新たな問題
「マジかぁ……
その人達って、魔狼の群れから逃げてたんだよね……」
「せやで。
最後尾に近い数台のピックアップトラックの荷台の中に魔狼達が突っ込んで、何人かの子供らしき人達を咥えはって森の中に逃げて行きはったわ。
それ以外にもブラッド タイガーや魔豹が、木々を伝いはって、運転席やコンテナの天井を壊して襲撃をしはったり、
ブラッド ベアやミクロ アース ドラゴンの群れが、乗り物の左右の森の中から襲撃しはったりしてはって、
阿鼻叫喚の地獄絵になりはってるわ。
後、早々と乗り物を捨てて、銃や剣。槍や杖とかを構えはって森の中に逃げはった人達も見えたんやけど……
身1つに近い形で、この寒空の中に放り出させれはったような状況や。
何時まで体力が持ちはるか……って感じやね。
かといって、ウチ達も、この状況で見ず知らずの人達を助けに行く訳にもいかんしなぁ……
なんや可哀想になってきたし、これ以上、見るんは止めとくわ。」
ヨロズコちゃんが、淡々とした口調で話す。
「その方が良いと思う。
知らない方が幸せならば、敢えて知ろうとする必要はないわ。」
「せやな。
てか……ああいう場面を見ると、クルサルさんの異能の有り難みを再確認する事が出来るわ。」
「運転をしてるから、話を聞いているだけだけど……
わたしを養いながら夢のニート生活も始めたい。っていう、我が儘で自堕落な夢を叶える為だけに得た。っていう、パパの異能が、
こんなにも、わたし達の生活を支えてくれているなんてねぇ……
頑張って生きている他の人達を思うと申し訳ない気持ちになるわ。」
「まぁまぁ。
なんやかんや言いながら、クルサルさんは元の世界だけやのうて、この世界でも働いてくれてはるやん。」
「それは、ここに居る、皆、一緒。
パパだけが特別じゃない。」
ヨロズコちゃんの助け船を嫁がアッサリと沈没させる。
てか、この2人、何時もながら話が尽きないよな。
◇◇◇
「おっ。
フトバル公爵がユバリスさん達の受け入れを許可しただけでなく、
床下に大型の焚き火台や七輪やトライポッド・折り畳み式の椅子(8脚)・テーブル(1台)・調理器具・皿・フォーク・スプーン等が積み込まれていて、
最後尾の左側にはトイレスペースがある、
28人乗りのバスを1台ほど、ユバリスさん達に寄付するつもりらしいな。」
「ユバリスさんからメールでも来はったんか?」
「いや。
フトバル公爵からユバリスさんへの返信メールを盗み見したんだよ。
通信機器を持っていないユバリスさんは、この事を知らないから、イラン事を言うなよ。」
「うわ。
盗み見。って……」
ヨロズコちゃんが引いた目でゼロヒト君を見ている。
「そう言うな。
俺達の今後の予定にも繋がる大事な事だ。
ユバリスさん達がニンスキ村へ帰る足が無い。と困っているのに無視は出来ないだろ?
俺達がユバリスさん達と別れた後、どうやってニンスキ村に戻るのか気にはなっていたんだが……
これで問題が解決したな。」
ゼロヒト君がホッとした顔をしながら話す。
「まぁ……ゼロヒト君のやり方は……
だけど、まぁ、これで安心して旅を続けられそうね。」
嫁が苦笑いしながら落とし所つける。
「確かに、褒められたやり方じゃねぇのは分かってる。
だけど、仕方がない。と見逃して欲しい。
さて、次に考えるべき問題は、旅を続ける為に、次の仕事を見つける事だな。
フトバル公爵領にある、ギルドの営業所の情報機器にハッキングでもかけてみるか。」
ゼロヒト君がそう言うと、真剣な顔をしながら再び、ノート型パソコンを動かし始めた。
◇◇◇
「28人乗りのバスねぇ……
このトラックよりも大きいのかな……」
「この世界の車の規格は、このトラックが最大サイズだ。
だから、多分……このトラックのサイズに納まるサイズの筈だよ。」
ゼロヒト君がノートパソコンを弄りながら、嫁の疑問に答えてくれる。
「なら安心ね。
結構、ギリギリの場所が多かったから……
ヤバいんじゃないかと思ったよ。」
嫁がホッとした顔をしながらトラックを走らせ続ける。
「せやけど……バスなんかあったんやな。
トラックとピックアップトラックしかあらへん。って思ってたわ。」
「俺も疑問に思って調べて見たんだが……
ほんの少し前から、出稼ぎ労働者等を運ぶ為に売り出されたらしいぞ。」
「へ~。
そうなんや。」
ゼロヒト君の言葉にヨロズコちゃんが頷く。
「今後は、こう言った需要でも販売されるのかな。」
「どうだろうな。
こんな事は、頻繁に起こらねぇようだし、
単純に必要性があると思って寄付したんじゃね?」
「へ~。
この世界の乗り物は、お値段が高くないの?
