悩み事とギルドへの推薦状 / 悩み事とガイアの配慮
「フーセの避暑街かぁ……
意外と良い場所に行けるみたいだな。」
ノートパソコンを弄っていたゼロヒト君がニヤリと笑いながら呟いた。
「どないしはったんや?」
ヨロズコちゃんが興味津々な顔で質問をする。
「フーセの避暑街の周辺を拠点にしている冒険者の中で、街と警備と引き換えに、春になるまでの間、ただで宿泊させて貰えるのは、Cランク以上の冒険者や彼等に帯同している運び屋や、その家族のみになるらしいんだ。
でっ。それ以外の冒険者は、極寒の森の中に丸太小屋を作ったり、テントを張ったり、
周辺の村で警備と引き換えに、春になるまでの間、村長宅や集会所等に、ただで泊めて貰う等をして冬を越すらしいんだよ。
そして、極寒の森の中に丸太小屋を作ったり、テントを張ったりしながら生活をしている冒険者達は、
採取したモンスターや動物の肉。薬草や薪等を村に持って行き、穀物や衣服と交換したりするらしいんだけど……
ここで問題になるのが、モンスターや動物の牙や角。骨や皮等といった食べられらない部分らしいんだ。
冬以外の季節は、そういう素材を定期的に買い取りに来る行商人が、それなりに居るらしく素材の保管場所に困る事はないらしいんだが……冬場は、あまり来ないらしい。
また、そういう状況だから、買い取りに来た行商人達も足元を見て、適正価格よりも大幅に低い買い取り金額を提示し足りもするらしい。
因みに、俺が、何故、そんな事を知ってるかと言うと、
ギルドのフトバル公爵領支店が、行商人達に、
たとえ、冬場であっても、フーセの避暑街の周辺の村々へ素材を買い取りに行く際は、あまりにも適正価格よりも低い金額での素材の買い取りは、ギルドの登録者。ギルドの非登録者に関わらず、自重して欲しい。という声明を出しているんだよ。
ここから分かる事は、
たとえ、ギルドに登録してなくても、金さえ持っていれば、素材の売買に関われる。つう可能性が高い。って事だ。」
ゼロヒト君が嬉しそうな顔で話す。
「なんで、
『ギルドに登録してなくても、金さえ持っていれば、素材の売買に関われる。つう可能性が高い。って事だ。』
なんて言い方をしはるん?
今の話を聞く限り、完璧に関われはるとちゃうん。」
「ギルドに登録するメリットの中に、
商売相手にギルドに信頼を担保された信頼の置ける者だ。って思わせたり、
バックにギルドが付いているので無茶は出来ない。って思わせたりする効果があるんだよ。
それに対して、俺達は……
ギルドに所属していない、何処の馬の骨とも分からねぇ若造だ。
しかも、モンスター氾濫が起こってる地域からの疎開の許可書や、それに準ずる許可を得てない者の移動の制限も出ている。
そんな状況で、そもそも、村に入れて貰えない可能性もあるし、
足元を見られて、素材を高く買わそうとされる可能性も0ではない。」
ヨロズコちゃんの疑問に、ゼロヒト君が苦笑いしながら答える。
「成る程ねぇ……
やっぱり、何処かでギルドに登録しないとマズそうだよね……」
「そうだな。
かといって、1年の研修期間は……
時間が惜しいのもあるが、
特に姉さんとヨロズコが、研修期間の間、一緒に行動する奴達に、チートな能力を隠し続けるのも難しそうだもんな……」
「サモナブもヨロズコも大義の為に、助けようと思えば助けられる近しい者を見殺しにするような事は出来ぬじゃろうからな。」
僕とゼロヒト君の会話にウミミナちゃんが加わってくる。
「この際、Cランクなんて言わねぇから、せめて……
研修期間をすっ飛ばして、Eランクからスタートさせて欲しいよな……」
「ホンマやね。」・「だよね……」
ヨロズコちゃんと嫁が、ゼロヒト君の言葉に頷く。
■■■
『こちらチナ。
そうそう、忘れるところだった。
アウナガ村からフーセの避暑街まで滞りなくお母さん(ユバリス)達を運んでくれたら、
