ラジオ放送と依頼(後編)
「クルサル。起きるのじゃ。
ニンスキの村が見えて来おったぞ。」
「おはよ。」
アマトティちゃんに起こされて挨拶をする。
どうやら、いつの間にか眠っていたようだ。
トラックは崖を下るように走っている。
そして、進行方向の先には巨木を使ったのであろう大きな柵に覆われた村が眼下に見えている。
携帯電話を見ると13時と表示されている。
嫁達は、トイレ休憩以外、ずっとトラックを走らせ続けてくれいたようだ。
ニンスキの村の外にある広場には、
トラックが1台。ピックアップトラックが3台。クアッドが2台程、止まっているのが見える。
そして、ニンスキの村の中には人が一人も見えない。
ニンスキの村に居た、特別保護院の関係者以外の村人達は家の中に閉じこもっているのだろうか。それとも……既に避難を始めた後なのだろうか。
■■■
「ラジオ放送を聞いてやって来た!
荷台は、人だけならば12名、乗れるぞ!」
ゼロヒト君がトラックに設置された拡声器を使って呼びかける。
「それは助かる!
後、10名と魔犬を2匹程、乗せて貰える乗り物を待つことになるが、問題が無ければ、ここで待機してくれ!」
「予備のピックアップトラックを1台持っている!
そちらで運転してくれるのであれば貸し出すぞ!
運転手さえ出してくれれば、人数的な問題は解決すると思うが、どうする?」
「1日当たり銀貨3枚のレンタル料で貸して頂ければ有難い!
これから簡単な打ち合わせをした後、
直ぐに、ここを出たいが、そちらのトラックを24時間体制で動かす事は可能か?
ドライバーが居なければ、応援を出させて貰うぞ!
後、飯はどうする?
こちらで用意させて貰おうか?」
「レンタル料も、24時間体制での移動も問題無い!
飯については、そちらのご厚意に甘えさせて貰いたい!」
「商談成立だ!
簡単な打ち合わせをしたいから、代表者だけでも、トラックを降りて、こちらに来てくれ!」
「分かった!」
ゼロヒト君が、そう言うと、僕に目配せをしながら、トラックの扉を開ける。
◇◇◇
「寒。
中で待ってたら良かったわ。」
「だね。」
ヨロズコちゃんと嫁が溜息をついている。
トラックの目の前という事もあってか、嫁とヨロズコちゃんも、トラックを降りて来たのだ。
「アタシの名前は、ユバリス。
この院(ニンスキ村の特別保護院)の院長をしている。
このおっさんは、アタシの旦那でケラ。
因みに、アタシとケラ以外にも、この村で雇った3名の臨時職員と、その中の一人の旦那さんが、村の有志として残ってくれている。」
「宜しく。」
ムチムチのミニマムな美魔女。って感じのユバリスさんの紹介を受けた、筋肉ムキムキの大男が、はにかむような笑顔で会釈をしてくる。
「でっ。こいつは、この院(ニンスキ村の特別保護院)の出身者のみで構成された、テイヒィ団という冒険者のパーティーのリーダーのテイヒィだ。
テイヒィ団は若いメンバーばかりだが、全員、ギルドからBランクの評価を受けている、そこそこの実力者達ばかりだ。
今回、テイヒィ団のメンバー達も村の有志として、アタシ達と、ここに残り、
彼女達が所有している2台のピックアップトラックを使って入居者達を運びつつ、
1台のクアッドが殿を勤めてくれる事で、道中の安全を確保するる事になっている。」
「宜しくっす。」
小柄でまん丸な体型をした可愛らしい顔の女の子が、ハキハキした感じで挨拶をしてくれる。
「でっ。2人の女性達は、アタシとケラの娘のチナとミンだ。
2人は、この村(ニンスキ村)に拠点を構えるチナミン商会という商会の代表者でもある。
今回、娘婿達を含めた一部の従業員達を残し、
先導用のクアッドや、
