漆黒の闇夜の大移動②
『こちらチナ。
今のところ、極寒でも動き回れる身体を持った羽虫程度の大きさの昆虫系モンスター以外とは遭遇していないけど……
集中力を切らさずに夜行性のモンスターや、悪霊。盗賊等との戦闘に備えておいてね。』
『こちらテイヒィ団のズカワ。
後ろからついて来ている奴も居ねぇ。
ただ、クアッドを走らせているイナノが言うには、チナの言うように、クアッドのヘッドライトの灯りに羽虫サイズの昆虫系のモンスターが寄っては来ているらしい。
だから、精霊や、それに準ずるような格の悪霊等の縄張りに紛れ込んだ訳でもなさそうだ。
何故、こんな事になっているのかは分からんが、
とりあえず、今は幸運に感謝しながら、出来る限り移動距離を稼ぐべきだと思う。』
『こちらユバリス。状況は理解した。
村長(ニンスキ村の村長)からは、キトナガエ帝国の西都に向かってくれ。と言われている。
ルートやスケジュールは、チナミン商会とテイヒィ団とゴブドタ商会の判断に従う。
兎に角、宜しく頼む。』
『コブドタ商会のゼロヒトだ。
ルートやスケジュールは、原則、チナミン商会とテイヒィ団に従うつもりだ。
ただ疑問点があれば質問はさせて貰う。』
『テイヒィ団のテイヒィっす。
リーダーはチナ姉とミン姉に譲るっす。』
『了解。
アタシが休んでる間はミンの指示に従ってね。』
『了解。』×3
ユバリスさん。ゼロヒト君。テイヒィちゃんが、チナさんの指示に返答を返したところで無線でのやり取りが終了した。
■■■
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
【ドォォォォォーン】・【ドォォォォォーン】
時刻は21時。
遠くから戦闘音が聞こえてきた。
『こちらテイヒィ団のイナノ。
アタシとズカワで様子を見て来ようか?』
『こちらチナ
非戦闘員を多く抱えているアタシ達は助けに入れない。
下手に介入すれば見捨てた。って、恨みを買う恐れがある。
だから気がつかなかった事にしましょ。
とはいえ、巻き込まれるのも困るわね。
道端が狭くて、幾つか隧道とかもあるから通りたくはなかったんだけど……音と反対方向の南の近道を通るわよ。
イナノ。ズカワ。後方の索敵を強化して。
バスコとダガマはスピードを落としても良いから、クローラを潰す為のマキビシとかが仕掛けられていないか注意しながら進んで。』
『了解。』×2
チナさんが、
クアッドで先導してくれるバスコさんとダガマさん、クアッドに乗って殿を務めてくれているイナノちゃんとズカワ君に、素早い指示を出す。
◇◇◇
「【空の目】を見る限りだと、人間同士の戦闘みたいだな。
まぁ……チナさん達は介入する気が無いみたいだし、気にするのはやめとくか。」
ゼロヒト君が無線のスイッチが入ってないのを確認しつつ、情報をくれる。
「こんな時に……何してはるんやろね……」
「こんな時じゃからこそ、盗賊どもは頑張るのじゃろう。
それに……諍いが解決しておらぬ者達が、これ幸いと殺し合いをしておる可能性も考えられるのう……
何故ならば、この非常事態のドタバタで、殺しの罪も有耶無耶にする事が出来るじゃろうからな。」
「怖。アホばっかやん。」
アマトティちゃんの話を聞いたヨロズコちゃんが苦笑いしている。
「盗賊だとすると……
チナさんの言うように、足元とかを狙ってきそうだね。
【人外地の標準装備】の中に、結界魔法が付与されたマントや、スノーシューズのような物や、ウインドブレーカーのズボンのような物が入ってて助かったよ。」
「言えてる。
クルサルさんの異能を封印しはるとなると……
最悪、歩きでの移動もありえるもんな。」
僕の言葉にヨロズコちゃんが苦笑いしながら頷く。
「パパの異能のフォロー無しでの歩きでの移動かぁ……
そんな事になったら……考えただけでも疲れてきたわ。」
「姉さん。その気持ち痛い程、分かるぞ。」
