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追放商人の探し物  作者: モパ
混沌の樹海
25/58

街道に潜む危険

『こちらバスコ。


眼下の街道を走る者達が、乗り物のヘッドライトを付けたまま、路肩に停めて夜営の準備を始めているのを確認したわ。


それと……遠くに見える車列もヘッドライトの灯りから察するに乗り物を路肩に停めているっぽいわね。


多分、皆、何時でも動ける準備はしつつも、

寒さのせいで凍死者が出るのを避ける為に行軍を続ける事を断念したのでしょうね。


アタシとダガマは、まだ、動けるけど……

ピックアップトラックの荷台の人達や、クアッドに乗ってるイナノ。ズカワは、どう?


厳しいようならば、アタシ達も何時でも動ける準備をしつつ、焚き火を起こして暖まりましょう。』


『こちらイナノ。


アタシもズカワも温冷水ベストを着用したりして防寒対策をちゃんとしているわ。


なので、流石に余裕綽々とは言えないけれど……まだ動けるわ。』


『こちらコンピ。


幌を替えてくれたお陰か、体感温度は、一昨日の晩とさほど変わらないね。


このまま行軍を続けて貰っても、しっかりと毛布を被っときさえすれば、なんとか凌げる寒さだよ。』


イナノちゃんと、老人チームの代表者のコンピさんの返答が無線機から聞こえてくる。


『こちらレク。

今のところ、皆、問題無く過ごせている。

行軍を続けてくれて構わない。』


『こちらイエム。

レクやコンピお婆ちゃんと同じ意見よ。』


レク君とイエムちゃんもバスコさんに元気な声で返答を返す。



『了解した。

チナさん。このまま行軍を続けるわよ。』


『こちらチナ。了解した。


皆、アタシ達の目的は皆でフトバル公爵様の所まで避難する事。


体調が優れない人が居たら速やかに対処するから直ぐに報告してね。』


『了解。』×10・「了解。」


各々の乗り物のドライバー達と、各々の乗り物の荷台のリーダー達が、チナさんの指示に短い返答を返す。



時刻は19時。


僕達は、行軍を断念する他の避難民を横目に、街道と平行して走る丘の上を通る迂回路を移動し続ける事になった。



■■■



【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】

【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】

【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】


【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】

【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】

【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】


【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】

【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】

【パァァァァァーン】・【ドォォォォォーン】



轟音が聞こえたと思ったら空が明るくなった。



「綺麗な花火ね。」


嫁がトラックのサイドミラーを見ながら呟く。


「ウチ、今、冒険者や斥候。狩人等の最高到達地点。って言われてはる【踏破者】のジョブ補正を繋いでるから分かるんやけど……


あれは花火なんかやないで。援撤玉や。」


「援撤玉?」


「援撤玉。ちゅうんは、街道にモンスターや盗賊団とかが出はった時に運び屋や行商人とかが、近くに居はる冒険者や傭兵に救援を依頼する合図や。


そんでもって、同業者には速やかに逃げろ。ちゅう合図でもあるんや。」


嫁の質問にヨロズコちゃんが答えてくれる。



「鹿の群れを追っかけていた魔狼の群れが標的を街道に居た人間達に変えたけど、

援撤玉とかいう物の音と光に驚いた隙をつかれて乗り物に乗って逃げられちゃったようだね。」


「その援撤玉とかいう物の音と光が、ハーメット アブの群れまで呼び寄せてしまったようだけどな。」


「確かにね。

だけど、援徹玉を使わなければ群れの誰かが死んでたわ。」


「確かに、そうだね。

だけど……落ち着いた魔狼も追跡を始めたようだし、事態を悪化させただけじゃね。」


「結果だけ見たらそうなるわね。

ブラッド ベアやブラッド タイガーや魔豹。ミクロ アース ドラゴンの群れなんかも街道の人間達に興味を示し始めたみたいだもんね。」


「魔狼の群れに慌てふためいて逃げてるのが丸見えになっているからな。

自分達も狩れるんじゃね?って思うだろうな。」


「そこも否定する事は出来ないわね。

全く……最初に魔狼を怯ませた以外は、ダメダメじゃないの。」


「やっぱ、そうだよな。

オイラの頭が変になったのか?って心配になったじゃないか。」


コブとドタがヒソヒソ声で物騒な話している。



◇◇◇



『こちらチナ。

街道の状況は分かる?』


『こちらズカワ。


片眼だけ使役(ティム)している魔雀のクシュバの目を通して援撤玉が上がった辺りを見たところ40台~50台の車列が一斉に動き始めたのが見えた。


ただ……村人総出で移動している集団なんだろうな。

ドライバーの中に素人に毛が生えたような奴が混じってるようで、いつ事故が起きてもおかしくない感じだった。


しかも魔狼の群れに追跡をされているみたいだったし……


死人が出るのは時間の問題に見えたよ。』


『こちらイナノ。


アタシも片目だけ使役(ティム)している魔雀のヨタリの目を通して状況をチラッと見たけれど……


ズカワと同じ見解ね。』


コブとドタと似たような感じの事を話すズカワ君の言葉にイナノちゃんが頷く。


『こちらダガマ。

ヘッドライトやテールランプ等の灯りの動きを見る限り、撤収し始めたと思われる集団はチラホラと見えるけど……

援撤玉の呼び掛けに応えようとしている者は見つけられないわ。』


『こちらバスコ。


ダガマと同じ見解よ。


ズカワやイナノの話と総合すると、街道に出るのは危険だと判断せざる得ない。



それと、この迂回路も素人さんが混じった一団でも走れない事はない道端。


チナさん。

街道とは逆側の隣になる林道にルートを変更させて貰うよ。』


どうやら、魔狼に追いかけられている一団に助けは来ないみたいだ。



『こちらチナ。

ルート変更を了承するわ。


ミンボン山脈の樹海の最深部の湖へ行く調査団と鉢合わせする事を想定し、盗賊と間違われないように気をつけながら、迂回路や林道を使って移動を続けましょう。』


『了解。』×10・「了解。」


各々の乗り物のドライバー達がチナさんの指示に短い返答を返す。



◇◇◇



【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】

【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】

【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】


【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】

【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】

【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】


【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】

【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】

【バチン・バチン・バチン】・【ガサ・ガサ・ガサ】



トラックのフロントガラスや窓ガラスから木々が擦れる音が聞こえてくる。



『こちらバスコ。


道幅が狭い場所が暫く続くから事故をしないように気を付けてね。



そうそう。


ピックアップトラックの幌の窓はスライムの革を何重にも張り合わせて作った物で、

ピックアップトラックのフロントガラスやドアガラスの強度と変わらないらしいわ。


だから、木々が擦れたぐらいでは破れないので安心してね。』


『了解。』×10 「了解。」


無線機から聞こえてくるバスコさんの指示に皆が頷く。



「雪雲が近づい来ている。

モンスターの襲撃に巻き込まれない。っていう理由だけでなく、

木々が生い茂り、吹雪の影響を受けにくい。っていう意味でも林道への移動は正解だったかもしれないな。」



「吹雪になったらモンスターは木陰や洞窟などで大人しくするのでしょ?


援撤玉を上げた人達も、吹雪が来るまで逃げ続けられたら助かるかもしれないわね。」


ゼロヒト君の言葉を聞いた嫁がハンドルを握りながら話す。



「せやったら良いんやけどなぁ……


【空の目】の映像を見てるんやけど……


たった、今、6番目を走ってはったピックアップトラックのせいで玉突き事故が起きはったわ。」


ヨロズコちゃんがタメ息をつきながらボソッと呟いた。

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