それとも……公爵様ともなると、大した金額じゃないのかな?」
「確かに。って……
フトバル公爵家からギルドへ、ナヤクラース連邦へ留学する予定の娘さんの輸送補助の依頼が出ているな。
なんでも、ミンボン山脈の樹海がこうなった影響でルートの変更が必要になり、水や食糧を積んだトラックを増やさなくてはいけなくなったらしいんだが……
ミンボン山脈の樹海の最深部の湖へ行く調査団への協力依頼が来ている事もあって必要な台数のトラックを確保する事が出来なくなったらしいんだよ。
因みに、参加資格は、Bクラス以上の隊商の行軍に着いていける運び屋。
状況が状況の為、ギルドへ登録をしていない商会でも、信頼が出来る筋からの紹介ならばOKとの事だ。
楽観的に考えれば、
トラックが集まらなかった時に、ユバリスさんに、俺達を紹介して貰う為の賄賂的な意味も兼ねているのかもしれねぇな。
って……余裕ぶっこいている場合じゃねぇな。
念の為、フトバル公爵や、その娘さんの事を、もう少し、詳しく調べてみるわ。」
ノートパソコンを操作しながら僕と会話をしていたゼロヒト君が、本格的に仕事モードに切り替わった。
■■■
「そう言えば、今晩は悪霊的な意味でヤバそうな気配があらへんな。」
時刻は22時。
ヨロズコちゃんが小首を傾げている。
「この森は、元々、それなりに悪霊が出るからのう……
0時を過ぎれば、それなりに不穏な空気に包まれるじゃろうな。
じゃが……この森の中心部から放たれておる瘴気の影響が、ここまで届いておらぬのじゃろう。
それがヨロズコの感じる違和感の正体じゃな。
じゃが、瘴気の濃度が上がっておらぬ場所は
瘴気を嫌って移動して来て居るモンスターと、
元々、縄張りにしておったモンスターとで小競り合いも起こる。
そして、食料が絶対的に足らぬ故、人間も積極的に襲うじゃろうな。
じゃから、まぁ……今までとは別の意味での危険地帯の行軍となる筈じゃ。」
ヨロズコちゃんの話を聞いたアマトティちゃんが私見を話してくれる。
「成るほどな。
せやったら、繋いどくジョブ補正は、【踏破者】のままの方が良さそうやね。」
「じゃな。」
ヨロズコちゃんの言葉にアマトティちゃんが頷く。
◇◇◇
「森の中心部で瘴気の濃度が上昇しているせいで、
森の中央部から外縁でモンスターが過密状態になり始めている。って事だよな。
このまま、高濃度の瘴気が広がり続くと過程した場合、
何れ、モンスター氾濫が起こると思うか?」
「何時とは明言する事は出来ぬが、
妾は近々、モンスター氾濫が起きる考えておる。
そして、妾は、
ニンムシュが、ミンボン山脈の樹海の最深部の湖へ行く調査団の拠点を、敢えて、高濃度の瘴気に覆われつつある、ミンボン山脈の樹海の温泉街にしたのは、
モンスター氾濫への備えじゃとも思うておる。
何故なら、高濃度の瘴気に覆われておる場所には、基本、モンスターは近寄らぬ。
故に、モンスター氾濫が起きたとしても、高濃度の瘴気に覆われつつある、ミンボン山脈の樹海の温泉街に、モンスター氾濫の被害は出ぬじゃろうからな。
とはいえ、まぁ……
高濃度の瘴気に覆われた場所では、悪霊が死体に取り憑いて、ゾンビ等といった死霊系のモンスターに進化する筈じゃ。
じゃから、ミンボン山脈の樹海の温泉街のように、それ達の襲撃に対処する事が可能な防衛力が無い町や村の者達は、
町や村に籠もるよりも、モンスター氾濫が起きる前に、この森から大きく離れるのが最善策とも思うておる。」
アマトティちゃんは、ゼロヒト君の質問に、補足情報を加えながら答えてくれた。
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