知りたい事と待てる事(後編) / ラジオ放送と依頼の延長
「他に、今すぐに聞いておきたい事はあるか?」
「今のところ、とくには無いかな。」
「ゼロヒトは、どうじゃ?」
「俺のほうも特にはないな。」
「ならば、妾達も、トラックを降りるか。」
「そうだな。
荷台に乗ってるユバリスさん達の事を、姉さんとヨロズコに任せっぱなし。つう訳にもいかねぇもんな。」
「確かに。」
僕達は、トラックのキャビンを降りる事にした。
◇◇◇
「お~い。
そこの梯子を登って来て。」
トラックの後ろに回ろうと、トラックの左側を歩いていると、頭上からヨロズコちゃんの声が聞こえてきた。
「ユバリスさん達は?」
「荷台から出て貰いはった後、そこの小屋に移動しはったで。」
頭上を見上げると、コンテナの上に張られたルーフテントから、顔を覗かせていたヨロズコちゃんが、僕達の後ろ指差す。
■■■
「成る程な。
重要な話になりそうやから、ユバリスさん達の事はウチ達でやろう。っていう姉さんの勘は当たったみたいやね。」
嫁達がトラックのキャビンを先に降りた後の話を聞いたヨロズコちゃんが、尊敬の眼差しで嫁を見ている。
「わたしの勘がハズレてた時は、出発の時間まで説教をするつもりだったけどねぇ……
今回は、説教をする必要はないみたいね。」
嫁が笑顔で、サラリと怖い発言をする。
「物事にはタイミングがあるからな。
姉さんとヨロズコが気を利かせてくれたお陰で助かったよ。」
「まぁね。
伊達に年長者をやってない。って事よ。」
ゼロヒト君に褒められた嫁がドヤ顔で話す。
◇◇◇
「でっ。結局のところ、アマトティちゃんは、何をウチ達に知られたないんや?」
「シー。」
嫁は、唇に人差し指を当てながら、ヨロズコちゃんを見る。
「ほう。
クルサルだけじゃなく、サモナブも、なんとなく察したか。
流石、番じゃな。」
「ごめん。
パパと違って、◯チャンネルや歴史とかには、全く興味が無かったから、何も察してない。
ただ……そういう話が大好物で、働くのが大嫌いなパパが、敢えて自重しているのだから……
アマトティちゃんが、わたし達に話さないといけない。って思うまでは、何も聞くべきではない。って思っただけ。」
「成る程のう。
ゼロヒトも、その辺を察して、妾とクルサルの会話に、必要以上に加わって来なかったのかのう……
でっ。ヨロズコ。
主だけには、先に真実を話してやろうか?」
「遠慮しとくわ。」
悪戯っ子のような笑みを浮かべたアマトティちゃんの質問に、ヨロズコちゃんが左右に首を振りながら苦笑いしていた。
■■■
「パパ。起きて。」
携帯電話を見ると時刻は14時半。
嫁が僕を起こす。
「ユバリスさん達を荷台に入れたで。」
茶髪のショートカットの女の子がルーフテントの中に入ってきた。
「ヨロズコちゃん。
更に可愛くなったでしょ。」
「うん。そうだうね。」
僕は嫁の言葉に頷く。
「一瞬、ウチや。って、認識されてへんかった気がしたんやけど……」
「まさか。似合ってるよ。」
「さよか。」
ヨロズコちゃんが満面の笑みを浮かべる。
なんとか、誤魔化せたようだ。
「ゼロヒト君とコブ。ドタ。アマトティちゃんは?」
「運転席に居るわよ。」
「そう。」
「てっ。事で、わたし達も移動するよ。
トイレがしたいなら先に済ませてね。」
「うん。」
僕は嫁の言葉に頷く。
名残惜しが寝袋を出て、トイレに行こう。
■■■
「雪、また、降ってきはったな。」
ヨロズコちゃんが、そう言いながらタメ息をついている。
時刻は16時。
出発してから1時間が経過したところだ。
「ラジオ放送を受信した。
スピーカーにする。」
ゼロヒト君が、そう言いながら携帯電話を操作し始めた。
『ギルドのミンボン山脈支店です。
神仏の代理人の一人。ニンムシュ様が、
