【サイドストーリー】寒波の中の移動③
「寒みぃ。アタシも毛布を被ろ。」
イナノがそう言いながらマジック ボックス化された背嚢から毛布を取り出した。
「てか……
ケト姉の言う事を聞いて冬にクアッドに乗る時のフル装備を身につけてて良かったわ。」
イナノが、そう言いながら毛布に包まる。
フルフェイスのヘルメットをしている為、顔は見えないが苦笑いしているのだろうな。
「てか……
幌を変えて正解だったね。
雪や風が吹き込んで来てたら凍え死んでたわ。
つーか、こんだけ吹雪いてたらモンスターも盗賊も動けない筈。
今のうちに少しでも距離を稼いで貰いたいものね。」
「だな。」
俺はイナノの言葉に肯く。
イナノの言う通り、俺達にとって、この状況は必ずしも最悪とは言えない。
毛布に包まっていれば耐えられない寒さではない。
クシュバとヨタリも鳥カゴの中でタオルに包まって大人しくしているところを見れば、
寒さ以外の脅威は無いと判断が出来るからだ。
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
【ブヒュー・バタバタバタ・ボタボタボタ】
「風が吹き荒れてきましたなぁ……
もしかして崖沿いの道に出たのかなぁ……」
「幌を上げて外を見てみるか?」
「寒いから止めて。」
「おう。」
俺はイナノに返答を返す。
「結界を張って?」
「どうして?」
「崖沿いの道に出たのならトンネルが近づいてる。って事でしょ?
トンネルに入ったら、あの時みたいにムカデとかがワンサカ居たら……気持ち悪いじゃん。」
「おう。そうだな。
『結界』×3
とりあえず、結界を3重に掛けといた。」
「ナイス。
やっぱ、頼りになるわ。」
イナノが弾んだ声で返答を返してくる。
『ケトにゃ。
間もにゃく崖の道に出るのでスピードを落とすにゃ。
前の車両に合わせてスピードを落とすだけでにゃく、横風に気をつけるにゃ。』
ケト姉からの無線が入る。
「あれま。本番はこれからみたいね。
さてと。
明日の朝日を拝めるように気合いを入れ直さなきゃだね。」
「だな。」
俺はイナノに短い返答を返し、気合いを入れ直した。
ーーーーーーーー
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
【ゴォォォォォー】・【ボタボタボタボタ】
「何?何?何?」
コンテナハウス内に轟音が響き渡ると同時に、ヤシナが飛び起きてきた。
耳栓をつけて寝られているルユ先生とチル先生は気にも止めずに寝続けられている。
「子供達が起きなければ良いですが……」
サリ先生が苦笑いしながら幼児や乳幼児達を見ている。
「外からの騒音には慣れてしまってるだろうから心配する必要もないさね。
まぁ……腹を空かせたり漏らしたりしたら起きてくるだろうから……
泣かさないように素早く対応する事に集中しな。」
ユバリス先生が外の様子を気にするでもなく溜息をつかれている。
「ヤシナ。
音は風と雪がコンテナハウスにぶつかってるだけだから気にせずに寝ときな。
ウイク。
外は気にせず、子供達の世話に集中しな。」
「はい。」×2
ユバリス先生の指示にアタシとウイクが素直に頷く。
「それにしても……凄い音ですね。」
「まぁね……
耳栓を渡してるでしょ?
それを付ければ少しは寝やすくなるわよ。」
「はい。」
サリ先生の指示にヤシナが素直に頷く。
「それにしても……
サモナブちゃんの腕は一級品だねぇ。
この状況でもコンテナハウス内の揺れに殆ど変化がない。」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。
まぁ……この中で、それが分かるのはルユとアタシぐらいのものかもね。
チナ達の商会のドライバー達が、サモナブちゃん並の腕があると信じたいところだねぇ。」
「サモナブちゃんって……
ヤシナやウイクと大して年が変わらいのにBランクの運び屋並の腕があるんですか?」
「あぁ。
才能。ってのは平等じゃないって事さね。
この乗り心地を基準にCクラス以下の運び屋を雇ったら……車酔いで地獄を見ることになるだろうねぇ。」
ユバリス先生が苦笑いしながらサリ先生に返答を返す。
『ケトにゃ。
間もにゃく崖の道に出るのでスピードを落とすにゃ。
前の車両に合わせてスピードを落とすだけでにゃく、横風に気をつけるにゃ。』
ケト姉からの無線が入る。
「壁が冷たくならなくようになっていて、空調を整える魔道具まで完備してくれているコンテナハウスとはいえ……
念の為、マジックボックス化しているキャリーバッグから毛布を取り出しておこうかね。」
「アタシが出しますよ。」
ユバリス先生の話を聞いたサリ先生は、そう言うと、少しだけ揺れるコンテナハウスの中でテキパキと動き始めた。
ーーーーーー
「才能。ってのは残酷だよなぁ……」
「急にどうした?」
コタマル君の呟きにレクが反応する。
「いやぁ……
コブドタ商会の子達って、既に特許商品にも関わってる新進気鋭の行商人だ。ってメデコさんから聞いた時から、姉さん(シズメール)は、『アタシは優秀な運び屋を目指す!』なんて言ってたんだけどさぁ……
前のトラックを運転してるサモナブちゃん。だっけ?
あれは……化け物だわ。
姉さん(シズメール)とは格が違うわ。」
「うっせぇわ!
何度か走ってる道とはいえ……
この悪天候の中、Bクラスの運び屋や行商人。冒険者等の一団に、Cクラスの行商人がトラックを走らせながら着いていけてる事を褒めろ!」
「確かに、それも一理ある。
荷やコンテナにはしっかりと結界を張ってるかは、事故さえしなければ、どんなに荒い運転をしても荷が崩れたりする心配は不要だぞ。」
「うっせぇなぁ……
ペラペラ喋ってると舌噛んで死ぬぞ。
アタシは、サモナブちゃんみたいな腕はねぇからな。
崖の道に入ったら、揺れに揺れるぞ。」
揶揄うように話すコタマル君にシズメール姉さんがイライラした顔をしながら返答を返す。
「オッケー。オッケー。
レク。イエム。姉さん(シズメール)に話しかけるのはやめようか。」
コタマル君が苦笑いしながら話す。
『ケトにゃ。
間もにゃく崖の道に出るのでスピードを落とすにゃ。
前の車両に合わせてスピードを落とすだけでにゃく、横風に気をつけるにゃ。』
ケト姉からの無線が入る。
「てっ。姉さん(シズメール)を揶揄ってる場合じゃなくなったな。
オイラは姉さん(シズメール)のフォローに入る。
チンセ。イザイ。
レクとイエムと一緒に周囲の警戒を頼むぞ。」
「バフ。」・「ニャア。」
真剣な顔に変わったコタマル君の指示に魔犬のチンセと魔猫のイザイが返答を返す。
「『結界』×3
姉さん(シズメール)。トラックの周りに結界を3重に張ったぞ。
それに……多少の傷ならば錬金術で直ぐに直してやる。
だから、姉さん(シズメール)。
スピードが出ていない限りは壁側にトラックをぶつける事は気にするな。
兎に角、崖下に落ちないようにしてくれよ。」
「任された。」
コタマル君の指示にシズメールさんが頷く。
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