食糧やテントに寝袋。焚き火台や調理器具や食器等を載せたトラックとピックアップトラックを1台づつ出してくれたんだ。」
「初めまして。宜しくお願いします。」
「特別保護院の入居者とは別に、アタシと従業員の子供が2名程、お邪魔させて貰っているのですが、
粗相があれば、ちゃんと叱りますので、何かあれば教えて下さいませ。」
高身長と低身長を除けば、瓜二つの美人さん達が人懐っこい笑顔で挨拶をしてくれる。
「了解。
わたしは、サモナブ。
こっちの小さいおっさんが、コブドタ商会のオーナーで、わたしの旦那でもあるクルサル。
そっちのイケメン君が、この商会を仕切ってるゼロヒト。
でっ。この娘は、護衛秘書のヨロズコ。
後、トラックには、アラート ジリスが2匹と、わたしの姪が乗ってるわ。
わたし達の方も、騒がしいと思うので、お互い様。って事で。」
嫁が、そう言いながらペコリと頭を下げる。
「そう言って貰えると有難い。
残ってる入居者達も、老人と子供ばかりだ。
もし、君達に我が侭を言ったら、きつく叱るので直ぐに報告して欲しい。
どうか、宜しく頼む。」
ユバリスさんが、そう言うと、深々と頭を下げてきた。
■■■
『出るわよ。』
トラックに設置されている無線からチナさんの指示が聞こえてくる。
時刻は14時。
僕達が出れば、ニンスキ村は無人となる。
はしゃいでる子供達や、待遇に文句を言っていた老人達が、
ユバリスさんの
『一刻も早く、この森を出ないと死ぬ可能性がある。
つまり、これは生死をかけた旅路だ。
だから、聞き分けの無い者の話を聞く時間は取れないので、移動の途中でも放り出す。
指示に従わず逸れた者を探す時間は無いのから、探さずに出発する。』
と、静かに言い放った言葉を聞いた途端に静かになったのには驚いた。
とはいえ、まぁ……
僕達のトラックの荷台は、貨物を積む為の床に、魔石の入った木箱を椅子替わりにした簡素な物だ。
しかも、暖房器具も設置されていなくて、外の様子を見る事も出来ないような薄暗くて寒いコンテナの中に閉じ込められる事になる。
それでも、木箱を椅子替わりに置いただけで、
結界魔法が付与されている幌で覆われているとはいえ、絶えず隙間風が入りまくるのピックアップトラックの荷台よりかは遙かにマッシだときている。
なので、老人達が文句の1つも言いたくなる気持ちも分かる。
そして、この世界では、【人外地】と呼ばれる、町や村の外は、限られた人しか出ることが出来ない未知の世界らしい。
彼等にとって、今回の旅は、ワクワク。ドキドキの大冒険の筈だ。
勿論、大人の感覚からすれば、不謹慎極まりない話ではあるが……
子供達のテンションが上がりまくってしまう気持ちも分からなくはない。
◇◇◇
「ラジオ放送を受信した。
スピーカーにする。」
ゼロヒト君が、そう言いながら携帯電話を操作し始めた。
『ギルドのミンボン山脈支店です。
ニンスキ村にある、ギルドが運営する特別保護院からの職員と入居者をミンボン山脈の樹海の外側に運んで頂く仕事の依頼の受付けが終了しました事を、ご報告させて頂きます。
以上になります。』
「ニンスキ村の特別保護院からの依頼が終了しまった事をホンマに放送しはったな。
律儀なもんやで。」
「そりゃ……
一刻も早く、この森から出た方が良い状況で、ギルドからの依頼を受ける為に、ニンスキ村を目指している奴が居たとすれば……
ニンスキ村に着いたら、誰も居なかった。じゃ、洒落にならないだろうからな。」
「確かに、来たら誰も居はれへんかった。って事になりはったら腹立つな。」
「だろ。」
ヨロズコちゃんとゼロヒト君が淡々とした口調で話をしている。
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