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24ー闇属性

しばらく地下へ向かって進んだ。あまり整備の行き届いていない螺旋階段だ。

次第に薄暗くなっていくが、不思議とジュナは怖くなかった。自分の闇属性を自覚したからだろうか?



1番下まで降りると、広めの空間があった。全体的に薄暗く、少し寒い。広間の中央まで来ると、アンバーは止まりジュナと向き合った。


「ジュナ嬢、手荒な真似はしない。私は君に、真の属性に目覚めるよう手助けをするように言付かっている。こちらへ」


アンバーが促す先には燭台があった。火の付いていない古そうな蝋燭が立っている。


曰くのありそうな蝋燭だ。禍々しい気配を感じる。

「アンバー殿下。その、不気味な蝋燭は····近寄りたくありません」

きっぱりと言った。


「ふふっふふふ」

全然笑う状況ではないのだが、アンバー殿下は微笑った。

薄暗い場所で、笑い声は不気味に響いた。


ジュナはアンバーと距離を取る。

「殿下?」


「君も、僕を軽んじるのだね。初対面にも関わらず、全く臆していない。僕は第二王子だよ?兄上がいなければ、王太子にもなりえる」


アンバーの目がさらに虚ろになり、後ろに黒いもやも見え始めた。


何度か見た黒いもや。何故か今は恐怖より苛立ちを感じた。

「殿下!気を強く持ってください。黒いもやに付け入られます」

あれは悪いものだ。ジュナは直感で感じた。あのもやをアンバーから離さなければ。


「何故?私が細く弱々しいからか?兄上も私を疎ましく思っている。聖女さまだけ。ー聖女さまだけが···」

アンバーはもやを振り払うようにブンブンと頭を振った。

見えていないのだろうが、本能で危機から逃れようとしている。



「ジュナ嬢、供物に触れなさい。それだけで貴方は真の属性に目覚める」

アンバーは手で眉間を押さえ、苦しそうに命令した。



屈強な兵たちならまだしも、身体の弱いアンバーが魅了の魔法にかかり続けるのは負担がかかるのではないか?


ジュナは燭台に近づいた。燭台の向こう側に、二匹の獣が見えた。

闇の眷属と、その隣に禍々しい獣。似ているようで、全然違う二匹の獣が。


ジュナは息を吸い込んだ。

「アンバー殿下、私には供物は必要ありません。」


目を閉じ、自分の中の闇の魔力に集中した。

(大丈夫。出来るわ)


蝋燭に向けて手をかざす。すると、蝋燭は闇の中へ消えていく。


片方の獣が唸り始めた。ジュナは指先に集中し、心の中で言った。

(消えろ。闇の中へ。ーお前は私の眷属じゃない!)

「ブラックホール」 

ジュナが唱えると、突如現れた黒い球体に禍々しい獣は消えていった。


こめかみから汗が流れた。魔力をたくさん使ったからか、膝から崩れ落ちそうになる。ジュナは残った獣を見た。


ちゃんと見ると、美しい黒毛の立派な狼だった。

狼は澄んだ目をしてジュナを見つめている。


消えた供物を呆然と見ているアンバーに、ジュナは言った。

「私はもう闇の属性に目覚めています。殿下、心を強く持ってください。悪いものに、付け込まれないように」


ジュナはアンバーに纏わりついていたもやを手で祓った。

アンバーの虚ろな目に光が灯り、しっかりとジュナを見た。


「なんてことを。私はー····っすまない。ジュナ・クライス嬢」

「殿下、戻りましょう」


アンバーは立ちあがり、指先にふうっと息を吐いた。すると吐息は小さな火の鳥になり、上空へ飛び立った。

「聖女は、悪に染まっている。陛下へ伝令を出した。急いで戻ろう。兄上たちが心配だ」






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