼飯にしないかい?」
「おっ。いつの間にか、そんな時間か。」
「大賛成。」
「飯じゃ。飯。
お勧めの旨い物を頼む。」
「カットした、お野菜が食べたい。」
「オイラは何時もの餌(ジリス用のペレット)が良いな。」
ゼロヒト君の提案に、皆、賛成のようだ。
特に、アマトティちゃん。コブ。ドタのテンションは爆上がりしたようだ。
■■■
「お握りとカップラーメンとかいう物も旨いのう。」
アマトティちゃんが満面の笑みを浮かべなが食べている。
「1週間近くは、この生活が続くんだよね……」
「少なくとも1週間は。の間違いだ。
今、目指してニンスキの村が受け入れてくれたら。ってのもあるし……
ニンスキの村を含む、この森の中にある殆どの集落は、狩りや採取。木材の伐採や石の切り出し等で生計を立ててる寒村だから、蒸気機関車に似たような物なんて走ってないし、
四輪バギー(クアッドバイク)やトラックに似たような物を販売している店があるかも怪しい。
願わくば、身元不明。住所不定。無一文の俺達をニンスキ村の人達が受け入れてくれるだけでなく、
四輪バギー(クアッドバイク)やトラックに似たような物を販売している店がある大きな町まで連れて行って貰える事を祈るのみだな。
ただ、大きな町に着いたら、直ぐに、四輪バギー(クアッドバイク)やトラックに似たような物を購入する事が出来る訳でない。
何故なら、俺達は無一文だからだ。
だから、大きな町に着いたら、仕事を見つけて、金を貯め、四輪バギー(クアッドバイク)やトラックに似たような物を購入するところから始めないといけない。
だから、正直な話……
アマトティちゃんと相方さんの欠片を探す旅に出るまでに、かなりの時間がかかると思う。」
嫁の言葉を聞いたゼロヒト君が淡々とした口調で話す。
「金貨1枚でも落ちていればなぁ……
そしたら、お金の面はなんとでもなる気がするんだけど……」
「何を考えておるのかは知らぬが、
金貨と銀貨を数枚づつ持っておるぞ。」
僕の呟きにアマトティちゃんが反応する。
「それ見せて。
シリアルナンバー的な物とかがなければ、
それを僕の異能で無限に増やしても問題無いと思うから。」
「良いぞ。」
アマトティちゃんは、服のポケットから巾着のような物を取り出すと、
巾着のような物の中に入っていた硬貨を地面にばら蒔いた。
「鑑定した結果、どの硬貨にもシリアルナンバー的な物が設定されていない。
だから、兄さんの異能で増やしても問題無いぞ。
これで、兄さんが居る限り、金の心配は無くなったな。」
ゼロヒト君がニヤリと笑いながら僕を見る。
「金を異能で増やすとはのう……」
「パパは、狡い事を考えつく事に関してだけは一流なのよ。」
苦笑いするアマトテイちゃんを見ながら、嫁がタメ息をつきながら話す。
「まぁまぁ。こんな状況や。
清廉潔白に生きようとしはった結果、殺されはりました。ちゅう結末を迎えるよりかは、遥かに良えんとちゃう?」
「まぁ……それは、そうなんだけどねぇ……」
「頭では分かっておるのじゃがのう……」
ヨロズコちゃんの言葉に、嫁とアマトティちゃんが苦笑いしている。
■■■
「モンスターや動物がマーキングしてはる痕跡とかあらへんよな?」
「そんな臭いはないわ。」
「オイラも感知していないよ。」
ヨロズコちゃんの質問にコブとドタが元気な声で答える。
「ほな。この辺に結界を張ったて。
てか、クルサルさんが異能で、ウチのジャージを用意してくれはったお陰で、埴輪ルックで行動する事が出来てはるから、
戦闘になってもパンツが見える心配があらへんとはいえ……
やっぱ武器が剣鉈だけなんは心細いわ。
ニンスキ村で、四輪バギー(クアッドバイク)やトラックに似たような物を買うんは無理やったとしても……
せめて武器だけでも手に入れときたいわ。」
ヨロズコちゃんが、そう言いながら、鞘から剣鉈を抜いて、クルクルと回す。
時刻は16時。
今晩の夜営地が決まった。
「クルサル。
フォローして。」×2
「了解。
『持続設定』×2」
「クルサル。有り難う。
身体の中のマナが尽きる気がしない。
今晩も完璧な結界が張れる。」
「うんうん。
何が来ても、結界の中なら安心だぞ。」
僕が異能を付与すると、コブとドタがご機嫌な顔になった。
「今日の地獄の歩きの時間がやっと終わった。」
「あぁ。」
「だね。」
嫁の呟きに、ゼロヒト君と僕が頷く。
「だらしないなぁ……
ウチが焚き火の準備をしとくさかい、休んどき。」
「悪いけど、そうさせて貰う。
少し寝る。」
「俺も寝させて貰う。
悪いなヨロズコ。後は頼む。」
「ごめん。ヨロズコちゃん。
お言葉に甘えて、少しだけ、眠らさせて貰うね。」
僕達は、ヨロズコちゃんに頭を下げる。
「妾も何か手伝うぞ。」
「コブとドタをテント生地で作られた折り畳み式のクレートから出して、結界の中で遊ばせはるから、その様子を見守ったったて。」
「うむ。任された。」
ヨロズコちゃんの指示にアマトティちゃんが頷く。
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