再開と途中乗車
「あんたの立場もわからんでも無いけどさぁ……
元入居者の婿殿から、直々に荷まで検められるとはねぇ……
流石に腹が立つし、情けなくもなるよ。」
「面目ねぇ。」
睨みながらボソッと呟くユバリスさんに、ケントウさんが頭を下げる。
「姉さんやヨロズコ。アマ……ウミミナを乗員スペース(キャビン)に残して来て正解だったな。」
僕と一緒に、僕達のトラックの荷台の確認の立ち会いをしているゼロヒト君がボソッと呟く。
◇◇◇
「ユバリス先生。逆にゃよ。逆。
実は、この砦、今日の18時から無期限で封鎖されるにゃ。
でっ。この鑑定装置は、この砦の封鎖が解かれるまで、ギルドのキトナガエ帝国の西都支店で管理される事になるにゃ。
だから、その……
ただでさえ、キトナガエ帝国人は、旦那の実家があるフトバル公爵様領にゃどの一部の地域を除いて、亜人や孤児。低所得者への差別が酷いのに、
アタシの身内にゃから、って言う理由で、先生達に鑑定装置を使った検閲をせずに通行許可書にゃんて出しちゃたにゃんて事を差別主義者達に知らでもしたら……
差別主義者達が先生達に言い掛かりをつける為の格好の餌を与えてしまう事に、にゃってしまうにゃ。」
ケントウさん達の一団の後ろから猫耳の女の人が、そう言いながらヒョコと出てきた。
彼女は赤ちゃんを抱き、
右手でスーツケースのような物を引っ張り、
左手には幼稚園児ぐらいの年に見える女の子の上着に取り付けられた子供用のハーネスのような物と繋がっている紐を持っている。
「ケト。
なんで、あんたが子供を連れて、こんな所に居るんだい?」
猫耳の女の人にユバリスさんが質問をする。
「今年の冬は、旦那が、帰省する事が出来なかったのにゃ。
そして、アタシのような家族の為に、
冬休みの期間、家族が会いに行けるように、西都から職員の家族専用の無料バスが出てるのにゃ。
でっ、今年もお義父様とお義母様が、西都まで護衛してくれる冒険者を雇ってくれたので、
西都からバスに乗って、旦那に会いに来てたのにゃ。」
「西都まで護衛してくれる冒険者を雇ってくれた。って、あんた……フトバル公爵領の領都に住んでるだよね?
かなりの大金を、ケントウ君の、ご両親に使わせたんじゃないのかい?
てか……今、今年も。って言わなかったかい?
まさかとは思うけど……毎年、そんな事をして貰ってるとか言わないよね?」
ケトさんの話を聞いたユバリスさんが焦った顔をしながら質問をする。
◇◇◇
「父は鍛治職人として、母は付与魔術として、とても優秀なので金の面では問題無いですよ。
ただ……2人とも家事が、その……壊滅的に苦手なのです。
だから、家事を一手に担って引き受けてくれていた祖母が亡くなってからは使用人を雇って凌いでいたのですが、その……
2人ともギルドからAランクの職人として認定されている為か、表立って何かを言われた事はなかったのですが、その……
やはり、平民が使用人を雇ってる事を好ましく思っていない人が居るんですよ。
だから、その……
こいつが嫁に来てくれて、家事をやってくれるようになり、使用人を雇わなくてもすむようになった事に、両親も深く感謝しているんです。
なので、これは、その……両親から、こいつへの感謝の証なのだそうですよ。」
「そう言って貰えると嬉しいよ。
そうそう。アタシ達は、フトバル公爵に保護を求めてるんだ。
もし、その要請を受け入れて貰えていたならば、
ケントウ君のご両親に、この娘を家族として受け入れてくれいる事への、お礼を言いに行かせて貰うよ。」
ユバリスさんは嬉しそうな顔をしながら頭を下げる。
「会ってくれるのは嬉しいですが、お礼は言わないで下さい。
