【サイドストーリー】樹海の最深部にて⑤(ねじ曲げられた真実編)
「アフアジが、この森の中心にある湖に瘴気を集める為の装置の壊れていた術式を補修した。
だから、2~3日中には瘴気の濃度が下がり始めるはずだ。
そうそう。
俺達の介入はギルドにも報告するなよ。
対外的には、お前さんの指示を受けた、
【疾風の黒狼団】・【納勤乙女団】・【チーム ジャス & ティス】・【ベゴン団】・【ムミョウ団】が、その命と引き換えに、
お前さんの指示の元、この森中心にある湖に瘴気を集める為の装置の壊れていた術式を補修した。っていう事にしとけ。
そうすれば、お前さんの面目も立つだろうし、俺達も他の奴等にまで戦力を増強した事を知られなくてすむ。」
ムルオさんが、ニヤリと笑いながら、ニンムシュに報告を入れる。
「それは、それは、お優しいです事。
ですが、きっと……
私以外の神仏の代理人や、
私達と提携を結んでいる外来種のアサグにも、色々とご配慮されているんでしょ?
嫉妬しちゃいますわね。」
ニンムシュがムルオさんを潤んだ目をしながら、情報を聞き出そうとしている。
相変わらず、あざとい奴っすね。
「もし、俺がここでペロッと喋れば、
お前さんに、他の奴の前で、お前さんの事を話しているかも?って疑われかねねぇ。
だからこそ、その話題は勘弁だ。
これまで以上に、善き隣人として暮らしていこうじゃないか。」
「そうですわね。
貴方達との親睦を深められたら事に舞い上がり過ぎてましたわ。」
ニンムシュが柔やかな笑みを浮かべながらムルオさんに返答を返す。
ただ、腹の中は苛立ちでいっぱいみたいっすね。
てか、さぁ……ニンムシュちゃん。
俺っちも、ムルオさんも、あんたと同じように、相手の感情を色で視えるんっすよ。
身振りや表情に気を配り、完璧な腹芸で、俺っち達に、心の内を見せてないつもりみたいっすけど……
あんた、本当、残念な奴っすね。
ーーーーー
「【疾風の黒狼団】・【納勤乙女団】・【チーム ジャス & ティス】・【ベゴン団】・【ムミョウ団】が、
この森の中心にある湖に瘴気を集める為の装置の壊れていた術式の補修には成功したものの……
その後、大量派生したゾンビのせいで死んでしまったですかぁ……
正直な話、
彼女達が、自分の為に他人を犠牲にしようとすることはあっても、
他人の為に命を賭してニンムシュ様の命令を遂行されるとは想像すらしておりませんでしたよ。
これでも私。人を見る目には、それなりに自信があったのですが……
ニンムシュ様の話を聞いて、その自信が根元からへし折られてしまった気分だわ。」
時刻は9時。
副担が苦笑いしながら話す。
日光に弱いゾンビは、日中は動かないらしいので、
日が暮れるまでのミンボンの温泉街の防衛は、見張り台に最低限の人数の見張りだけを残して、交代で休息を取る事になった。
そして、俺達は見張りには抜擢されなかったので、
泊まっている宿屋の食堂で飯を食った後、
あてがわれた部屋に戻り、日が暮れる前まで、束の間の休息を取る事にしたのだ。
「命の危険が迫っておる中で、柄にも無い事をしてしまったから死亡フラグが発動してしまったのでござろうな。」
「アタシの推測では、お金と名誉欲に釣られて気がつけば……
どうにもならない状況になってしまってた。ってのが正解な気がする。」
「おいおい。
拙者君もシオコもひでぇな。
理由や過程がどうであれ、あいつ達のお陰で、数日間、耐えればゾンビ祭りが終了するらしいじゃんかよ。
生け簀かない奴等だった。ってのは認めるけど……
それとこれとは話が別。
素直に感謝しとこうぜ。」
イドケンが苦笑いしながら話す。
「イドケンの言うとおりよ。
しかも、あいつ達の傍若無人のせいで、先生が謝る必要もなくなったのよ。
まさに一石二鳥じゃん。」
「何が、イドケンの言うとおりよ。だ。
お前が一番、酷えわ。」
「まぁまぁ。
あの子達には悪いけど……
亡くなったのが、貴女達や【双頭の叡知】の子達のように、失意に陥るような子達でなくて良かったわ。
てか……今晩も、ゾンビがこの街に入り込まない為に、体内のマナが尽きるまで、魔力弾のライフルを撃って。撃って。撃ちまくらないといけないの。
