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魔法大全(ウルオール図書館蔵)  作者: Sillver
第2章・詠唱基礎理論
9/10

2-2・古代エルセリア語とその他の言語との差異

 詠唱に用いる言語は術者や流派、地域によって異なる。古代メルアーク語や古代ヴァリオス語を使用する事もあるが、本書では古代エルセリア語を用いて解説を行っていく。その理由と根拠を各言語の節で語っていこうと思う。


1・古代メルアーク語

 最初に紹介するのは古代メルアーク語だ。古代メルアーク語の特徴としては、本書で挙げている古代語3種の中でもっとも攻撃魔法への適性が高い。その理由は、言語を構成する単語のほとんどが攻撃的な意味を持ち合わせているためだ。

 代表的な例としては、ほとんど痛みを与えずに衝撃だけを伝えるという魔法と相手に自覚すらさせずに速やかに命を奪う魔法がある。ほとんど痛みを与えない方は、近年ようやく知られるようになってきた、人体の仕組みを利用している。人体には圧力を感じる部分があり、魔法によって的確に刺激、無理やり錯覚を引き起こし、痛みを与えずに衝撃だけを感じさせている。

 相手に自覚すら与えずに命を奪う魔法も同様だ。人体の中にある、各内臓器官の働きをつかさどる部分を正確に破壊、これにより対象は眠る様に死ぬ。

 しかし、こういった魔法には術者に高い魔力制御技術と確たる意志が求められる。安易な意志では逆に自らの命を差し出すことになったという。

 これらの人体知識を、どうやって古代メルアーク語を使用者が知ったのかは謎に包まれている。今後の研究が待たれるところだ。

 弱点として、本書で扱う3種の中では最も回復魔法には向いていない。そういった意味合いを持つ語が極端に少ないためだ。そのために、この古代メルアーク語を扱っていた住民はいつの間にか歴史の波間に消えたとされている。


2・古代ヴァリオス語

 古代ヴァリオス語は、本書で紹介する古代語3種のうち、最も防御魔法に優れた適性を誇る。古代メルアーク語とは反対に、言語を構成する単語群ほぼ全てに『守護』や『耐性』といった意味を持つからだ。そのため、古代ヴァリオス語使用者は『守りの民』と呼ばれ、古代ヴァリオス語自体は『盾の言語』や『結界の詩』とも呼称されている。現在でも、騎士団や辺境警備隊などが民を守るために儀式魔法などで使用している。

 古代ヴァリオス語によって詠唱された防御魔法と思しき詩の一節がある。参考までに紹介しよう。


『其は我らが寄る辺を守れり。輝く虹の盾。地平埋める我らが敵を留めん。

大地を血で穢してはならぬ。故に耐えよ。耐えよ。嵐過ぎ去るを待て。

根を張れ。全てを受け流すヤーナェの如く。しなやかに根を張れ』


 詩にある『虹の盾』は、古代ヴァリオス語の使用者が得意とした、多重積層結界のことだと思われる。他の古代語では多重積層結界が虹色に輝くといった現象は確認できていない。古代ヴァリオス語で多重積層結界を使用した際の固有の現象だ。

 『我らが寄る辺』や『地平埋める我らが敵』とあることから、町や村を丸ごと包み込んで守り、襲い掛かる軍勢を押し留めるほどに強固かつ巨大だったのだろう。

 こうした背景が、攻撃一辺倒の古代メルアーク語とは異なり、今もなお使用者がぽつぽつと残る要因となっている。

 なお、ヤーナェは現代語に直すと柳の意である。しなやかに風を受け流す姿から、多くの結界魔法の詠唱に組み込まれていた。


3・古代エルセリア語

 本書では古代エルセリア語を中心に魔法を解説している。これにはいくつかの理由があり、あえて私は古代エルセリア語を選んだ。

 まず、第1の理由として言語自体の意味が偏っていないことだ。我々魔法使いは、前提知識から始まり、魔力の扱いや法と多岐に渡る様々な物事を学んで初めて魔法が発動できるようになる。そのため、最初に特化してしまうよりは、先ず全体を学び一通りの魔法が扱えるようになることが先決だ。

 第2の理由として、古代エルセリア語が音と意味がある程度一致していながらも、一語に複数の意味を持っている所にある。これは、他の古代語にはない特徴だ。

 そのため、たとえ敵対者が術者の詠唱を耳にしようとも、その単語が持つ複数のうちどれが選ばれているのかを即座に判断できない。

 結果、詠唱の本質を見誤らせることができるのだ。同じ単語でも真の意味を理解できるのは術者本人のみである。

 とりわけ、一語における意味の多さは要である属性語であれば4から5の意味を持つのが一般的だ。次節で母音と属性語の発音と意味を載せている。よく確認してほしい。


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