合流(後編)
「ウツスムの妻のミインと申します。
チナさん。
皆様が持たれている食料や魔石等の在庫の共有、有難うございます。
頂いた情報から考えたのですが……
皆さんの持たれている食料はフーセの避暑街に着いた後で使用したいと考えております。
理由は、炊いた米に野菜や干し肉の入れたスープは栄養的な意味でも、身体を温める意味でも非常に素晴らしいですが……いかんせん調理に時間がかかりすぎます。
とはいえ……旅慣れていない、お年寄りや子供が大勢居る中で行軍食ばかりとはいかないのも分かります。
慣れない過酷な環境の中で、食事まで冷たく、味気ないのでは……正直、心が折れますものね。
ですから、米の部分を乾麺に変え、野菜も乾燥野菜に変える事で、チナ様達のお考えに大きな変更を出さずに調理時間を短縮したいと考え、
僭越ながら、フーセの避暑街への所要時間の倍の10日分の食料をお持ちしました。
調理の人手は借りたいですが、
食材や献立はは、こちらの考えに合わせて貰えたら有難いです。」
ミインさんが、穏やかな口調で話す。
「ご配慮、感謝します。
有難く、ミインさんのご提案を受け入れさせて頂きます。
勿論、人手は出しますし、アタシもお手伝いをさせて頂きます。
ですので、存分にこき使って下さいな。」
チナさんが笑顔で返答を返す。
「こき使うなど、滅相もない。
ただ、私達だけでは手に余る人数ですので、存分に頼らさせては頂きますね。」
ミインさんは、そう言うと深々と頭を下げた。
◇◇◇
「フーセの避暑街の周辺は真冬の間は深い雪に覆われるんだ。
今でこそ、クローラーを履いたトラックやピックアップトラック等がチラホラと移動をする事もあるが、乗り物が無かった頃は外界から閉ざされた陸の孤島となっていたんだ。
そういう経緯もあって、実はフトバル公爵領軍の輜重部隊が我々とは別ルートを使って、フーセの避暑街の周辺が真冬の間、完全に陸の孤島になっても我々が生き残れるようにと、食料や魔石。薪や衣料品や薬等の支援物資を運んでくれている。
なので、フーセの避暑街や、その周辺が日に日に雪で覆われていく事になるだろうが安心して過ごして欲しい。」
「事前の情報共有や、フトバル公爵様をはじめとした皆様の暖かい支援に感謝します。」
ドルオさんの話を聞いたユバリスさんが、そう言いながら深々と頭を下げた。
「ケトの家族はアタシ達の家族。
そして困った時はお互い様。
だからアタシ達への礼は不要ですよ。」
メデコさんが笑顔で話す。
「有り難うございます。」
ユバリスさんが、嬉しそうな顔をしながら、再度、頭を下げた。
◇◇◇
「コブドタ商会は、ギルドのフーセの避暑街出張所で行商人としての登録をし、見聞を広げる旅を続けるつもりなんだよね?
差し支えなければ今後の予定を聞かせてくれないかしら。」
「フーセの避暑街の周辺の村々から素材の買い取りをしたりしながら北を目指そうと思ってる。」
メデコさんの質問にゼロヒト君が笑顔で答える。
「北を目指すのね。
だったら、フトバル公爵様が出しているハツイロ砦で働いている人達宛の、彼等の家族や恋人。友人等からの手紙や荷物を届ける仕事を引き受けてみない?」
「こっちとしては有難い話だが……見も知らずの俺達に頼んでも良い仕事なのかい?」
ゼロヒト君が不思議そうな顔をしながらメデコさんに質問をする。
「えぇ。
知ってるかもしれないけど……
あそこはメジコ族との領土の境界線になるんだけど、過去に何度か小競り合いがあった場所なの。
それで相手を刺激しないように武器や食料。魔石や装備品等の補充の品や、
ハツイロ砦で働く者達の家族や恋人。友人等からの手紙や荷物等を届けるのは、
軍の輜重部隊や傭兵団ではなく、民間の行商人や運び屋が行う事になってるのよ。
だけど……今回は、毎年、その仕事を何時も受けていた商会の幾つかが、モンスター氾濫への援軍として派遣されたフトバル公爵領軍の第三騎士団に従軍してるの。
そして、ハツイロ砦への輸送は、基本、フトバル公爵様が決まった商会にしか発注しない為、単発の仕事になるんだけど……
それなりの腕がある者は単発の仕事を引き受けるのを嫌がるのよ。
然りとて、単発でも気軽に仕事を引き受けてくれる腕があまり無い者には辿り着くのが難しい辺鄙な場所になるので頼む事も出来ない。
ハツイロ砦への武器や食料。魔石や装備品等の補充の品は、フトバル公爵様の私兵や使用人も投入して何とかやり繰りが出来たらしいんだけど……
