モンスター氾濫③(疑惑編(中編))
「ごめん。
字を変えるとしたらウミミナ・アマトティ。一択ね。
アマトティ・ウミミナはなんか嫌。」
「せやな。」
会話に加わって来た嫁の言葉にヨロズコちゃんが頷く。
「理由は?」
「なんとなく。」×2
嫁とヨロズコちゃんが同時に答える。
「ブフ。
分かった。字を変えるとしたらウミミナ・アマトティとしよう。」
緊張した顔をしていたウミミナちゃんが大笑いする。
「して、クルサル。
妾に字を変えるように言った理由を教えてくれぬか?」
「俺も知りたい。
この状況で兄さんが意味もなく不必要な話をするとは思えないからな。」
ウミミナちゃんとゼロヒト君が興味津々な顔で僕を見ている。
◇◇◇
「今回のモンスター氾濫への対策の実際の指揮を【オピオタウロスの荷車】が取ってると仮定した場合……
【オピオタウロスの荷車】は、あの森や、その周辺の住人の命よりも、ウミミナちゃんの抹殺や捕獲を優先しているように感じた。
理由はモンスター氾濫が起こった場合、一番、被害が大きいであろう街道に誘導するような放送をギルドにラジオで流させたり、
避難民が集まる場所を限定する事で、ウミミナちゃんの捜索を効率良くやろうとしている気がしたからだ。
でっ。もし、今も、30年前と同様、【オピオタウロスの荷車】は、 ニンムシュをはじめとする、この世界の最高権力者の中で、ガイアから唯一、害悪に認定されておらぬ為、この世界が開いても問題が無い人達だと過程した場合……
彼等が、ウミミナちゃんを敵視する理由を考えてみたんだ。
そこで思いついたのが、【オピオタウロスの荷車】はウミミナちゃん以外のアマトティちゃんの欠片を保護している。
そんでもって、彼女が、いずれ、ウミミナちゃんに吸収されてしまう運命を変えたいと願っている。
まぁ……あくまでも仮定の1つだし、理論的というよりかは直勘に近い暴論かもしれないけど……
考えられる可能性は、1つでも潰しておいた方が良い気がしただけだよ。」
「たとえ、【オピオタウロスの荷車】が、妾以外のアマトティの欠片を所有しておったとして、たったそれだけの理由で、そこまでするかのう……」
ウミミナちゃんがジト目で僕を見る。
◇◇◇
「関係の無い人達を殺してまで、ウミミナちゃんの欠片を、どうこうしようとしてるとしたら……それは違うとは思う。
けれど、もし、ウミミナちゃんが吸収される側だったならば、どんな手を使ってでも吸収する側と接触をしようと頑張るわね。
そんでもって、もし、吸収する側がウミミナちゃんに字を与えるのを拒んだ場合……
仕方がないから、その欠片を殺す方法を本気で考えるわね。」
「せやな。
ウチも友達をむざむざと殺させるような真似はしやんよ。」
僕の話を聞いた嫁とヨロズコちゃんが真剣な声で話す。
「俺も皆の意見に賛成だな。
だからこそ、兄さんは、他の欠片を吸収する立ち位置のウミミナちゃんが狙われないように出来ないか。って考えたんだな。」
「うん。」
僕はゼロヒト君の質問に静かに頷く。
「有難う。
早速、妾の字をウミミナ・アマトティに変えさせて貰う。」
ウミミナちゃんが目に涙を浮かべながら話す。
◇◇◇
「ガイアが、
妾が他の欠片から管理者の権限のみを吸収する為に、字を変えた事を、全てのアマトティとプスアーの欠片達に伝えおった。
そして、プスアーの欠片の中で一番、等分の多い欠片へ、アワウズ・プスアーに字を変えて欲しいと打診し、
プスアーの欠片の中で一番、等分の多い欠片が字を変えおった。
後、ガイアは、妾だけに、妾とプスアーの欠片の中で、妾以外に解放されておるのは、アマトティの欠片が1人だけ居ると教えてくれた。
そんでもって、他の欠片の居場所までは教えられないが、新たに解放された欠片が出次第、随時、その情報をくれると申してくれた。
ガイアというよりか……星の意思は、
星の崩壊に関わる案件でない限り、管理者を含めた、その星の生きとし生けるものへの干渉は厳しく制限されておる。
じゃから、これが……現時点で、ガイアが、妾達へ干渉する事が出来るギリギリのラインじゃとも思う。」
ウミミナちゃんが真剣な顔で話す。
◇◇◇
「その欠片が【オピオタウロスの荷車】と行動を共にしてはって、
モンスター氾濫のどさくさに紛れて、ウミミナちゃんを消しはろうとした。ちゅう訳か。」
「決めつけは良くない。
あくまでも、疑惑が深まっただけ。」
嫁がイラついた顔で話すヨロズコちゃんに諭すように話す。
「もし、【オピオタウロスの荷車】が秘密裏にアマトティちゃんの他の欠片を所有していた場合……
ただ単純に、この世界を確実に開いた世界にする為にウミミナちゃんを消そうと考えた可能性も捨てきれないね。
何故なら、仮にウミミナちゃんと僕達が組んでる事を想定していたとしても……現時点で彼等とは権力も力も違いすぎる。
だから、自分達が元の世界に帰るチャンスを僕達に賭けようとは思わない筈だ。
てか……逆の立場ならば、現時点では絶対に任せられないと思う。
だからこそ、彼等と敵対関係にならない事が重要だったんだ。
その為の工作が上手くいって良かった。
まぁ……あくまでも仮定の1つ。
彼等が、この世界が開く事を望んでいるか否かも分からない。
だから、サモナブちゃんの言うように決めつけは良くない。
彼等の事を観察しながら、敵か否か、組めそうな相手か否か。
その辺りを見ていく必要があるだろうね。」
「クルサルさんの言わはる事は分かる。
せやけど……腹立たへんのか?」
ヨロズコちゃんが睨んでくる。
「パパは感情よりも利益優先。
後々になって、冷静に考えたら、パパの言う通りにしてて良かった。って思える時もある。
だから慣れて。」
嫁が苦笑いしながら間に入ってくれる。
「分かった。」
ヨロズコちゃんが、渋々って感じながら、嫁の言葉に頷いてくれる。
◇◇◇
「兄さんは、俺達が目立たずに、欠片をコンプリートする。つうコンセプトを続けるべきだと考えてるのかい?」
「その方が良いだろうね。
とりあえず、目立たずに、集められるだけの欠片を集める。
権力争いに加われるような力を求めるべき否かは……ステルス作戦が行き詰まってから考えるべきだろうね。」
「でっ。必要なタイミングで、
『欲しければ、くれてやろう。』的な事を言ってくれはる奴が現れてくれはるんは……流石に期待しすぎやろな。」
落ち着いたのかヨロズコちゃんが、古いネタを擦り始めた。
「良く知ってるね。」
「パパ?」
「違う。違う。
古い漫画で、あるんだよね。
ピンチの時に、人智を超えた存在が、そんな呼びかけをしてくる漫画が。」
「そっ。なら良し。」
嫁がホッとした顔で頷く。
「へ~。そうなんや。
元ネタがあったんや。」
ヨロズコちゃんが驚いた顔をしている。
「ジェネレーションギャップを感じるな。」
「ゼロヒト君は知ってるの?」
「年上の従兄弟の家に遊びに行った時に読ませて貰った。」
「そっ。
現役で見てた。」
「そっか。なんか……ゴメン。」
「いいよ。」
「有難う。」
ゼロヒト君がホッとした顔をしている。
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