嫁の愚痴にゼロヒト君が頷いている。
■■■
『こちらバスコ。
この先、3本の隧道が連なる悪霊多発地帯に入るわよ。
今晩は、悪霊どころか幽霊の姿すら見えないし、
索敵魔法に大型の生き物も引っかからないから、このまま進むけど……
いつ来ても嫌な感じがするわ。
各自、気分が悪くなったら、ポーションや聖水を、自分の身体にぶっかけてね。
後、不用意に外は見ず、
窓や幌は、しっかりと閉じておいてね。』
時刻は0時。
バスコさんの緊張した声が無線機から聞こえてくる。
◇◇◇
「薄い結界が張られてはるとはいえ……
身体が剥き出しのクアッドに乗ってはる、バスコさんダガマさん。イナノさん。ズカワさんは怖いやろね。」
無線機のスイッチが切れている事を確かめながら、ヨロズコちゃんがボソッと呟く。
「悪霊達の方が、アタイ達にビビって隠れているわ。
だから、アタイ達の前に出てくる訳がない。」
「羽虫サイズの頭の悪いモンスター達以外も同じ感じだな。
人間は頭が良すぎる分、直感が残念過ぎるからなぁ……
色々と気がつけないのだろうぜ。」
コブとドタが欠伸を噛み殺しながら笑っている。
「そうか。
なら、つかず離れずで追いかけて来てるヒャハー盗賊団が消えてくれるかもしれないな。」
コブとドタの会話を聞いたゼロヒト君がニヤリと笑う。
「ヒャッハーな盗賊団。って……
ゼロヒトさんは異能で相手の性格まで分かりはるようになりはったんか?」
「ヒャッハーな盗賊団じゃなくて、ヒャッハー盗賊団な。
10年ぐらい前に、俺達の世界から召喚された人達が中心になってたてた盗賊団らしい。」
「そんな情報、何処から仕入れたの?」
ゼロヒト君とヨロズコちゃんの会話に嫁が加わる。
「10台ぐらいのピックアップトラックと、50台ぐらいのクアッドが、D○Nが好きそうな感じの旗を掲げいたから、念の為にギルドのデータベースにアクセスしてみたんだ。
そしたら……討伐依頼が出ていたよ。」
ゼロヒト君が苦笑いしながら嫁の疑問に答えてくれる。
「掲げてはる旗も、お揃いの衣装も……ダッサ。
厨二病、全開やん。」
ヨロズコちゃんが大笑いしている。
「確かにな。
だけど……ギルドの情報では、ヒャッハー盗賊団は、元々はチンケな詐欺師集団から始まった組織らしい。
だから、バカッぽい雰囲気に惑わされて、油断してたら痛い目を見るかもしれないぞ。」
「ふ~ん。
それって……ヒャッハー盗賊団が幽霊トンネル地帯を抜けられはったら。ちゅう話やろ。」
「そういう話ではない。
見た目や鑑定した内容だけでは計れない事もある。っていう心構えの問題だ。
特に鑑定結果は信じすぎるな。
何故なら、俺の異能はチートだが唯一無二ではない。
それに……俺の異能は、ニンムシュをはじめとする神仏の代理人達よりも格下らしい。
つまり、俺達以外にも鑑定結果を偽装して、モブを装ってるチートな奴が居るかもしれないし、
俺達は、その事にすら気がつけない事もある。って事だ。」
ゼロヒト君が、真剣な顔で力説する。
「そう言えば、ギルドでCランク相当の評価を得らる。ってのは、この世界では、どんな感じのレベルなの?」
「ギルドでCランクの評価と言えば、モブの最上位。って感じだな。
でっ。兄さんや姉さんの本来の年齢ならば、
モブの最上位止まりが確定で、
俺の本来の年齢ならば、
エリートの最下層と言われるBランクまでいけるか、そのままモブの最上位で終わってしまうかの瀬戸際。って、とこだろうな。
そんでもって、ヨロズコの年齢ならば、
A・Sランクという、プチ チートにまで出世する可能性を秘めた若手のホープ。って、とこだろうな。」
「Sランクがプチ チート?」
「やっぱ、そうなるよな……
落ち着いたら、詳しく説明するよ。」
ゼロヒト君が、そう言いながら苦笑いしていた。
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