寒波の中の移動④
『ケトにゃ。
間もにゃく崖の道に出るのでスピードを落とすにゃ。
前の車両に合わせてスピードを落とすだけでにゃく、横風に気をつけるにゃ。』
ケトさんからの無線が入る。
「これ以上、風が強くなるとか……マジで面倒くさい事になったわ。」
嫁が不機嫌な顔をしながらトラックのスピードを落としていく。
「ウチ達だけになったら、ウチがクアッドで先導した方が良さそうやね。
そん時はコブとドタを貸して貰われへんやろか?」
「その時は、兄さんに異能で温冷水服を増やして貰って、その増やした温冷水服の生地でタオルでも作って欲しいところだな。」
「温冷水服の生地を使ったタオルの作成は任しとき。」
「それならば、こき使ってやってくれ。」
ヨロズコちゃんとゼロヒト君が先々の事を話し合っている。
「ちゃんと守ってくれるならヨロズコを手伝ってあげるわ。」
「仕事をすれば腹が減る。
餌とオヤツを増やしてくれよな。」
コブとドタが、先導に回ったヨロズコちゃんを手伝う事になった場合の条件を出してくる。
とりあえず、クアッドに乗り込んで、ヨロズコちゃんの手伝いをする事に不満は無いみたいなのは有難い事だ。
ケトさんが言う崖の道が見えて来た。
「やっぱ、ガードレールみたいなのはないか……」
嫁が不機嫌そうな顔で呟いた。
◇◇◇
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
トラックのフロントガラスやドアガラスを叩きつける雪や風の激しさが増す。
「スピードを落としてて良かった。
あのままのスピードで走ってたら、ヤバかったわ。」
嫁がトラックのハンドルを小刻みに動かしながら呟いている。
「兄さん。
ミンボン連邦がモンスター氾濫の収束宣言を出したようだぞ。
ただ住民達の帰還についてはストップがかかってるみたいだな。
それとキトナガエ帝国政府等の周辺国の政府やギルドと何時まで避難民として援助を受けるかについて協議を始めたようだぞ。」
ゼロヒト君が新たに仕入れた情報を共有してくれる。
「僕達やウミミナちゃんについては何か言ってる?」
「表向きは無いな。
ただ、この機会にミンボン連邦は無国籍の者についての調査と、無国籍の者については国籍を与える。もしくはギルドの登録者になるように勧めたいので情報の提供をして欲しい。という声明を出しているみたいだ。
そこから考えるに裏で何らかの動きがあるような気がするな。」
ゼロヒト君が携帯電話を操作しながら話してくれる。
「なる程ね。
ニンムシュ達は、その話を聞く限りでは僕達やウミミナちゃんを探している可能性は高いね。」
「そうだな。」
ゼロヒト君が僕の見解に同意してくれる。
「取りあえず、フーセの避暑街でユバリスさん達の関係者としてギルドに登録している方が安パイそうだな。」
「そうだね。」
僕はゼロヒト君の言葉に頷く。
「後、ミンボン連邦の人達が、今回の件で、どれぐらいの人数がギルドへ新規登録をしたのかも調べておいてくれたら有難いかな。
その人数が少なければ少ない程、僕達に当たりをつけられる気がする。」
「そうだな。
後は……新しい依頼を受ける時に、ニンムシュをはじめとした権力者達と出会わないような場所で仕事が出来るのか否かについても気をつけないといけない気がするな。」
「確かに。」
僕はゼロヒト君の言葉に頷く。
「後、気になるのは、ニンムシュ達が僕達がユバリスさん達と別れるのを待っている可能性も捨てきれない。
それに……今のところチナさん達の商会等の実績や信頼にタダ乗りさせて貰ってる部分もある。
本当の勝負は、フーセの避暑街で皆と別れた後になるだろうね。」
「確かにな。
けど、まぁ……そう言う意味でもフトバル公爵からハツイロ砦に荷物を運ぶ仕事を振って貰えたのは有難い話だよな。」
「だね。」
僕はゼロヒト君の返答に頷いた。
■■■
「トンネルの中の壁とかにまでムカデとかがビッシリ張り付いてなくて良かったわ。」
嫁がホッとした顔をしている。
「トンネルの中も外もオーブが仰山、見えはるけど……
強い力を持ってはる悪霊は居らへんし、
今んとこ、ウチ達を観察してはるだけで、どうこうしたろう。的な感じでもあらへん。
せやから、無視してた方が良えやろな。
下手に祓おうとしまったせいで、幽霊達が一致団結して襲って来はるんが一番、面倒臭いパターンになるやろな。」
ヨロズコちゃんがトンネルの壁を見ながら話す。
「大人しく通らせてくれるのであれば無駄に争う必要もないでしょ。
わたしだって見ず知らずの人が家の前を通れば、誰だ?って思って見るもんね。」
「家ねぇ……
地縛霊とかは、その場から動かれへんらしいし、確かに住んではる。ちゃあ、住んではる事になるか……」
嫁の返答を聞いたヨロズコちゃんが笑っている。
「地面のムカデとかはトラックバックで轢けばなんとでもなる。
壁に居る幽霊や悪霊はトンネルのシミの見間違え。って事にしとけば気にならない。
出口が崖の道になるからスピードが出せないのが困ったところだけど……
あの森(ミンボン山脈の樹海)に比べたら楽勝だわ。」
「流石、姉さん。
頼りにしてまっせ。」
嫁の話を聞いたヨロスゴちゃんが笑顔で返答を返す。
「ユバリスさん達には申し訳ない気がするけど……
寒い時の深夜のドライブのお供は、やっぱ、ホットコーヒーに限るよね。」
「せやね。
缶コーヒーやペットボトルのコーヒーもやけど、ポテチやチョコとかも見られへんように注意しやんといけんね。」
「言えてる。」
ヨロズコちゃんの言葉に嫁が頷く。
「おっと。トンネルの出口が見えた。
運転に集中しなきゃね。」
「頼んます。」
ヨロズコちゃんが少しだけ寂しそうな顔で頷いた。
◇◇◇
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
トンネルを出ると、雪や風がトラックのフロントガラスやドアガラスを叩きつける音が車内に響き渡る。
エアコンのような物がフル稼働しているにも関わらず、マントやコート等の外套だけでは寒くて、毛布を膝掛け代わりに使って、寒さを凌いでる。
有難い事に幽霊やモンスターや盗賊等が襲って来る気配は無いようだ。
寒波だけが牙を剥いてきている状況だが……今のところ耐えられない程でもない。
せめて、フーセの避暑街までだけでも、このままの状況が続いて欲しいものだ。
そんでもって、誰にも気付かれる事無く、ウミミナちゃんと相方さんの欠片を全て集めたいのだが……それは厚かましい望みなのかもしれないな。
『ケトにゃ。
この先から両側を崖に挟まれた道に出るにゃ。
幽霊トンネルも、今のトンネルを出たら、少し先までにゃいにゃ。
にゃから、後、20分程、走ったら小休止するにゃ。』
ケトさんからの無線が入る。
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