漆黒の闇夜の大移動①
先頭を走るのはチナミン商会のクアッド。
その後を、チナミン商会のトラック。ピックアップトラックの順番で続く。
彼女達は定期的に、この森を出た先の平原に領地を持つキトナガエ帝国等といった、この森の周辺にある国々と商売をしているらしく、
森の中に張り巡らされた獣道のような道を何の迷いもなく進んで行く。
また、トラックとピックアップトラックの荷台には、魔猫と呼ばれるモンスター達が2匹づつ、荷物の番人として乗り込んでいる。
その後ろを、僕達が貸し出したピックアップトラックが続く。
運転手はケラさんと臨時職員さんの旦那さんが交代で行うらしい。
そして、荷台には10名の老人達と、ニンスキ村の特別保護院で番犬として飼われている2匹の魔犬と呼ばれるモンスター達が乗り込んでいる。
彼女達は、一番、襲われ難いと言われている隊列の真ん中に配置され、更に、護衛として2匹の魔犬まで付けてくれた事に申し訳ないと言い、
僕達のトラックの荷台に乗りきれなかった年少の子供達と場所を代わりたい。と申し出たのだが、
その申し出をユバリスさんが却下したので、申し訳なさそうな顔をしながら、僕達が貸し出したピックアップトラックの荷台に乗り込んでいた。
そして、嫁が運転する僕達のトラックが続く。
荷台には、ユバリスさんと3名の職員と、
乳幼児をはじめとした小さな子供達が10名程が乗り込んでいる。
ユバリスさんからは、幌で覆われたピックアップトラックだと、ほんの少し、目を離した隙に隙間から落ちかねないので、貨物用とはいえ鉄で覆われたコンテナの荷台を提供してくれて助かった。と感謝の言葉を貰った。
僕達の後ろを、テイヒィ団の2台のピックアップトラックが続く。
ピックアップトラックの荷台には、12名づつの子供達が乗り込んでいる。
荷台の奥に年少の子供達を押し込め、
年長の子供達が荷台の手間を陣取るような配置になっている。
そして、各々のピックアップの最後尾は、
既に見習いの冒険者として、何度か人外地に出ている子供達が魔力弾のライフルを構え、
テイヒィ団のメンバーとともに後方や左右の警戒してくれている。
そして、最後尾はテイヒィ団のクアッドになる。
クアッドは、人員を交代しながら、常に二人乗りで移動をし、
運転をしない方は、後ろ向きに座りながら、後方の安全確認等を行ってくれている。
また、クアッドの荷物置き場のような場所には、中に止まり木が設置されたクレートのような物が置かれ、
その中にテイヒィ団が使役する魔雀と呼ばれるモンスターが2匹、入っている。
【空の目】の映像を見ると、
適度な車間距離を保たれた、この隊列は、着実に、この森の外へと向かっている。
このまま、何のトラブルも無い事を祈るばかりだ。
■■■
『こちらチナ。
瘴気の濃度がグングンと上がってる。
少し早いけど、食事の準備を始めるので、行軍をストップするわよ。
そうそう。今日の食事は炊いた米に野菜や干し肉の入れたスープよ。
各々の車内で食べて貰えるように、竹で作った水筒に入れて渡すので、
調理を担当する者と、
魔犬達の散歩をさせる係の者と、
仮設トイレを作る者と、
仮設トイレを利用する者以外は、
トラックやピックアップトラックから降りないで欲しい。
後、仮設トイレを利用する時は、誰かに一言、言ってからにしてね。
母が言ったように行方不明者を探す時間はないけれど……
流石に用を足しているだけの人を置いていくような事はしたくないので、宜しくね。』
トラックに設置されている無線からチナさんの指示が聞こえてくる。
因みに、この無線機は、僕達以外の他の乗り物にも、ついている標準的な装備らしい。
