モンスター氾濫①(確認編)
『ガチイだ。
気がついてる奴も居るかと思うが、
ここら辺に居る、
キャリオン ハゲワシ。魔鳩。魔雀。魔鴉に、 リトル アース ドラゴン。ミクロ アース ドラゴンや、 魔狼。魔豹。魔牛。魔鹿。魔馬等のモンスター達や、 動物達が一斉に東に向けて移動を開始し始めてる。
司令官殿が言うには、50年前に起こったモンスター氾濫の時にも、モンスター氾濫が起こる直前に、こういう事があったらしい。
つまり、何時、ラジオ放送からモンスター氾濫が起こった。という情報がもたらされてもおかしくない状況だ。
だが、しかし、そうなっても決して慌てる必要はない。
何故なら、何が起ころうと、一秒でも早く、キトナガエ帝国の西都に辿り着く事ために乗り物を走らせる以外に、俺達がやれる事が無ぇからだ。
難しい事を言ってるつもりはねぇから、返答は不要だ。
良いか。
とにかく走れ。突っ走れ。
何が起きても、余計な事は一切、考えるな。
一秒でも早く、キトナガエ帝国の西都に辿り着く事だけに集中しろ。
それ以外に、俺達が生き残る術はねぇ。
何が起ころうと、それだけは絶対に忘れるな。』
コブとドタからの情報を聞いてから2時間以上、たったところで、ガチイさんからの雑な指示が無線機から聞こえてきた。
■■■
「ピリピリしてたね。」
ビスケットと干し肉と数枚のオムツを配ってくれたミンさん達が居なくなると、嫁が苦笑いしながら話す。
時刻は16時。
この後は、1時間の休憩を挟み、朝まで、ほぼ、ノンストップでの行軍となるらしい。
ほぼと言ったのは、ドライバーの交代や休憩。オムツの交換とかの為に、2~3時間に一回、10分程度の休憩は挟むらしい。
ただ……如何なる理由があろうとも、出発時間は厳守の為、もよおしたらオムツに出して欲しいと言われた。
また、体調不良やケンカ。行方不明者が出たなど、困った事があれば、直ぐに報告して欲しい。とも言われた。
そして、ミンさん達は自分達が伝えたい事を伝えると、僕達の返答もロクに聞かずに立ち去って行った。
「せやね。
そして、ミンさんが、ガチイさん化してはったな。」
ヨロズコちゃんが苦笑いしながら窓の外を見ている。
■■■
「ラジオの放送は、まだだが……
多分、モンスター氾濫。ってのが起こったと思う。」
時刻は21時。
ゼロヒト君がボソッと呟く。
「取りあえず、内容は録画しとく。
それに必要な事があれば、逐次、報告する。
だから、姉さん。ヨロズコ。
気になったとしても……今は目の前のやるべき事だけに集中してくれ。」
「了解。」×2
嫁とヨロズコちゃんがゼロヒト君に短い返答を返す。
◇◇◇
「漫画やゲームのイメージとは違うね。
僕達の世界の蝗害や、軍隊アリの行動に似てる気がする。
てか……氾濫と言うよりも、マラソン大会?
人が集まる場所は給水ポイントで、人間は……水とペットボトル?
いや。少し違うか。
もしかして、僕達と同じ?
自分達の進路を塞いじゃってる人達だけを襲うのは……
もしかして……排除が目的?
でっ。排除したみたら、
死んだり、怪我したり、トラックの荷台から食べ物が出てきたりするから、
ついでに栄養補給も出来てラッキー。って感じなのかな?」
「何が言いたいんだい?」
ゼロヒト君が真剣な顔で聞いてくる。
◇◇◇
「先入観も持たないように気をつけながら、見たまんまのイメージを言葉にしてるだけ。
深い意味は無いし、犠牲者達を冒涜してるつもりもない。」
「違う。
兄さんの発言は不謹慎だとは思うが……
兄さんの話を聞いたら、そういう風にしか見えなくなっちまった。
何か気がついたのか?
