休息 / 目的地の変更と新たな旅の仲間
「次の出発時間の1時までゆっくりしますか。」
嫁が笑顔で話す。
時刻は14時。
僕達はヤスマタ村の低い街壁の中にある集会所の横に併設された広場の中に居る。
ヤスマタの村は村以上町未満って感じの村らしい。
具体的に言うと運び屋や隊商等が旅の途中で宿泊や補給をするらしく、
平均的な村よりも、宿屋・食堂・食糧品店・薬屋・雑貨屋・魔石屋等の質がかなり高いらしいが、
平均的な村と同様、
修理専門の店はあるものの、武器屋・車屋・服屋・道具屋・魔道具屋等は存在しないらしい。
因みに、武器・乗り物・服や鞄や靴等の衣料品・道具や魔道具等、村に売っていない物の購入が必要な時は、
ギルドの営業所や出張所を通して行商人に連絡して売りに来て貰うか、
町に行く用事のある人に買って来て貰うように頼むか、
町に用事のある人に着いて行く。もしくは冒険者を雇い町に連れて行って貰う等になるらしい。
尚、行商人を呼んだ場合、
商品の値段に彼等の交通費や危険手当等が加算される為、値段が割高になるし、
デザイン等を含めれば、必ずしも、自分が想像していた物を買い付けて来てくれている保証はない。
町に行く用事のある人に頼んでも、スケジュールや荷物の量等の兼ね合い等の関係で、必ずしもオッケーを貰えるか分からない。
町に行ったとしても、お目当ての商品が売っている店の場所が分からなければ買えないし、
自ら冒険者等を雇った場合、諸経費を含めれば、行商人を呼ぶよりも更に金額がかかる。
等々、一長一短らしく、人生の一大イベントと言うのは流石に言い過ぎだとは思うが……一大決心がいる大きな買い物になるらしい。
◇◇◇
「ミンボンの温泉街みたいに宿屋に泊まれるって思ってたのに……」
ヨロズコちゃんがタメ息をついている。
「気持ちは分からんでもないが、
あちこちから来た援軍や支援物資を運ぶ人達でごった返しているんだ。
貴族や軍のお偉いさん。高ランクの登録者等、一部のセレブ以外は、町の外で野営している状況で、村の中に入れて貰えただけでも良しとしないといけねぇと思うぞ。」
「せやね。」
ゼロヒト君に嗜められたヨロズコちゃんは不満そうな顔をしながらも頷いている。
「そうそう。
久しぶりに、味気ない乾パンと干し肉とドライフルーツじゃなくて、
チナさん達が作ってくれた、炊いた米に野菜や干し肉の入れたスープが食べられただけでも良しとしなきゃ。」
「せやな。
気持ち切り替えるわ。」
ヨロズコちゃんが、そう言うと、自分の頬っぺたを叩いて気持ちを切り替えていた。
◇◇◇
僕達はトラックのコンテナハウスの上に設置しているルーフテントの中で休息を取っている。
そして、ユバリスさん達は、コンテナハウスの中で休息を取っている。
チナさん達は、自分達のトラックのコンテナやピックアップトラックの幌の上に設置しているルーフテントの中で休息を取っていて、
テイヒィちゃん達は、自分達のピックアップ トラックの幌の上に設置されたルーフテントの中で休息を取っている。
そして、その他の人達は集会所の中に寝袋を持ち込んで雑魚寝している。
因みに、集会所には僕達以外の人は居ない。
集会所を貸し切り状態にしてくれたのは、
宿屋の部屋が貴族や軍のお偉いさん。高ランクの登録者の人達等で埋まっていた為、泊まれなかった僕達へのヤスマタ村の村長さんのせめてもの配慮らしい。
「この先も長い。
見張りは俺とウミミナちゃんに任せて、皆、寝ておいてくれ。」
「了解。」×6
僕達はゼロヒト君の提案に頷く。
■■■
『こちらチナ。
フトバル公爵様から連絡があったのだけど……
アタシ達の目指す目的地がフトバル公爵領の領都から、フーセの避暑街に変更になったわ。
フーセの避暑街は、セレブな人達や小金持ち達が夏の暑さを避けて涼しく過ごすために訪れる場所なので、冬場は死ぬ程、寒いらしく、
住み込みで働いている数十名の管理人達と、その一家と、
管理人の護衛を兼ねて、その辺りを拠点にしている冒険者が、春になるまでの間、ただで宿泊しているぐらいで、
他には誰も居ないらしいのだけど……
この村やミンボンの温泉街のような、しっかりとした街壁もあり、今まで街が、盗賊やモンスターから襲撃されるような事はなかったらしいの。
だけど、夏場は沢山の宿泊客が来る為、寝泊まりする場所だけは沢山あるらしく、
疎開の許可は降りているとはいえ、亜人も多く、大人数で目立つアタシ達が、