キトナガエ帝国軍とキトナガエ帝国の学府の教師。それと……キトナガエ帝国内にあるギルドのアタルトイ支部の支店や営業所に所属している登録者の中から選抜された方々を率いて、強烈な瘴気を発生させているミンボン山脈の樹海の最深部の湖へ調査に向かって頂けるとの連絡を受けました。
ギルド本部に相談の上、当ギルド(ギルドのミンボン山脈支店)としましたは、ニンムシュ様のご厚意に甘えさせて頂く事としました。
また、それに伴い、避難民となっております皆様の受け入れ先である、キトナガエ帝国の西都・北西都・南西都では、
ギルドを通して避難の際に護衛依頼を出されておられる一団は北の門。それ以外の避難民の方は南の門を利用して頂きたいとの事です。
お手数をお掛けしますが、ご対応の程、宜しくお願いします。
以上です。」
◇◇◇
『こちらユバリス。
チナ。テイヒィ。お前達も知っての通り、
キトナガエ帝国の大多数の町や村は人属至上主義だ。
そして……この一団の中には身寄りのない亜人も沢山、居る。
だから、キトナガエ帝国の西都に着き次第、ギルドを通して、アタシとケラは、あの辺りでは一番、信頼が置けるフトバル公爵に、保護を、お願いをするつもりだ。
たがら、チナ。テイヒィ。
キトナガエ帝国の西都からフトバル公爵領の領都に、輸送依頼の内容が変更されると思っておいてくれ。
それと……コブドタ商会の皆様。
増えた分の日数の依頼料は日割りで増やし、食事も提供し続けさせて貰うので……我々の輸送依頼の延長依頼を受けて欲しい。』
『コブドタ商会のゼロヒトだ。
届け先がフトバル公爵領に変更になる旨、了承した。』
ゼロヒト君が即答する。
『有難う。』
ユバリスさんの嬉しそうな声が無線機から聞こえてくる。
『こちらテイヒィ。了解したっす。』
『こちらチナ。了解した。
足らない分の水や食料は、キトナガエ帝国の西都で買い足すわ。
それと、アタシ達と、父と母以外は、西都には入らない方が良さそうね。
テイヒィ。アタシ達が西都に行っている間、皆の事を頼むわよ。』
『こちらテイヒィ。了解したっす。』
テイヒィちゃんの返答で、ラジオ放送を聞いてからの短い打ち合わせが終わった。
◇◇◇
「すまねぇ。
キトナガエ帝国の西都でニンムシュと、かち合う可能性を考慮して、皆に意見を求めすまにユバリスさんの依頼を受けちまった。」
ゼロヒト君は、無線機が消されているのを確認しながら頭を下げてきた。
「僕的にはゼロヒト君と同じ気持ちだよ。
てか……ラジオ放送を聞いた時、どう言えば、キトナガエ帝国の西都に入らずにユバリスさん達と自然な形で別れられるかを考えまくってたよ。」
「難しい事は、パパとゼロヒト君に任せてるから、文句を言うつもりはないわ。」
僕とゼロヒト君のやり取りを聞いていた嫁が、何故かドヤ顔で話す。
「せやせや。
まぁ……ウチも含めて、お前、誰やねんレベルのイメチェンが出来てるさかい、そう簡単にバレへん自信はあるけど……
安全第一に越した事はあらへんもんな。」
ヨロズコちゃんが、笑いながら話す。
「たく……主達がチートなのは、能力なのか運なのかが分からなくなってくるのう……」
言葉とは裏腹にアマトティちゃんがホッとした顔をしている。
「運も実力の内。ちゅうからな。
これもウチ達の実力や。」
ヨロズコちゃんがドヤ顔で話す。
「ゼロヒト君。
余裕があれば、フトバル公爵。って人の事を調べておいて。
フトバル公爵が、ユバリスさん達にとっては良い人だけど……アサグではある僕達にとっても良い人とは限らないからね。」
「確かにな。
取り敢えず、やれるだけやってはみるが……
期待はしないでくれよ。」
「了解。」
僕はゼロヒト君の返答に頷く。
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