てか……何を考えてる。
別に文句を言いたい訳じゃねぇ。
ただ、兄さんの頭の中で考えてる事を知りてぇだけなんだ。」
ゼロヒト君が真剣な顔で僕を見る。
◇◇◇
「僕はモンスターの気持ちを知りたいだけ。
もし、彼等の気持ちが分かれば、危険を事前に察知する事が出来ると思う。
そして、それが出来れば、
危険を回避する為の助言を、チナさん達にする事も出来る気がする。
ただ、それだけだよ。」
「この世界では一般的に、
モンスター氾濫が起これば何が起こるか分からない。って言われている。
だけど……兄さんは、モンスター氾濫には何らかの法則性があると考えてるのかい?」
「コブとドタの話を聞く限り、
必要な範囲の縄張りを確保する事が出来ない状況がモンスター氾濫を起こす直接的な原因らしいじゃん。
でっ。コブ。ドタ。
状況から察するに、
草原に住むモンスターや動物達も、
森に住むモンスターや動物達も、
等しく、人間の住む町や村を目指すみたいじゃん。
コブ。ドタ。
彼等は何故人間の住む町や村を目指すと思う?
正解か不正解かなんてどうでも良い。
2匹の素直な意見を聞きたいな。」
◇◇◇
「オイラが思うに、
森に居るモンスターや動物達は草原を目指しているつもりは無いと思う。
でっ。草原に出た、あいつ達は、きっと……
瘴気が薄い場所へ移動していたら、草木が無い未知の場所に出てしまった。って感じだと思う。」
「モンスターや動物にとって、人の町や村は人間の巣。
でっ。普段、住んでいる森で人間の巣を襲わないのは……人間の群れを襲って得られる餌というメリットよりも、反撃されて傷つくデメリットの方が大きいから。
だけど……森から草原に出たモンスターは?
いつも餌にしている草食系のモンスター達は殺気だってて、下手に攻撃すれば自分達の身が危険。
しかも、草食系のモンスター達は頭に血が上ると自分達と姿が似ている草食動物も仲間だと誤認しちゃう事が多いから……草食動物に手を出すのも危険。
そして、殺気だってる草食系モンスター達が周りに生えてる未知の草よりも、人が乗り物や巣に溜め込んでる草を狙っている。
そんな状況で肉食系や雑食系のモンスターは、周りに居る、いつも餌にしている草食系のモンスターや草食動物を襲うと思う?
もし、アタイが肉食系や雑食系のモンスターだったら……
周りに居る、いつも餌にしている草食系のモンスターや草食動物を襲わない。
殺気だってる草食系のモンスターに着いてって、負傷している人を見つけて襲うと思うわ。」
ドタとコブが忌憚なき意見を話してくれる。
◇◇◇
「僕達の世界で蝗害と呼ばれる、バッタ類の大量発生によって起こる災害がある。
蝗害を簡単に言うと、
増殖したバッタは草木を食い荒らし、さらなる食料を求めて移動しながら、農産物などを食べ尽くしてしまう災害なんだ。
蝗害を引き起こす、サバクトビバッタは通常、「孤独相」といって単独行動を好み、特別害を及ぼすような種類のバッタではないんだ。
けど、繁殖によって個体数が増加すると、群れを形成する「群生相」という生態に変異する。
この変化は「相変異」と呼ばれるているんだ。
そして、集団で行動するようになったサバクトビバッタは、過密による接触から、体の色は黒や黄色を帯び、翅が長くなるなど外観が変化する。
また、雑食性が増して食力旺盛になり、体重(2g程度)と同じ量の植物を食べるようになるんだ。
しかも、それだけじゃない。
相変異によって繁殖力も強まる群れは個体数を増やしながら、食料を求めて1日130〜150km飛行することもあると言われているんだ。
でっ。コブとドタの話を聞いて思ったのは、
この世界の草食系のモンスターも、一定の数を越えた群れになったら、似たような事が起きるのかもしれないって気がしたんだ。
まぁ……完全な勘なので裏付けなんてものは無いけどね。
だからゼロヒト君。
この世界にも遊牧や畜産があるか調べてくれない?
もし、草食系モンスターを飼育しているのであれば、
そのノウハウの中に、僕の仮説を裏付ける証拠や、モンスター氾濫を収束させる為のヒントが眠っているかもしれない。」
「分かった。最速で調べる。」
ゼロヒト君は、そう言うとノート型パソコンを動かし始めた。
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