ラジオ放送と避難の勧め
「今日は下手に動かない方が良さようだな。」
「だね。」×2・ 「せやな。」 ・ 「じゃな。」 ・ 「そうね。」 ・ 「うん。」
僕達は、ゼロヒト君の言葉に頷く。
「それは、そうと、アマトティちゃんの持っている小箱。
箱の大きさと入ってる容量の比率がおかしくない?」
「そういえば、基本、主達の世界では魔法や魔術。呪術等と言ったマナを行使した技が使えなかったよのう。
これは、【空間拡張魔法】を利用して、物が入れられる容量を増やしたマジックボックスと呼ばれる物じゃ。
基本的には、元の容量の3倍の物が入る物にのるのじゃが……
この小箱は、先刻、【空の目】で見ておったトラックよりも沢山の物が入るのじゃ。
そうそう。
この小箱に関わらず、生きておる者が、マジックボックス化された入れ物の中に入ってしまうと死んでしまうのじゃ。
じゃから、歩くのが面倒じゃから、この小箱の中に入ろうなどと考えてはいけぬぞ。」
「了解。」
アマトティちゃんの話を聞いた嫁が、残念そうな顔をしている。
「その小箱の中に、ヨロズコちゃんが割ってくれた薪を入れさせて貰えない?
そうすれば、ヨロズコちゃんに、毎日、薪割りをして貰う必要がなくなる。」
「それは名案じゃ。
ヨロズコ、必要な数の薪を入れてくれ。」
アマトティちゃんは、僕のお願いを快く了承してくれる。
「オッケー。
助かるわ。有り難うな。」
ヨロズコちゃんが、満面の笑みを浮かべながら、彼女の通学鞄の中から、アマトティちゃんから預かっていた小箱を取り出した。
■■■
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
【ビュォォォォォー】・【ビュォォォォォー】
時刻は12時。
やることもないので、お昼ご飯の時間まで仮眠をとっていた間に、結界の外は猛吹雪になっていた。
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
【パチパチパチパチ】・【パチパチパチパチ】
風の音に混じって、焚き火のはぜる音も聞こえる。
「コブとドタの結界と、ヨロズコちゃんの起こしてくれた焚き火がなかったら……今頃、凍死してただろうね。」
「あぁ。そうだな。
どちらかでも、欠けてたら……ヤバかっただろうな。」
嫁の言葉にゼロヒト君が頷く。
【ドサッ】・【ドサッ】・【ドサッ】
【ドサッ】・【ドサッ】・【ドサッ】
【ドサッ】・【ドサッ】・【ドサッ】
森の木々の枝に貯まった雪の塊が樹上から降ってくる音が聞こえる。
「まるで雪降ろしのようだな。」
「あの雪の塊に当たりはったら……めっさ痛いやろな。」
「痛いどころで済めば良い。
当たりどころが悪ければ、死んでしまったり、重篤な後遺症が出るような怪我をしかねないぞ。」
ヨロズコちゃんの呑気な呟きを聞いたゼロヒト君が、時々、樹上から降ってくる雪の塊の危険性を教えてくれる。
「吹雪のせいで外の様子が見えないわね。
パパ。何時ものように、この結界にも【自動設定】を掛けてくれてるんしょ?」
「うん。
5重に重ね掛けしてるよ。」
「それなら安心ね。有り難う。」
僕の返答を聞いた嫁がホッとした顔をしている。
「何もしておらぬのに……腹だけは減るのう。」
アマトティちゃんが、申し訳なそうな顔で話す。
「今日は休日。って事にして、お菓子パーティーでもする?」
「ケーキとか菓子パン。ゼリーやプリンに、ジュースとかもあるんやったら出して欲しい。」
「泥酔しないように気をつけるから、酒を飲ませて欲しい。
後、酒のツマミもあれば有難い。」
嫁の提案を聞いたヨロズコちゃんとゼロヒト君が、自分達の欲しい物を追加でリクエストする。
「イチゴが食べたい。」
「バナナが欲しい。」
コブとドタも目をキラキラさせながら嫁を見ている。
「畏まりました。
ご要望の品々は、このエコバッグに取り揃えておりますが、
スーパー マーケットでもコンビニでもないから、銘柄とかのリクエストまでは、お応えしかねますので悪しからず。」