ケト達のご両親や、アタシ達の村(ニンスキ村)への移住希望者のご夫婦が、ギルドへの推薦状を書いてくれる事になってるの。
それにね。
ミンボンの温泉街のアラカオ工房もCランクの商人としての推薦状を書いてくれているわ。
それでね。
貴女達と、ここまで旅をした者としては、
過小評価になりすぎて、かなり心苦しい部分もあるんだけど……
ギルドのフーセの避暑街出張所で、Dランクの行商人としてならばギルドへの登録が可能みたいなのよね……
でっ。申し訳ないのだけど……
この話を進めて良いか否か、アウナガ村に着くまでに返答を欲しいのよ。』
「状況が状況だし、
研修期間をすっ飛ばして、即戦力として仕事を受ける事が出来るなら、この際、登録時のギルドのランクはどうでも良い。
その話を進めて貰えたら有難い。」
『了解。
貴女達ならば直ぐにランクを上げられると思うわ。』
ゼロヒト君の返答を聞いたチナさんの嬉しそうな声が無線機から聞こえてくる。
時刻は3時。
僕達の悩み事は1時間もしない間に、思わぬ形で解決した。
◇◇◇
「アッサリと悩みが解決したわね。」
「せやな。」
嫁の言葉にヨロズコちゃんが頷く。
「何はともあれ、これで北上しやすくなったな。」
ゼロヒト君がホッとした顔をする。
「ところで……
フーセの避暑街や、その付近の村々は、ここよりも寒いの?」
「あぁ。
夜は-20度近くまで気温が下がるみたいだよ。」
「マジで。」×2
ゼロヒト君の僕の質問への返答を聞いた嫁とヨロズコちゃんが苦い顔をしている。
「コブとドタにルーフテントの周りに結界を張って貰って、寝袋にくるまれば何とかなるとは思うんだけど……
ダメなら何か対策を考えないといけねぇな。」
「夜中のトイレが心配やね。
寝る時はオムツをした方が良えかもしやんね。」
「そうね。
恥ずかしいけど……背に腹は代えられないわね。」
ヨロズコちゃんの言葉に嫁が頷く。
「フーセの避暑街よりも、更に北上したら……
もっと寒くなるの?」
「最北端の冬場のナヤクラース連邦の領内には、もっと寒い場所もあるらしいが、
それ以外の場所は、フーセの避暑街と同じぐらいまで寒くなるところはあっても、それ以上、寒くなるような場所はなさそうだ。」
「成る程ね。
じゃあ……寒さ対策はフーセの避暑街の周辺で、ある程度、終わらせられそうだね。
それじゃあ……それと平行して欠片のありそうな場所の当たりをつける作業と、
見落としが有る可能性に備えてサモナブちゃんには引き続き、こまめにマーキングを続けて貰わないといけなさそうだね。」
「だな。
取り敢えず、ウミミナちゃんと出会った、ゾンビが発生したり、モンスター氾濫が起こる可能性が示唆されている場所から探してみるか。」
ゼロヒト君が探す場所を提案してくれる。
「そうだね。
後は……どのタイミングで見つけた欠片を解放するかだよね……
見つけ次第、随時、解放したら敵の警備が厳重になっていくだろうし、
欠片達を引き連れて旅を続ければ……だんだんと目立つ一団になってしまう。
だからといって、後で解放しようと放置している間に、別の誰かが所有者になっちゃっても困る。」
「それなのじゃが……
欠片の解放をガイアが手伝うてくれるらしく、
妾が他の欠片と半径100キロ圏内の場所まで近づけば欠片を解放する事が出来るようになったのじゃ。
そして、相方の一番高い等分の欠片は解放され次第、妾の側に自動的に召喚されるらしいのじゃが、
それ以外の欠片はガイアの傍ら。
具体的に言えばガイアの居る狭間の世界に自動的に召喚されるらしいので、
他の欠片に所有者が居らぬ限り、当初の予定通り、新たに旅の仲間に加わるのは相方の一番高い等分の欠片のみの予定となる予定じゃ。」
ウミミナちゃんが嬉しそうな顔で情報を共有してくれる。
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