また、各々の乗り物の荷台には、無線でのやり取りが出来るトランシーバーのような物を、1台づつ配布してくれているらしい。
■■■
『良かった。全員、揃っているようね。
食事をしながらの移動になるので、用を足したくなるとは思うけど……少なくとも明日の朝まではトイレ休憩が取れないと思う。
その間、用を足したくなった時は、申し訳ないけど……ご飯と一緒に配ったオムツの中で用を足してね。
後、ローブやマント等といった外套の上から渡した毛布を羽織て寒さを凌いでね。
って……あまり長々と話してる場合じゃないわね。
出るわよ。』
チナさんの号令を聞いた嫁は、ゆっくりとトラックを走らせ始める。
時刻は16時。
これから、配られた食事を食べ、日が暮れる頃に、ここを出る予定だったが、
瘴気の濃度の上がり方が予想以上に早いらしく、休憩を取り止めて移動を続ける事にしたのだ。
「お外……暗くならないで欲しいな。」
「だよな……
お外は気持ち悪い空気で満ちてるもんな……」
コブとドタが不穏な会話をしている。
点呼を取る前にチナさんが、
明日の午前中に纏まった休みを取る為、
今晩は、不測の事態に備えて乳幼児や年少の子供達を除く、全員に起きていて欲しい。という指示を出していたが……
コブとドタが言っている、気持ち悪い空気を察しての事だったのかもしれないな。
■■■
『レク。イエム。
外の警戒はしなくてよいから、様子がおかしい者が出たらポーションや聖水をぶっかけてやるんだよ。』
『あいよ。』・『了解っす。イナノの姉御。』
テイヒィ団のイナノちゃんと、
彼女達のトラックの荷台に分乗して乗っている見習い冒険者の子供達とのやりとりが無線から聞こえてくる。
『ワンゾウ。バフミ。
年寄り達を頼むぞ。』
『ワン。』・『バフ。』
ユバリスさんの指示に、ニンスキ村の特別保護院の番犬達が返答を返す。
時刻は18時。
漆黒の闇に包まれたばかりの森は、昨日までとは比べものにならないぐらいの薄気味悪い空気で満ち溢れている。
「僕達以外の乗り物にも『自動設定』を2重に掛けてあげても大丈夫だと思う?」
「この世界の乗り物は、エンジンを起動させると車体の周りに薄い結界を張られるらしいから、それぐらいなら問題無いと思うが、
念の為、兄さんが付与してくれたら異能を鑑定したら結界魔法を強化する術式だと誤認させる術式を追加で付与しとくよ。」
「了解。有難う。
『自動設定』×14」
ゼロヒト君の返事を聞いて、僕達の乗っているトラック以外の乗り物にも異能を掛ける。
◇◇◇
「珍しい。
パパの癖に気が利くじゃん。」
「前の乗り物になんかあれば僕達も動くに動けなくなるし、
後ろの乗り物になんかあったせいで、追突されるのも嫌だからね。」
「パパが通常運転で安心したわ。」
「せやな。
こういう時、いつもと違う事をしはると死亡フラグが立ちはるもんな。」
「そう。それ。
まぁ、わたし達が本気になればなんとかなるだろうけど……
わたし達がチート能力を持ってい‘る事がバレちゃうもんね。」
「せやせや。
可愛いだけでも目立ってしまうに、チートになってしまったから、目立たへんようにすんのも一苦労やで。」
「それ分かる。
可愛さもと有能さを兼ね備えている。ってのも罪な事だよね……」
嫁とヨロズコちゃんのマシンガンのような会話は途切れる様子が無い。
「このまま何事もなく、ニンスキ村の特別保護院の連中に紛れて、ひっそりと、この森を出たいのう……
それが出来れば、ニンムシュをはじめとしたバカ達が、妾達を探し出すのが、かなり難しくなるじゃろうからな。」
アマトティちゃんが、そう言いながら、窓の外に広がる漆黒の闇を見つめている。
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