嫁が、何故か敬語を使いながらドヤ顔で話す。
■■■
「寒。」
「急に何?」
時刻は16時。
ヨロズコちゃんと嫁が同時に叫ぶ。
その声を合図に、皆、各々のジャンパーやコート。外套を一斉に羽織る。
「巣(ハードタイプの犬猫用キャリーケース)に戻るわよ。」
「あいよ。」
コブとドタが、ハードタイプの犬猫用キャリーケースの中に入る。
「濃度の濃い瘴気が流れて来よった影響で気温が下がったようじゃのう。
ヨロズコ。
ジョブ補正を【賢者】に繋ぎ替えて、結界に浄化の魔法を掛けてくれ。」
「了解。
クルサルさん。フォローして。
「了解。
『持続設定』」
『浄化』。」
アマトティちゃんの指示を受け、
僕の異能のフォローを受けたヨロズコちゃんが呪文を唱えると、結界が淡い光を放ち始めた。
「善き浄化の魔法じゃ。
これならば、悪霊達や怨霊達も迂闊には手を出しては来れぬじゃろう。」
アマトティちゃんが、満足気な顔で結界を見つめている。
◇◇◇
「ラジオ放送を受信した。
スピーカーにする。」
ゼロヒト君が、そう言いながら携帯電話を操作し始めた。
『ギルドのミンボン山脈支店です。
ミンボン山脈の樹海に定期的に入ってい貰っている、当ギルド(ギルドのミンボン山脈支店)が組織する、森林警備隊の4番隊から、
ミンボン山脈の樹海の最深部の湖から強烈な瘴気が発生し始めている。という一報を受けました。
ただ、その後、彼等との通信は、
濃度の濃い瘴気の影響で凶暴化したリトル アース ドラゴンの群れに狙われてしまった為、現場を離脱する。という報告を最後に途絶えてしまいましたので、詳細は分かりかねております。
現在、皆様に正しい情報を届ける為、森林警備隊の1番隊・2番隊・3番隊を現場に向かわしておりますので、続報が入り次第、ご報告させて頂きますが、
取り急ぎ、ミンボン山脈の樹海や、その周辺に住まわれておられる村人の皆様は村の警備体制の強化。及び 避難の準備を始められる事をお薦めします。
また、該当地区を拠点としております、当ギルド(ギルドのミンボン山脈支店)に所属する冒険者の皆様に関しましては、
速やかに、拠点とされている村か、最寄りの村に移動し、
村の警備体制の手伝いや避難の準備のアドバイス。そして避難時の村人の護衛をお願いします。
それと、該当地域に赴かれておられる、当ギルド(ギルドのミンボン山脈支店)に所属する商人や運び屋の方々には、荷台等に乗車させられる余力があれば移動の足が無い方の送迎をお願いしたいです。
この依頼に対しては、勿論、報酬は出させて頂きます。
具体的な報酬はランク毎に設定された緊急クエストの金額となります。
また、後日、各村の村長に聞き取りをし、貢献度の高かった方には、臨時ボーナスも、お支払させて頂きます。
これは、当ギルド(ギルドのミンボン山脈支店)の独断での判断ではなく、ミンボン山脈を直轄地の1つとして治めているギルド本部の決定でありますので、ご安心下さいませ。
また、ギルドには所属されておりますが、特定の拠点を持たれていない冒険者の方や、当ギルド(ギルドのミンボン山脈支店)以外の支部が管轄する支店等に所属されておられる冒険者の方につきましても、
後日、各村の村長に聞き取りをさせて頂いた内容次第では、当ギルド(ギルドのミンボン山脈支店)に登録されておられる冒険者の方と同等の金額の報酬を、お支払いさせて頂きます。
ですから、どうか、当ギルド(ギルドのミンボン山脈支店)に登録されておられる冒険者と連携を取りながら、ミンボン山脈に住む者達を守って下さい。
以上になります。』
「なんや知らんけど……
大変な事になってきはったみたいやね。」
ヨロズコちゃんが、ラジオ放送を聞いていた皆の気持ちを代弁するような言葉をボソッと呟いた。
評価や感想やレビューやいいねを頂けたら有り難いです。
頂いた感想には、出来る限り答えていきたいと考えております。
宜しくお願いします。