状況が落ち着いて村(ニンスキ村)に帰れるようになるまで静かに暮らすには、打ってつけの場所だとフトバル公爵様は考えられたらしいわ。
それと、ケト達のご両親が、
フトバル公爵様のご指示とはいえ、街の中でのアタシ達の待遇を心配して、
仕事を従業員の人達に任せて、2人の護衛 兼 秘書と一緒に、アタシ達に同行してくれる事になったわ。
因みに、ケト達のご両親との待ち合わせ場所は、アウナガの村。
そこには、ケトのご両親だけでなく、
フトバル公爵様がご手配された、冬の間のアタシ達の食糧等を運んでくれるニンスキ村への移住希望者の一家も一緒に居るらしいわ。』
チナさんが淡々とした口調で目的地の変更を告げる。
『そうそう。コブドタ商会の皆さん。
本音を言えば、このまま、正式にチナミン商会に入って欲しいところではあるし、そうしてくれるのならば大歓迎だけど……
貴女達が、それを良しとしないのであれば、フーセの避暑街までは是が非でも同行をお願いしたいところではあるけれど……
その後は延長依頼は自重させて貰うわ。』
チナさんが淡々とした口調で僕達に意見を求めてくる。
「乗りかかった船だ。
フーセの避暑街までは、このまま同行させて貰う。
ただ、その後は……
商売をしながら見聞を広げる旅を再開させて貰いたいと思ってる。」
ゼロヒト君が僕達を代表してチナさんの問いかけに答える。
『そう。
残念だけど仕方がないわね。
後、少し、宜しくね。』
チナさんが少しだけ寂しそうな声で、僕達の答えを受け入れてくれた。
『てっ。事だから、
バスコ。ダガマ。アウナガの村へ向かうわよ。
先導、宜しく。』
『了解。出るわよ。』
「了解。」・『了解。』×10
嫁を含むドライバー達と荷台のリーダー達が、バスコさんの指示に短い返答を返す。
◇◇◇
『こちらチナ。
フトバル公爵様が、
荷台にコンテナハウスが乗せられたトラックを1台、寄付してくれたの。
それと……先刻は言わなかったけど、
ニンスキ村への移住希望者の一家の乗り物が、その一家の家財道具等を載せたトラックが1台とは別に、
アタシ達を乗せる為のバスが1台を用意してくれているらしいのよ。
それで、その……』
「アウナガ村からフーセの避暑街まで荷台に乗せるのは、ユバリスさん達でなく、水や食糧等にして欲しい。って事かい?
それならば、全然、問題ねぇぞ。」
ゼロヒト君が言い難そうに話すチナさんに穏やかな声で話す。
『寄付して頂いたトラックの荷台がコンテナハウスなのは、ニンスキ村への帰り道を考慮しての事。
合流した時点で食糧や魔石等の物資を満載にして来てくれるらしいから、フーセの避暑街まで、引き続き、お母さん(ユバリス)達を頼みたいわ。』
「了解。
じゃあ……何を気にしてるんだい?」
『アウナガ村で借りていたピックアップ トラックを返させて貰いたいの。
勿論、小瓶への封印はアタシ達がするし、
不服ならば、賃料だけはフーセの避暑街までピックアップトラックを借りた金額にするわ。』
チナさんが申し訳なさそうな声で話す。
「ピックアップトラックの封印は俺達がするし、
ピックアップトラックの賃料はアウナガ村までの金額で良いよ。
それよりも……避暑街。つうぐらいだから、冬場は滅茶苦茶、寒いんだろ?
特に、お年寄りや年少の子供達とかに、これ以上、過酷な環境での旅を続けさせるのは流石に可哀想だ。
バスが手に入って良かったじゃん。」
「せやせや。
折角、モンスター氾濫から逃げ切れはったのに……
逃げた先で凍死しはるとか、そんなしょうもない事にならなさそうで良かったやん。」
ゼロヒト君の言葉にヨロズコちゃんが頷いている。
『そう言って貰えると助かるわ。
年寄りと年少の子供達をバスに乗せて、
年長の子供達をトラックの乗車スペースの空いてる場所に乗せれば、アウナガ村からフーセの避暑街まで、全員がエアコンの恩恵を受けられる環境での移動が出来る。
正直な話、行く先を考えると、ホッとしてるし、
貴女達や、フトバル公爵様。ケト姉達のご両親には感謝してもしきれないわ。』
チナさんが嬉しそうに話す。
「そう言って貰えると嬉しいわ。
誰一人、欠ける事なくフーセの避暑街まで辿り着けきましょうね。」
『えぇ。』
嫁の言葉にチナさんが深く頷く。
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