ラジオ放送とねじ曲げられた真実 / 成長と割り切り
「ラジオ放送を受信した。
スピーカーにする。」
時刻は8時。
ゼロヒト君が、そう言いながら携帯電話を操作し始めた。
『ギルドのミンボン山脈支店です。
ニンムシュ様から、ミンボン山脈の樹海の最深部で異常な濃度の瘴気が噴出し続けてる原因についての調査報告を頂きました。
ニンムシュ様が仰られるには、
ミンボン山脈の樹海の最深部にある湖に瘴気を集める為の装置の術式が壊れていたのが原因との事です。
しかし、ご安心下さい。
その壊れていた術式はニンムシュ様のご指示の元、
【疾風の黒狼団】・【納勤乙女団】・【チーム ジャス & ティス】・【ベゴン団】・【ムミョウ団】のご活躍により修復されたとの事です。
ただ……
【疾風の黒狼団】・【納勤乙女団】・【チーム ジャス & ティス】・【ベゴン団】・【ムミョウ団】は、
作業の後に発生したゾンビにより殲滅されてしまったとの事です。
尚、2~3日中には瘴気の濃度が下がり始める筈だとの事です。
ですから、ミンボンの温泉街をはじめとした、ミンボン山脈の中心部の町等に籠って居られる方々。
瘴気の濃度が下がるまでは、日が暮れている時間帯は、ゾンビが発生し続ける事を念頭に置いて行動して下さい。
また、ミンボン山脈の樹海の中央部や外縁部。及び ミンボン山脈の樹海の周辺の平原の町や村に居る方々につきましては、引き続き、モンスター氾濫が起こる事を念頭に行動して下さい。
以上です。』
◇◇◇
「ビックリするぐらい嘘ばっかやん。」
ヨロズコちゃんが苦笑いしながら話す。
「ニンムシュは、
ミンボン山脈の樹海の最深部にある湖に瘴気を集める為の装置の壊れていた術式を直したのが【虹を産んだ者達】だという事を隠したいのかもしれないな。」
ゼロヒト君が苦笑いしながら話す。
「【虹を産んだ者達】が、反論するのか、しないのか、この後、どう出てくるか見ものだね。」
「ギルドを挟んでの発表じゃ。
【虹を産んだ者達】とニンムシュが、事前の打ち合わせをした上で、ギルドから、この発表をさせた可能性もあるぞ。」
僕の言葉にウミミナちゃんが私見を話す。
「確かに、その可能性もあるな。
ただ、その場合……【虹を産んだ者達】側にメリットはあるのかい?」
「【虹を産んだ者達】は、殺したり、死体を漁たりして、眷属?とかいうのにした人達の事を、ニンムシュ以外のライバル達には知られないというメリットがあるんじゃないかな。
もしかしたら、それ以外にも、ニンムシュと、
彼女に便宜を図る事で、何らかのメリットを得られるような密約を結んだ可能性も0ではない。
まぁ……ニンムシュが好き勝手、言っただけで、
今頃、【虹を産んだ者達】が、このラジオ放送の内容にブチギレてる可能性も0ではないけどね。
ただ、だからといって、【虹を産んだ者達】が、
表立ってニンムシュに反論するか否かは分からないし、
たとえ、【虹を産んだ者達】が表立ってニンムシュに反論したからといって、僕達が聞いているギルドのミンボン山脈支店が、ラジオ放送で、その事を発表するか否かも分からない。」
「ねぇ。パパ……
格好つけて、色々と考察してる感を出しているけど……
結局、何も分からない。ってが言いたいのね。」
嫁がタメ息をつきながら話す。
「無知の知。
分からない事が分かってる。って事を話してるんだよ。」
「そっか。」
嫁がタメ息をつきながら僕を見る。
■■■
『ガチイだ。
ギルドからのラジオ放送を聞いた奴も居るかと思うが、ミンボン山脈の樹海の最深部が、亡くなられた英雄達のお陰で落ち着きを取り戻し始めたとの事だが……
それで、モンスター氾濫も起きなくなったとも言えねぇらしい。
だから無線で班長会議をした。
でっ。俺達で出した、お前達への指示を話す。
指示は実にシンプルだ。
だから返答は不要。
モンスター氾濫が起きねぇ保障が無い以上、
あの森の状況がどうなろうと、俺達がやるべき事は変わらねぇ。
とにかく走れ。突っ走れ。
そして、余計な事は一切、考えるな。
一秒でも早く、キトナガエ帝国の西都に辿り着く事だけに集中しろ。
最後に【疾風の黒狼団】・【納勤乙女団】・【チーム ジャス & ティス】・【ベゴン団】・【ムミョウ団】の冥福を祈ってやるのは、休息時間までオアズケとする。
おっと。俺達の班の順番だ。
出るぞ。ついてこい。』
時刻は13時。
ガチイさんの指示が無線機から聞こえてくる。