ハツイロ砦で働く者達の家族や恋人。友人等からの手紙や荷物等までは人手が足りてなくて運べてないらしいのよ。
そこでフトバル公爵様は、フーセの避暑街の周辺で素材等の売買をしている行商人や冒険者に声をかけようと、私達の支援物資と一緒にフーセの避暑街に持っていっているらしいのよね。
でっ。この話を貴方達に振ってみたの。
正直、コネがあれば素材等の売買の方が儲かると思うわ。
だけど……コネが無い貴方達が素材等の売買に参入するのは正直な話、古参の行商人や冒険者等との軋轢なんてのも加味すれば、あまりお薦めする事は出来ないと思うの。
最終判断は出発の1時間前までに欲しい。
1秒でも長く休息を取りたい気持ちは分かってるけど……
よろしく頼むわね。」
メデコさんが真剣な顔で僕達を見てる。
◇◇◇
「判断は、オーナーであるパパと、リーダー(ゼロヒト)に任せるわ。」
「ウチも姉さんと同じや。」
嫁とヨロズコちゃんは、僕とゼロヒト君に、メデコさんの提案を受けるか否かの判断を任せてくれるようだ。
「兄さん。
現場責任者としては、状況が許すならば、得られる利益が安くなっても可能な限り安心安全な商売をしたい。
だから、俺はメデコさんの提案を受け入れた方が良いと思うんだが……
兄さんは、どう思う?」
「僕も賛成だね。
降りかかる火の粉は払うしかないけれど……
軋轢を回避する事が出来るのならば、それに越した事は無いもんね。」
「分かった。
メデコさん。フトバル公爵様からの仕事を受けさせて貰うよ。」
僕の返答を聞いたゼロヒト君が頭を下げる。
「シラトラ。
この村のギルドの出張所に戻り、
コブドタ商会がハツイロ砦で働く者達の家族や恋人。友人等からの手紙や荷物等を運ぶ依頼を受けてくれるという旨の電報をフトバル公爵様宛で打って貰えるように頼んできて欲しい。」
「畏まりました。」
メデコさんからシラトラと呼ばれていた女騎士って感じの気が強そうな綺麗なお姉さんが、メデコさんに返答を返すと、アウナガ村の出入口となる跳ね上げ橋の方へ走って行った。
◇◇◇
「後は隊列の順番ですかね。
俺としては全員の力量を把握しているケトさんに仮の順番を決めて欲しいですね。」
ウツスムさんが、そう言いながら皆を見る。
「分かったにゃ。
先導は、アタシとチナミン商会のバスコとダガマ。
その後ろを、ケラの親父っさん達のピックアップ トラック、チナ達のトラック、ウツスムさん達のバス、コブドタ商会のトラック、シズメール達のトラック、ロン達のトラック、テイヒィ団の2台のピックアップトラックの順番が良いと思うにゃ。
それと……最後尾のピックアップトラックの荷台には、ズカワと従魔のクシュバと、イナノと従魔のヨタリが乗り込み、後方の索敵に専念した方が良いにゃろうね。
後、最後尾のピックアップトラック以外の2台のピックアップトラックの挙動を安定させる為に、何か荷を積んだ方が良いにゃろうね。
ミインさん。アタシも同行するので、
ケラの親父っさん達とテイヒィ団を村に連れて行ってくれないかにゃ。
にゃにか、乗せられる荷を探すにゃ。」
ケトさんが淡々とした口調で私見を話してくれる。
「それならば酒樽と茶葉の入った木箱。
タバコ葉と巻紙の入った木箱等の嗜好品がお薦めですね。
そういった物は優先順位が低いので、フトバル公爵領軍の輜重部隊の支援物資をあわせても心許ない量しか用意する事が出来なかったのです。」
ミインさんが嬉しそうな顔で話す。
「チナ。ミン。テイヒィ。
ケトの案で問題無ければ、ケト達と買い出しに行きたいんだが……」
ケラさんがソワソワした顔で話す。
「はぁ……父さん(ケラ)は……
まぁ……ケト姉の案に異論は無いわ。」
「そっか。
それじゃあ……直ぐに買い出しに行かないとな。」
チナさんの話を聞いたケラさんが満面の笑みを浮かべる。
「ケト。
支払いの時は【ドルオ&メデコ商会】につけるように言うんだよ。」
「お義母様、了解したにゃ。
有り難うにゃ。」
ケトさんはメデコさんに満面の笑みを浮かべて返答を返すと、深々と頭を下げた。
評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。
頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。
宜しくお願いします。




