【サイドストーリー】寒波の中の移動②
【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】
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【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】
ケト姉さんからの無線が入って10分が経過した頃、バスの座席の横にある窓ガラスから木々が擦れる音が聞こえてきた。
それと同時に窓の外を流れる景色のスピードが落ちた。
「バス。ってスゲーな!
夜の森の中でもバスの中の灯りのお陰で外の景色が、うっすらとだが見えるぜ!」
「通路に顔を出して見ろよ!
そしたら前の景色がバッチリ見えるぞ!」
「本当だ!」
「おぉ。雪が降ってきたぞ!
バスから出られないのが恨めしいぜ!」
「ゆっくり外を見ても誰にも怒られない。って最高だな!」
「だよなぁ!」×6
おバカさん達の大きな声が車内に響き渡る。
気持ちは分からんでもないが……
煩くしたらバスを運転してくれているウツスムさんの邪魔になるでしょうが。
◇◇◇
「ここから先は、寒波の襲来の影響で、想定していた以上の寒さの中の移動となります!
つきましては各々の横にある窓のシャッターを閉めて下さいまし!
それと……この森は夜になりますと幽霊が出ますので、通路に顔を出して前を見られるのは日が昇っている間だけにされる事をお勧めします!
また、ケトちゃんが言ってたように、ここから先は道が狭い上にガタガタ道です!
ですから、お手洗いに行かれる際は、転倒には十分、お気をつけて下さいませ!
もし、自信がなければ、エスコートしますので、お気軽にお声がけ下さいな!」
運転席の隣に設置された折りたたみ式の椅子(ガイド席)に、進行方向に背を向ける形で座っているミインさんが皆に呼びかける。
穏やかな口調で上品な物の言い方。
にも関わらず、ケト姉と同じく元がつくらしいが……テイヒィの姉御達と同じBランクの冒険者にまでなった人らしい。
運動神経の悪いアタシが、将来、人外地を飛び回るような仕事に就けない事は自分でも分かってはいる。
分かってはいるが……
せめて心根だけはミインさんのような素敵なレディーになりたいものだ。
◇◇◇
「うわぁぁぁ!
木の上に沢山の霊耐猿が居るぞぉぉぉ!
皆、シャッターを早く閉めろぉぉぉ!」
おバカさん達のリーダーのソウウゴが大きな声で叫ぶ。
「皆さん!
今のところ霊耐猿からは敵意を感じられません!
ですから、慌てずに、ゆっくりと……
だけど確実にシャッターを閉めて下さいまし!」
ミインさんの凜とした声が車内に響き渡るとザワついた空気が落ち着いていくのが感じられた。
「悪ぃ!
焦って変な事を言っちまった!
落ち着いて、ゆっくりと、けど確実にシャッターを閉めるぜ!」
ソウウゴがミインさんに大きな声で返答を返す。
「そう。その意気です!
偉いです!
お頼みしますね!」
「おぅ!任せとけ!」
ソウウゴが得意気な顔でミインさんに返答を返す。
ミインさんはソウウゴを上手く手のひらで転がしているな。
やっぱりミインさんは見習うべき事が沢山有る素敵なレディーだわ。
【ガラ・ガラ・ガラ】・【カチン】
アタシは出発前にミインさんに教えて貰った手順を思い出しながら、アタシの横の窓のシャッターを閉めた。
■■■
「皆様!
完璧なご対応、有難うございました!」
トイレの窓のシャッターを閉めに行った帰りに、皆の座席の横の窓がちゃんと閉まっているかの確認をしてくれたミインさんが満面の笑みを浮かべながら褒めてくれた。
「ルククお姉ちゃん。
手を握ってくれない?」
アタシの隣に座る、アタシがお世話を任された年少組のソモがモジモジとした顔でお願いをしてくる。
「シャッターも閉まったし、窓側の席と代わってあげようか?」
「バスの揺れが激しくなってきてるから危ないよ?
通路に顔を出さなかったら、お外は見えないから我慢するよ。」
ソモが真剣な顔でアタシを見る。
「偉いぞ。
じゃあ……ご褒美に手を繋いであげましょう。」
「有難う。」
ソモは満面の笑みを浮かべている。
■■■
『ケトにゃ。
後、30分程、走ったら隧道が連なる崖沿いの道に入るにゃ。
崖沿いの道は2台のトラックがすれ違っても少し余裕があるぐらいの広さのある道ににゃるが、
崖の壁側じゃ無い方からは強風が叩きつけて来る事があるから気をつけて運転するにゃ。
それも吹雪が酷ければ、途中で行軍をストップするつもりにゃ。
にゃから、ドライバーの皆の中に運転が厳しいと思う者が居れば直ぐに申告してくれにゃ。
後、隧道の周りは、幽霊の目撃情報が多数出てるにゃ。
ただ、そこまで力が強くにゃいらしいく、慌てて事故さえしにゃければ大丈夫にゃと言われてるにゃ。
にゃから幽霊を見かけても慌てずに落ち着いて行動をしてくれにゃ。』
時刻は23時。
ケト姉さんからの不安を煽るような無線通信がバスの中に響き渡る。
◇◇◇
「グゥゥー。ホヒュー。グゥゥー。」
「グゥゥー。ホヒュー。グゥゥー。」
「グゥゥー。ホヒュー。グゥゥー。」
ソモがアタシの手を握ったまま夢の中にいてくれているのはラッキーだわ。
通路を挟んで反対側の窓際に座る、アタシと同じ年少組のスカラデを任されているイクルと目が合った。
アタシと彼女は真剣な顔で頷き合って、
パニクったソモとスカラデが通路に飛び出さないようにするのがアタシ達の仕事だという事をお互いに確認し合う。
年少組のお世話を任されていて本当に良かった。
もし、やるべき事がなにも無ければ……恐怖で震えていただろうからね。
そして将来、チナ姉さん達のもとで貿易商人になる事を夢見ている気の強い姉御肌のイクルが同じ列に居てくれた事も救いだわ。
同じ仕事を任された仲間が視界の中に居るだけで心強いもんね。
『ケトにゃ。
間もにゃく崖の道に出るのでスピードを落とすにゃ。
前の車両に合わせてスピードを落とすだけでにゃく、横風に気をつけるにゃ。』
ケト姉からの無線が入る。
◇◇◇
「寒くなると思いますので毛布をお掛け下さいまし。」
ミインさんが通路を歩きながらヒソヒソ声で起きてる人達だけに話しかけ始めた。
そして、アタシのところにも来てくれたミインさんは、網棚から毛布を2つ取り出すと、1つをアタシに渡し、もう1つをソッとソモにかけてくれる。
揺れる車内の影響を受けずにテキパキと仕事をこなされるミインさんは、やっぱり素敵なレディーだわ。
「ミインさん。
アタシ達に出来る事はありますか?」
「貴女に面倒をお願いしております、お子様をしっかりと見て頂く事と、
我々、運行班が新しい指示を出した時には、その指示に従って行動して頂ければ有難いですね。
それ以外は、可能な限り、ゆっくりとくつろいでいて下さいまし。
いざという時の為に身体を休めておくのも大事なお仕事ですからね。」
「了解です。」
ミインさんの返答を聞いたイクルが真剣な顔で頷く。
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