「雑な指示も、ここまで徹底されると……
文句も言い難くうなるわ。」
「確かに。
【雑な指示=ガチイさんの個性】。って受け入れ始めてる自分が居るわ。」
苦笑いしながら話すヨロズコちゃんの言葉に嫁が頷いている。
「人はそれを慣れという。
もしくは……洗脳とでも呼ぶべきか。」
ウミミナちゃんがタメ息をつきながら物騒なワードを並べる。
「ガチイさんの声の色から察するに、ただ単に余裕が無いだけみたいだぞ。
だから、ツッコミも下手な勘繰りも止めてやってくれ。」
ゼロヒト君が苦笑いしながら、不穏な感じになりつつある車内の空気の軌道修正を図ろうとしてくれる。
◇◇◇
「ここら辺に居る、
キャリオン ハゲワシ。魔鳩。魔雀。魔鴉に、
リトル アース ドラゴン。ミクロ アース ドラゴンや、
魔狼。魔豹。魔牛。魔鹿。魔馬等のモンスター達や、
動物達が一斉に東に向けて移動を開始し始めたわ。
凶暴化はしていないけど……
一斉に動き出したとのは、あの森の方向から流れてきている恐ろしい気配のせいだと思うわ。」
「オイラとコブの頭が良くなってて良かった。
そして、ゼロヒト達が、オイラ達の言葉が伝わるようになってて良かった。
そうじゃにゃきゃ……
コブと2人で逃げ出して居ただろうな。」
「ここに居る方が早く逃げれる事にも気がつけずにね。
てか……他の従魔達は偉いのか、バカなのか、どっちだろうね。」
「魔雀のヨタリとクシュバとか以外は健気なバカだと思う。
あいつ達は、鈍いが一応、東に向かっている主達を見捨てられずに一緒に居る。って感覚みたいだもんな。
魔雀とか魔鷹とか鳥系のモンスターは、確かに、その通りだと思うけど……
犬系・猫系・猿系。そしてオイラ達のようなリス系等のモンスターは、人と一緒に乗り物に乗って移動した方が遥かに早いスピードで東に向かえるもんな。」
「やっぱ、そうだよね……
って……魔烏が来たわ。」
「やべ。」
コブとドタがハードタイプの犬猫用キャリーケースの中に敷かれたタオルの中に隠れる。
◇◇◇
「今日、明日にでもモンスター氾濫が起こるやもしれぬな。
願わくば……
ミンボン山脈の樹海の最深部にある湖に瘴気を集める為の装置が正常に働き出した影響で瘴気の濃度が減り、最深部に縄張りを持つ、モンスターや動物達が、元の縄張りに帰る事で、モンスター氾濫が起きない事を祈るまでじゃ。」
「今更やけど……
あん時、ミンボン山脈の樹海の最深部にある湖に瘴気を集める為の装置のある場所に行って、
兄さんに、ミンボン山脈の樹海の最深部にある湖に瘴気を集める為の装置を直して貰うべきやったかもしやんね。」
ウミミナちゃんの言葉を聞いたヨロズコちゃんがボソッと話す。
「結果だけ見れば、それが正解だったかもしれないね。
だけど……あの時は何時、ニンムシュが、あの場に来るかも分からなかった。
俺達は、日々、各々の異能のについての理解を深め、少しづつかもだけど装備も充実させたりしている。
それに……お互いの信頼関係っていうならば、
あの時とは比べ物にならないぐらい深まってると思ってる。
たった、数十日。されど数十日。
あの時の俺達と、今の俺達では、個人としても、チームとしも、やれる事が全く違う。
やれる事が増えれば、増える程、昔の自分は……って思ってしまう気持ちになるは分かる。分かるが……
その時の実力と、今の実力は違う。
だから仕方がなかったと割りきるしかねぇんじなね?」
「せやな。
せやけど……なんや悶々とする。」
ゼロヒト君の言葉にヨロズコちゃんが苦笑いする。
「だろうな。
社会人の世界にようこそ。学生さん。」
「お父ちゃんや、お母ちゃんや、兄ちゃんが……
たまにへべれけになるまで、酒を飲んではった理由が分かった気がするわ。」
ゼロヒト君の言葉にヨロズコちゃんが苦笑いをしている。
「じゃあ……落ち着いたら、皆で、お疲れさん会をしよう。
あっ。この世界では飲酒は15才からだったよね?
ウミミナちゃんは、ソフトドリンクだけで我慢してね。」
「はぁ……サモナブ……
妾は、この中で、ぶっちぎりの最年長なんじゃがのう‥…
とはいえ、まぁ……こんななりで酒を喰らえば無駄に目立つか。
仕方がない。酒は……真の姿に戻るまで我慢するとしよう。」
ウミミナちゃんがタメ息をつきながら窓の外を眺めている。
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