モンスター氾濫④(疑惑編(後編)/途中下車編)
「チルさん。カッケー。」
「言えてる。
モンスター氾濫が起こった。ちゅうラジオ放送よりも、よっぽど驚いたわ。」
「確かに。」
嫁とヨロズコちゃんが盛り上がっている。
「ロンさんは別として他の人はどうだろう。
姉さんやヨロズコが、そう思うのは、俺達が既にモンスター氾濫が起こってるのを知っていたからかもしれんぞ。」
「確かに。」
ゼロヒト君のツッコミにウミミナちゃんが頷く。
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
【タン・タン・タン】・【タン・タン・タン】
魔力弾のライフルを撃つ音が聞こえる。
ラジオ放送を聞いたガチイさん達が草食系モンスターの群れを見つけ次第、魔力弾のライフルを撃ち込んでいるのだろうか。
「良い判断ね。
金眼に成りかけてる奴が居るもんね。」
「だな。
このまま間引き続けて欲しいもんだな。
こんな近くでモンスター氾濫が起きたら……
クルサル達が居るとはいえ流石に嫌だもんな。」
そんなガチイさん達の行動を、コブとドタは誉めている。
てか、今……サラッと怖い事を言ってたよな。
◇◇◇
ラジオ放送から流れてきた内容は、
ミンボン山脈の樹海の中央部や外縁部でモンスター氾濫が起こった事と、
ミンボン山脈の樹海の周辺の平原の町や村の冒険者達へ、魔法でも剣でも銃でも柵でも落とし穴でも良いから、兎に角、草食系モンスターの足を止めさせろ。
という指示だった。
また、キトナガエ帝国軍や、その他の該当する地域の軍隊もギルドの指示に従って共闘する。
また、この作戦の有用性はオピオタウロスの荷車が過去に指揮したモンスター氾濫への対応で実証済み。
だから疑問を持たず、作業に専念して欲しい。との事だった。
◇◇◇
「兄さん。
オピオタウロスの荷車の対応をどう思う?
俺は……兄さんが仕掛けた、ウミミナちゃんが他の欠片の自我まで吸収しない事への返答のような気がするんだよ。
まぁ……ニムンシュ達の手間、
流石に、避難民を複数の村々へ点在させるように誘導する等の対応までは取れなかったんだろうが……
それでも、ウミミナちゃんの命を狙うよりも、多くの人を救うように誘導し始めたのは、やっぱ、兄さんへの返答のような気がしてならないんだ。」
「どうだろうね。
だとしたら、目的の為ならば手段を選ばない人達だ。
そして、彼等は仲間ではない。
だから……今は彼等を信じすぎるべきではない。
何故なら、彼等と僕達の間で相容れない事が出てきたら……また、命を狙ってくる筈だから。」
「パパが言うと説得力があるわ。」
「せやな。」・「じゃな。」
僕とゼロヒト君のやり取りに嫁・ヨロズコちゃん・ウミミナちゃんが加わってくる。
てか……酷い言われようだな。
だけど……反論も出来ない気もするな……
「酷い言われようだな。
けど……今回のオピオタウロスの荷車の対応が兄さんの予想通りだったとしても、
兄さんは、そこまでの事はしない。てか……出来ない。」
「ゼロヒト君は、パパを買いかぶりすぎよ。」
嫁が苦笑いしながら話す。
「姉さんやヨロズコが止めるだろ?