だから……言い出しっぺの私が言うのもなんだけど、余計な事は考えず、しっかりと睡眠を取りましょう。」
「賛成。」×3
副担の言葉に、拙者野郎、シオコ、スクコが元気な声で返答を返す。
「はぁ……
まぁ……いっか。」
そんな4人を見ながら、イドケンが苦笑いしていた。
ーーーーーーー
「いや……凄い光景だよねぇ……
てか……臭すぎ。」
ヒデミがボソッと呟く。
街壁の外には大量の腐った焦げた肉片で溢れている。
この肉片が、昨晩、この街を襲ったゾンビ達の成れの果てだと思うと……改めてゾッとする。
「弓矢とかブーメランの練習を始めようかな。」
モチミが呟く。
ニンムシュ様の指揮の元、
体内のマナが尽きるまで、魔力弾のライフルや弓矢等を撃ちまくってゾンビを足止めする者と、
足止めしたゾンビに火炎魔法や火炎瓶。火矢などを撃ち込んで行動不能にする者とに分かれ、
効率的に組織として対応していなければ……
今頃、私達は、確実にゾンビの仲間入りを果たしていただろうな。
因みに、私とガンエキ以外は無能者だ。
だけど、この世界の人属の無能者とは違い、皆、オリンピック選手も真っ青になるぐらいの身体能力を得ている。
そのせいなのか、無能者の仲間達は、調査団に居るこの世界の仲間達からは【人属の仮面を被った獣人】なんて言われたりしている。
「そうだよな……
マナの少ない獣人の人達は、弓矢や火矢でゾンビと戦っている中、俺達、無能者チームは石を投げてゾンビを足止めしたもんな……
戦力になれていたので文句は言われ無かったけど……正直、ダサかったよな。」
ジャスオが、苦笑いしながら頷く。
「投石も立派な攻撃だぞ。
てか……砂砂漠とか、一部の場所を除いたら武器は現地調達する事が出来る。
しかも加工する必要もないし、壊れる事を気にする必要もない。
見栄えさえ気にしなければ、ある意味、最強。
勿論、お前達が望めば、弓矢やブーメランは作ってやるが……
寧ろ、石を投げる練習もしてくれた方が有難い。」
【匠の職人】のジョブ補正を受けているガンエキが真剣な顔で話す。
「ガンエキの言う通りね。
てか……日が昇っている間、大人しくしてくれるのは悪霊や、ゾンビ等の死霊系モンスターだけなのよ。
いくら、私達が警備隊の人達のお手伝い。っていうポジションだからといって気を抜いてイラン事を考えたらダメよ。」
「そうね。既に死人も出てるもんね。」
私の言葉にモチミが静かに頷く。
「死人と言えば……
【チーム ジャス & ティス】は別として、
【疾風の黒狼団】・【納勤乙女団】・【ベゴン団】・【ムミョウ団】が、他人の為に身体を張って、命を落とすなんて……
正直、信じられないわ。」
ヒデミが苦笑いしながら話す。
◇◇◇
「その気持ち、凄く良く分かる。
分かるんだけど……
最低でも、状況が落ちつくまでは、その話は無しにしましょ。
ただでさえイッパイ・イッパイの時に、
ニンムシュが、嘘をついてまで、彼女達を英雄として祭り上げようとしている可能性とかについてまで考察する余裕はないわ。」
「もし、ニンムシュが、嘘をついてまで、彼女達を英雄として祭り上げようとしていた場合……
十中八九、ややこしい何かが背景にある筈だ。
知らぬが仏。
藪を突いて蛇を探す必要なんてねぇと思うぞ。 」
「じゃあ……
この疑惑はスルーする事にしましょう。」
予想通りのガンエキの返答を聞いた私は、あえて素っ気ない返答を返す。
「さぁ~てと。
難しい事は、サキミとガンエキに任せて、
アタシは、夕方まで、見張りを頑張ろ。」
ヒデミが露骨に話題を変える。
「アタシも。」・「拙者も。」
シオコと拙者君が、ヒデミの言葉に頷く。
うん。うん。それで良い。
【納勤乙女団】や【疾風の黒狼団】には悪いけど……
私は【双頭の叡知】のメンバーを危険に晒してまで、貴女達の身に起こった真実を探してあげるつもりはないし、
【双頭の叡知】のメンバーにも、そんな事を望んで欲しくない。
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