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魔法大全(ウルオール図書館蔵)  作者: Sillver
第1章・魔法理論の基礎
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1-4・魔法の失敗条件

 前項にて、軽く触れた失敗条件について話していこうと思う。諸君は思ったのではないだろうか。『何故、そんな条件があるのだろうか』と。

 それは、前提知識の節でも触れた等価性が深く関わっている。よくある水魔法や火魔法は何もないところから水や火を生み出しているように見える。だが、実際は違う。魔力を消費したり、魔法陣上に配置した各種媒体を消費するという等価交換が行われて初めて水や火は生まれているのである。

 以下に、よくある魔法の発動に失敗、あるいは暴走したときに検討するべき項目を5つ挙げておく。


1・魔力不足・過多

 魔力を極端に消耗しているときや、焦りから魔力を多く込めて無理やり魔法を発動しようとした事例は枚挙に暇がない。この場合、多くは発動しようとした魔法が不発に終わる結果になる。しかし、時には魔力の暴走を招く事例がある。


 魔力過多で有名な例で言うと、『ファイア・ジャベリン事件』であろう。これは、戦闘中に自身の魔力量の把握を適切に行わず、必要魔力量よりもはるかに多い魔力でファイア・ジャベリンを詠唱。上半身が炎に飲み込まれ、術者とそのパーティが1人を残して死亡したというものである。


 魔力不足で有名な例は、『アクア・ケース事件』が挙げられる。この事件も戦闘中という点ではファイア・ジャベリン事件と同じだ。迫りくるモンスターから身を守ろうとアクア・ケースを詠唱。しかし、魔力不足と不明瞭な詠唱により、術者の前方のみに展開されるはずだった魔法は、術者を完全に水で埋めた牢獄に閉じ込める結果となった。これにより、術者はモンスターによる死ではなく、自らのミスによってその生を閉じた。この事件は、同じダンジョンを攻略していた別のパーティが亡骸を発見し、後に遺体を調べることで発覚した。


 魔法を扱う者は大抵自身の魔力を『魔力感知』によって体感的に把握するが、訓練が不十分であったり精神状態が著しく不安定になると、この魔力感知による体感が曖昧になるのである。


2・詠唱が不十分、あるいは不明瞭

 本書では、古代エルセリア語を用例に使用しているが、研究者によっては別の古代言語を使用している。古代語に共通して見られる特徴として発音が非常に難解というものが挙げられる。これによって、噛んでしまったり曖昧な発音になってしまうことがある。また、詠唱にも一定の文法が存在する。各自が使用している古代語の理解が不十分なことによって、詠唱に不足が見られることがあるのだ。


 幸いなことに、この発音の不明瞭さや間違った文法による詠唱での死亡例は、今現在は確認されていない。不発に終わるだけだ。しかし、前項の魔力の過不足と合わさると、途端に死亡例が続出している。


3・魔法陣に不備がある

 後述する儀式魔法で使用する魔法陣で実際に起こりがちなミスだ。儀式魔法は、その性質上、複数人で分割して魔法陣を描くことになる。『真円を描く』『正確な五芒星を描く』『きちんとした等分の六芒星を描く』『正確に一言一句違わず詠唱を書き写す』。これらは全て、前述したヒューマン族の苦手分野にあたる。もちろん、専用の補助道具などはある。それでも、ミスは起こるものなのだ。しかも、儀式魔法は土地などに使うものだ。小さな範囲では僅かなズレが、大きな範囲では最終的に恐ろしいまでの歪みとなるのだ。


 魔法陣自体の歪みと陣に記された詠唱に間違いがあったために滅んだ町が歴史には存在する。詳しくは、魔法史概略で語るとしよう。


 この歪みの拡大は、魔法とは違う物理的な法則を研究している者たちでは常識になりつつあるようで、計算から導き出せるという。私は専門外のため、この程度の紹介に留まるが魔法陣の精密性に関してはこのようなアプローチも悪くないだろう。少なくとも、自らの町をモンスターの脅威から守ろうとして、逆に滅ぼしてしまうということは防げるようになるはずだ。


 中には、魔法とは相容れないように感じる者も居るかもしれないが、こういった歪みなどが実際に陣として描かずとも導き出せるようになれば、魔法陣学もより発展する。興味のある読者諸君は学んでみるのもいいだろう。


4・媒体の量、品質が悪い

 儀式魔法で使う媒体、つまり自分の魔力以外に消費しなくてはならない物の量や品質が不適切な場合、これまでの詠唱型魔法と同様に、多くは魔法が発動しないだけで済む。ところが、あまりにも媒体の量に過不足、品質が悪いといったことがあるとこれまでの制約同様、歴史書に乗るような事件が起こりえる。


 媒体の量は、上下限を超えていなければ多少のブレは魔力同様何とかなるが、品質の悪さについてはどうすることもできないため、徹底的に管理運用することを勧める。どれほど貴重品ゆえに惜しく思えても、時には捨てる覚悟が必要なのだ。


5・精神状態が適切ではない

 これまでにいくつかの事例を語ってきたが、どれも魔力量の調整ミスに留まらず、精神面の混乱などによって魔力の制御を失ったことでも重大な事故が起こっている。冒険者でありがちなのは、戦闘時における極度の緊張や死の恐怖だ。根源的な死への恐怖は克服出来るものでもないし、克服するべきではないが、多少のコントロールが出来るに越したことはない。どんな時でも、生き残るのは最後まで冷静さを保った者たちだけなのだ。


 緊張も死への恐怖も、常に最悪を想定し、1つの案が潰れたなら第2、第3の策と複数手札を用意しておくといい。これは、どんな時でも役に立つ。


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