そしたら兄さんは、俺達と一緒に別の方法を探し出さざる得なくなる。」
「せやな。
クルサルさんは姉さんの言う事には従いはるもんな。」
ゼロヒト君の言葉にヨロズコちゃんが頷く。
◇◇◇
「後、夢の無い話だけど……
キトナガエ帝国は、この辺りの地域を治めるニンムシュの拠点らしいじゃん。
だから……ただ単純に、ニンムシュの意向で、ウミミナちゃんの命よりもキトナガエ帝国への被害を減らす事を優先させた可能性もあるよ。」
「確かに、その可能性もあるな。」
「はぁ……ホンマ、見も蓋もあらへん話をしはるな。」
ゼロヒト君とヨロズコちゃんが苦笑いしながら話す。
「オピオタウロスの荷車がウミミナちゃんとは別のアマトティちゃんの欠片を所有してなければ、パパの言う通りかもね。」
「言われてみれば、その通りだな。
オピオタウロスの荷車がウミミナちゃんとは別のアマトティちゃんの欠片を所有してるか否かの確認は出来てねぇもんな。」
嫁の言葉に、ゼロヒト君がハッとした顔で頷く。
■■■
『ガチイだ。
ケントウ。悪いが休暇は取り消しだ。
その詫びとして、お前の嫁さんと子供達をフトバル公爵領の領都に安全に行く為に、西都を素通りして、ヤスマタの村で補給が出来るようにギルドのアタルトイ支部が便宜を図ってくれている。
尚、この決定は、お前さんのご両親やフトバル公爵様も渋々だが了承してくれているらしい。
俺は、お前だけでなく、部下を誰一人、死なせるつもりはねぇが、こればっかりは約束も出来ねぇ。
すまないが、この騒動を終わらせる為に働いてくれ。』
『了解しました。』
ガチイさんの言葉にケントウさんが返答を返す。
『ケントウ。
子供達や義父様やお義母様の事はアタシに任せるにゃ。
あんたは、皆と仕事を完遂させる事と、皆と生き残る事に専念するにゃ。』
『すまない。有り難う。』
ケントウさんは、ケトさんに申し訳なさそうに返答を返す。
『ケトさん。感謝する。』
『今度、砦を訪れた時に宴会を開いてくれたら、それでチャラにするにゃ。』
お礼を言うガチイさんにケトさんが明るい声で話す。
『おい。ケト。』
『ガハハハハ。
気にするなケントウ。
ケトさん。砦を訪れてくれた際は、砦の皆で歓迎の宴を開かせて貰う。
そう言う事だから、皆、死ぬ事は許されんぞ。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
『了解。』・『了解。』・『了解。』・『了解。』
ガチイさんの部下達の返答が無線機から次々と聞こえてくる。
『楽しみにしてるにゃ。』
ケトさんの明るい声が無線機から聞こえてくる。
◇◇◇
「ケトさんの声から強い不安の感情の色が見える。
それなのに……強い人だな。」
ゼロヒト君がボソッと呟く。
「そうだね。
だけど……ケントウさんの仕事が仕事だから……
こうなる事を予想していたのかもね。」
「だとしても凄い。
わたしなら心配と不安で暴言を吐いちゃうと思う。」
「せやな。」
嫁とヨロズコちゃんが、僕とゼロヒト君の会話に加わってくる。
「主達には分からぬ感覚じゃとは思うが……
フトバル公爵が了承した時点で、領民であるケントウに命令を拒否する権利はない。
故にケトは、喧嘩になるような、心残りが出るような別れにならぬようにしたのじゃろうな。」
ウミミナちゃんが会話に加わってくる。
■■■
『ガチイだ。
これから30分の休憩に入る。
これが西都までの最後の休憩になる事を念頭において、しっかりと身体を休めてくれ。
ケントウはケトさん達との別れを済ませたら、バスに乗り込んでくれ。』
『畏まりました。』
ガチイさんの指示にケントウさんが頷く。
『ユバリス殿達は、20分以内に、ここを出発してくれ。』
『分かった。
ケントウ達に別れの時間を設けてくれた配慮、感謝する。』
『おう。
これぐらいしかしてやれねぇからな。』
ガチイさんの申し訳なさそうな声が無線機から聞こえてくる。
時刻は7時。
外が明るくなり遠くまで肉眼で見えるようになった。
遠くに巨大な街壁が見える。
あれがキトナガエ帝国の西都らしい。
遠くからとはいえ、【空の目】で確認していたとはいえ、
僕の想像を遙かに超える巨大な町のように思えた。
しかも、あの町は今も発展を続けているらしい。
「パパがステルス作戦に拘る意味が、改めて分かったわ。」
嫁が、僕達側からの無線通信が切れているのを確認しながらボソッと呟いた。
「せやな。」・「だな。」
ヨロズコちゃんとゼロヒト君が嫁の言葉に静かに頷く。
「普通は諦めるか、まずは地盤を固めようと考えるところなのじゃろうがのう……」
「かもね。
それよりも、サモナブちゃん。
これから先も、ミンボン山脈の樹海みたいに【空の目】からじゃ見えなさそうな場所を見つけたら、余裕があればマーキングしといてね。」
「了解。任された。」
嫁がドヤ顔で頷いてくれる。
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