両親にとっても、こいつ(ケト)は家族なんです。
だから……ユバリスさんに他人行儀な事を言われると凹みますので。」
「そうかい。有り難う。」
ユバリスさんが目を潤ませながら微笑んでいた。
◇◇◇
「そうそう。先生。
昨日、砦の通信機器にお義母様が連絡をくれたのにゃけど……
フトバル公爵様が、先生達を領都で保護してくれるそうにゃ。
でっ。アタシが西都から家に帰る足がにゃい事を心配して、アタシが直ぐに家に帰れるようにと、
旦那にも相談せずに、ギルドにかけあって、この砦の封鎖が終わり次第、旦那が休暇に入れるように動いてくれたのにゃ。
にゃけど、旦那は……荒事もこなせるとはいえ所詮、事務方にゃ。
そして、アタシは冒険者としては、5年もブランクがあるにゃ。
にゃので、西都からの道中が心配にゃし、
他の人が任務中の中、旦那だけが休暇中。てのも居心地が悪いにゃ。
にゃから、その……アタシ達を先生達の一向に加えて欲しいのにゃ。」
「分かった。
チナに相談してみる。」
「その必要は無いわ。
アタシも姉さん(チナ)も父さん(ケラ)も了解してるわ。
お母さん(ユバリス)の許可も出た事だし、ケト姉達の受け入れ準備に入るわ。」
ケントウさん達の一団の後ろから、ミンさんとマゼさんが、ヒョコと出てきた。
■■■
『出ます。』
『了解。』×17 ・ 『了解。』×7 ・ 「了解。」
時刻は19時。
僕達の一団と、ミンボン山脈の東の石切り場の第一砦の一団が、キトナガエ帝国の西都を目指して動き出す。
僕達の一団を前後に挟む形でミンボン山脈の東の石切り場の第一砦の一団が配置された。
因みに、僕達のトラックは、クアッド、ピックアップ トラック、トラック、バスで構成された計26台の車列の真ん中ぐらいに配置されている。
ケントウさんは、チナさん達のトラックに、
ケトさんと子供達は、僕達のトラックの荷台に乗せる事となった。
『ガチイだ。
客人以外は、知っている筈だが、ギルドからは何時、モンスター氾濫が起きてもおかしくないという連絡が来てる。
我々に求められているのはスピードと精度。
客人を守りながら一刻も早くキトナガエ帝国の西都に入る。
皆、ここが踏ん張りどころだ。』
『了解。』×17 ・ 『了解。』×7 ・ 「了解。」
ミンボン山脈の東の石切り場の第一砦の所長さんのガチイさんの言葉に各乗り物のドライバー達が短い返答を返す。
◇◇◇
「ミンボン山脈の東の石切り場の第一砦。なんつう。ギルドの職員さん達の一団に紛れ込めたのは、色んな意味でラッキーだったな。」
無線機が切れているのを確認しながらゼロヒト君が笑顔で話す。
「せやね。
キトナガエ帝国の西都までの検問所は、全てフリーパスで通れはるらしいもんな。」
ヨロズコちゃんが、ゼロヒト君の言葉に笑顔で頷く。
「このまま、上手くバレずにニンムシュの勢力圏から脱出したいわね。」
「せやな。
アマ……ウミミナちゃんや、相方さん(プスアー)の欠片探しをする為にも、何処かに留まる訳に持っていかへんみたいやし、一石二鳥やもんな。」
嫁の言葉にヨロズコちゃんが頷く。
「浮かれておる場合か。
ここもモンスター氾濫が起きればどうなるやも知れぬ。
ニンムシュが、この森の最深部に居るのじゃ。
クルサルの奇策を安易に使えぬ事を忘れるな。」
「確かに。」×4
僕達は、ウミミナちゃんの言葉に頷く。
まだまだ、予断を許さない状況だ。
最悪でも、モンスター氾濫が起きるのは……
僕達が安全圏に入ってからにして欲しいものだな。
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